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5年間でユーザー数0から6.28億まで成長、なぜ拼多多は急成長できたのか?

5月22日大手ECサイト拼多多(Nasdaq上場企業、コード:PDD、中国名の発音はピンドォドォ)のQ1決算で年間アクティブユーザーが6.28億に達したと発表した。これは中国の約半分の人口に値する数値だ。5年という短い年月を経て、無名で小さなECサイトから6億人ものユーザーを抱える大企業に成長できた。

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なぜ拼多多はこのような実績を得られることができたのか?この文章は拼多多が誕生した背景から、成功の秘訣をまとめる。

一、拼多多が誕生する前の中国EC市場:アリババと京東が市場シェアを争う

拼多多が誕生する前の中国EC市場(2015年末)は、大手アリババと京東が市場の大半を占めていた。唯品会、蘑菇街等、とあるマーケット分野に特化したECサイトは他にもあったが、扱い品物が多様で大規模なECサイトはアリババと京東の2社だけだった。

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    (2015年までのEC市場は京東とアリババ二社が大半を占める)

1) アリババと京東の特徴・違いは、
◆京東:
1. サプライチェーンを徹底的に管理することで、中国市場ではあり触れていた偽物を排除、高単価な顧客に対してアピール
2. 自社で配送システムを構築・管理することで、「当日に支払えば、その夜に届く」等郵送のスピードにおいて優位性を得られた
3. Wechatを利用してユーザーに直接リーチできたのに対して、アリババ傘下のタオバオはテンセントとの仲が悪いことでWechatリソースを有効に利用できなかった
◆アリババ:
1. 高単価な顧客を得るためT-MALL事業を強化し、自社のより低単価なECブランドタオバオと分けて運営
2. T-MALLでは優秀な店舗には惜しみなくマーケティングリソースを割ける
3. 顧客サービスを重視し、店舗・プラットフォーム側のCSは顧客の要求に迅速に対応し、アフターサービスを改善

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    (左は白い犬をアイコンとした京東、右はT-MALLのアイコン黒猫)

二、 拼多多が誕生した後の中国EC市場:独自の方法でマーケットに参入

京東とアリババがより高単価な顧客の争いを行っている中、リソースは次第に大きなブランドに集中されていく。しかし、ECサービスを利用しているブランドの多くは中小企業であり、ある程度規模のある企業のように多額なマーケティング費を掛けてプラットフォーム側からより多くのトラフィックを得ることはできなかった。そこで登場した拼多多は、当時多くの経営者の問題を解決してくれた。

1) 既存のECサイトよりもトラフィックが安く、低単価の顧客を囲い込む

京東とアリババのトラフィック費が高くなり、粗利が押しつぶされる中、拼多多は新たなブルーオーシャンを提供できた。結果として、タオバオでは同じズボンでも420元したものを138元で売り出し、本来マーケティング費に使われていた部分を消費者に還元することができた

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    (同じズボンでも約3倍以上の価格差 左:タオバオ、右:拼多多)

また、プラットフォームを利用することで他社はマージンを約5%を店舗側に要求るのに対し、拼多多は多くの店舗に対してマージン0で対応し、中小企業はより多くの利益を得ることができた


2) アリババが利用できないWechatとリソースを最大に活用 

2016年にテンセントの投資を受けた拼多多は、Wechatを最大限に利用した。京東ではユーザーの30%がwechat由来だったのに対して、拼多多はこの比率を最大で50%までにも引き上げた。

利用した方法は「商品の友達間シェア」、つまり自分が買いたいものを友人にシェアし、彼らにも買ってもらうことで単価が下がる。これは価格に対して敏感なユーザー層の間で一揆に人気になった。

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    (Wechatで友人に商品をシェア、一緒に買えば値下げが可能)

3) シンプルな操作で新しいユーザーセグメントを開拓

アリババや京東ではより売上を高めるために、様々なイベントを開催し、買い物カゴにモノを追加させて複雑なゲームルールを設定した。しかし、これらの操作は多くの農村のユーザーに対しては難しすぎて使い慣れることはなかった。

2018年の中国の農村人口率は40%を超えると言われており、その多くは高校の教育まで至っていない人が多い。そこで拼多多はそもそも「買い物カゴ」の存在を無くし、ワンタップで決済まで行きつくシンプルなデザインにし、今間でアリババと京東が獲得できなったユーザー層を獲得できたのである。

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    (農村の物流を立ち上げることにも貢献した)

4) 短期間で集中的に莫大なマーケティング費を投下、認知度を高める

2019年の決算書によると、販売管理費は323.4億元、そのうちマーケティング費が占める割合は約84%。マーケティング費272億元のうち、補助金が161億元となっている。200億元はイベントやテレビ広告等で使用され、特にテレビ広告は「洗脳」と言ってもいいほど毎晩テレビで何度も放送された。

    (毎晩中国全土で流れる洗脳曲、ぴんどどーぴんどどー♪)

5) 低単価の顧客を囲い込んだあとは、100億元の補助金で高単価な顧客を確保

「偽物が多い」「ブランドイメージが安っぽい」ことで今まで収入が高めのユーザー層は依然と拼多多を使用するのは避けていた。この問題を解決するべく、拼多多は100億円に相当する補助金を、「ブランドモノ」や「リピート購買率の高いモノ」を対象に高単価な商品の値段を下げて収入が高いユーザーにアピールした。「ブランドモノ」とは、アップルのiphone、SKIIの化粧水、NikeのAir Jordan等、単一のSKUの認知度が高く、高価な商品に補助金を重点的に当てた。


三、最後に

『2019年度中国オンラインリテール市場データ観測レポート』によると、拼多多の市場シェア率は12.8%までにも拡大している。

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独自の切り口で独特なリソースを活用した結果拼多多の年間アクティブユーザーは5年間でユーザー数0から6.28億まで成長できた。拼多多の成長から見えたのは、どんなに競争が激しい市場でも、鋭いビジネス感覚を利用しマーケットの隙間を見極め、こっそり種を植えることは数年後大きな森になる。

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