ヨメが招いた悲劇も、最後は笑顔で終わる
今日はとても良い天気だった。風も弱く、「安心して、外に洗濯物が干せるね」とヨメは喜んでいた。いつも、ボクが家を出る時間帯には洗濯機は稼働していないのに、今日はすでに、2回目の洗濯物が終わりそうな勢いだった。ヨメの張り切る姿を見て、思わず、「行ってきます」の声が大きくなってしまった。
それから時間が経ち、自宅に帰ってきたボクは、アパートの前に何かが落ちていることに気づいた。なんだろうと近づくと、見覚えのあるものだった。少し嫌な予感がしたが、咄嗟にそのものをカバンに入れた。
オートロックで中に入り、誰もいないのを確認してから、カバンの中のものを取り出した。「あぁ、やっぱボクのだ」ボクの手には、クシャクシャになった下着が2枚あった。
下着が飛んでしまったのは仕方ないとはいえ、ヨメになんて言おうか迷った。洗濯を干してくれたから怒るのも違うし、「布団がふっとんだ」並みの笑いを取るのも違うし。結局、何も浮かばず、鍵を開け、「ただいま」と言って部屋に入った。
ボクが不思議そうな顔をしていたのか、ヨメは、「どうしたの?」と声をかけてくれた。これはチャンスだ!と思ったのに、「今日って、風は強かったっけ?」とへんてこなことを聞いてしまった。
ヨメ「分からないけど、何かあったの?」
ボク「下着が飛んでいたよ」
ヨメ「えっ?私の?」
ボク「ボクの」
ヨメ「あっ」
一瞬、顔を歪ませたヨメをボクは見逃さなかった。「何か思い当たることあるでしょ?」と聞くと、ヨメは、正直に話してくれた。
どうやら、ボクの下着を干すスペースが無くなり、布団を干すところ(ベランダの平べったいところ)に置いてしまったらしい。風が吹いていないから、少しの間なら大丈夫だろうと思ったとのこと。洗濯を取り込むとき、下着のことを忘れていて、ボクに言われて気づいたみたい。
ヨメ「ごめんね、すっかり忘れていた」
ボク「ただでさえ、下着が少ないのに、2枚も失うところになるなんて」
ヨメ「でも、見て」
そう言うと、ヨメは、下着を手に取り、「ここに大きな穴が空いているよ」と言い出した。「えっ、あ…ほんとだ」急にヨメがボクの上に立ったような気がして、居心地が悪かった。
「まだ、履くの?」と聞かれた時には、「もう履きません」と敬語で答えるしかなかった。恥ずかしさと、悔しさが混じった返答に、ヨメは、クスクス笑っていた。ボクは笑いたくもないのに、つられて、笑ってしまった。