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アウトドアの知恵を活用|災害時に生き残る方法

いつ起こるとも限らない自然災害ですが、アウトドアの知識があればいざという時に生かすことができます。日々の暮らしの中で、アウトドアのどんな知恵が生きるのか、どんな家づくりをすれば自宅が安全・安心な場所になるのか、あんどうりすさんに解説いただきました。

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アウトドア防災ガイドとして、危機管理の専門メディア「リスク対策.com」で連載をしたり、講演活動やFM西東京でパーソナリティをしている、あんどうりすと申します。最近、アウトドアが災害に役立つことは、よく知られるようになってきましたよね!

突然ですが、アウトドア好きの人たちが、なぜ雪の中、テントで泊まることができるのかご存知ですか? 物好きだからというのは大当たりですが(笑)、毎日体を鍛えているから?というのは、ちょっとはずれ。では、想像してみましょう。

冬の災害時、テントとクルマ、どちらで寝たいですか? 多くの人がクルマを選ぶのではないかと思います。頑丈で鍵も閉まるので安心感がありますよね。でも、クルマのボディの約70%が熱伝導率の高い鉄やガラスでできているため、冬の車中泊は本当に寒いのです。だから、やむを得ずクルマで寝る場合には、断熱材の銀マットを窓やドアのサイズにカットして貼るなどの工夫が必要です。

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一方、テントは底からの冷気を断熱マットで遮るだけでよく、クルマほど寒くなりません。自分の体温で温められるほどの小さな空間に入るので、そこに自然界最強の断熱材の「動かない空気層」ができます。というわけで断熱の知恵とグッズのおかげで、特に鍛えていなくても雪山でもテントで寝ることが可能なのです。もちろん、キャンピングカーやトレーラーハウスで断熱仕様になっているものは、テントよりも快適です。

避難所ではまず断熱材を探そう
ところが、災害時に避難所となる体育館の断熱化がされているのは、北海道や東北の一部のみです。夏暑く、冬寒いのです。床に毛布や布団、ざぶとん、カーペットを敷いても、それらには断熱性能がないため、冷気を防げません。段ボールやプチプチは、中に空気をためているので断熱材になります。段ボールを箱にしてベッドにする避難所も増えましたね。段ボールベッドは箱の中に動かない空気がためられるので、断熱性能があがります。アウトドア用断熱マットも銀マットや、空気を入れるタイプのものなど様々なバリエーションがあります。だから、避難所では、「断熱材になるものを探して使う」というアウトドアの知恵が重要です。

ちなみに柔道マットは、ポリプロピレンフォームなどの断熱材が入っているので、下に敷いていただきたいのですが、体操マットを使うのはやめたほうがいいですよ。臭いだけで、断熱効果はほとんどないですから!

とはいえ、いまだに雑魚寝だなんて環境が悪すぎるのです。内閣府の避難所運営ガイドラインにも「避難所の生活環境については、国際的な難民支援基準を下回るという指摘があったことは重く受け止めなければなりません」とまで書かれているくらいです。断熱材をその場で探すのはあくまで応急処置です。避難所になる体育館そのものの断熱性能をあげて雑魚寝がなくなればと願っています。

自宅で安全・安心を確保
そもそも避難所にいかなくても済むように、家を安全にしておくことが何よりもの災害対策です。

日本中どこであろうと震度6の地震から逃れられる場所はありません。耐震性のある家(耐震等級3)に住み、土砂災害と水害リスクは避けたいものです。ご自身の家の場所、またはこれから家づくりを考えている人は「地盤サポートマップ」や「重ねるハザードマップ」、行政のハザードマップなどで立地リスクをチェックしてみてください。

ただ、水害については、まだ最新情報が反映されていない場所もあります。特に川から遠くても低い土地で浸水が起こる内水氾濫についてのマップの記載は遅れています。マップが白くても安全とは言い切れないのです。高低差をアプリや地図で確認してみてくださいね。

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ところで、台風15号で大規模停電が起こった千葉県や、地震後にブラックアウトした北海道で講演をすると、ママたちの今一番欲しいものが発電機でした。家を避難場所とした場合でも、電気がないと困りますよね。アウトドアというと原始生活に戻って不便を耐え忍ぶものと思われがちですが、実は快適にアウトドアを楽しむため、発電好きな人が多いのはご存知でしょうか。軽量ソーラーパネルをリュックに背負えるグッズなどもありますし、我が家にも手作りソーラーパネルと蓄電器があります。

さらに、クルマからも電気がとれるようにインバーターも使います。お使いのクルマが電気自動車やハイブリッド車なら1500kWhの電気を使えるので、家の中のクーラーも動かせます(ただし、ケーブルは別途購入してくださいね)。クルマで発電した電気で家の中の電気をそのまま使えるV2Hという装置も実用化されています。

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せっかく発電した電気を最大限生かすことができる断熱性の高い家は、災害対策の強みになります。長野県では、新築やリフォームで高断熱の家づくりをする場合に補助金を出していますが、災害対策としても他の地域でも取り組んでほしい施策です。

災害時はできないことが増えます。でも、自然とともに生きるアウトドアの知恵があれば日常生活やいざという時に応用できることがたくさんありますので、アウトドアのスキルにも関心を持っていただけると嬉しいです。

快適な家づくりとアウトドア、断熱を大切にすることからわかるように実はとっても共通点が多いと思っています。

※本記事は「だん06」に掲載されています
https://www.amazon.co.jp/dp/4865271007



★あんどうりすさんの著書「リスの四季だより」

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