ツノと眩(まばゆ)いもの。
夢を見た。
おでこにでっかいツノを付けたその人は、俯いて何かブツブツと呟いていた。
うわぁ、なんかやっべーとこ来ちゃったなぁ、と思いつつ、そろりと近づいてみる。
あれ!?そのツノ、生えてるんじゃないんだ!
山伏とか天狗とかがおでこに着けてるみたいな、紐で括るタイプ。海外通販で見たユニコーンの被り物を思い出して噴き出しそうになるのをこくんと飲み込み、明確に聞こえる場所まで歩みを進めた。
あれ。この人、知ってる!2週間くらい前に夢で見た人だ。
前回は遠くから私を見つめて
「サイノツノ。」と呟いた。
…ねぇ、そのツノ、前より大きくなってない?前回も身体と比べて物凄いアンバランスでとっても重そうだったけど、益々重そうだ。
なんで私のとこに来るんだろ?と至極真っ当な疑問を抱えつつ、耳を澄ます。
「サイノツノノ…タダヒト…」
繰り返される言葉。
ああ、なんだっけ…スッタニパータ。犀の角のように唯一人歩め、か。
ふと思い出す。私は確か前回もこの言葉を理解していた。そして思わず、つるりとこう発したのだ。
「子供にはラーフラとでも名付けたのですか?」
ちょいとしたジョークのつもりだったのだけど、その人はなんとも言えない表情で顔を伏せたのだ。
なんでwと笑う私を見て、その人は泣きそうな顔をした
ところで目が覚めた
という一連の流れを思い出しつつ、耳ではその人の呟きを受け止める。もう互いに視認できる距離。
ツノが重そうだから座って壁にでももたれれば良いのに…と思った瞬間に
ここにはなにもない
ことに気付いた。
真っ白で区切りがない。壁なんぞ存在せず、なんなら床もない。自分が何を踏みしめ歩んだかは解らないが、振り返ると私の足跡はキラキラと七色に光っていた。
そして薄い薄い透過のグレーがその人の周りにだけふよふよと浮いている。
その人の足跡は、ない。
んんー、どうしたもんか。
多分、これは夢。けれどまだ出られる感じじゃないなぁ…と思案する。
(私、夢の中で「夢だ!」って気付いたら自分ですぐ出られるのだけど、タイミングみたいなのがある場合も。)
ちょっと見たことない場所なんだよねぇ…こういう場合はもうOK!ってならないと出して貰えない場合も過去にはあったな、と考えあぐねてしまう。
互いを視認できる距離にいるのに、その人は床…というか自身の爪先あたりを見つめて呟きを続ける。
(「シューゲイザー」って音楽のジャンル名が浮かんじゃったのはナイショ)
まあ、異様ではあるけれど怖くはないし良いか。出られる時までのんびりしよう
と思った瞬間、その人は
バッ
と物凄い勢いで私を視認した。
目が合った。違うな、目は合っているけれど、その人は焦点が合っていない。
それでもその人の、目の、奥が視えた。私はとてもとても冷静で、いきなり振り向かれたにもかかわらず心が本当に静かだった。ただ、合ったその目を見ていた。数秒の沈黙の後、背後からぷぷっと吹き出す音が聞こえた。
いや、そっちの方が怖いわ!と頭の中でツッコミながら、ツノの人の目に
「一旦外すよ。」と語りかけ、ゆっくりと背後の声の方へと振り向いた。
ええええ!?ナニ!?眩しっっっっっ!見えないんだけど!?
怖い!綺麗な感じはするけれど、見えなさすぎて逆に怖い!
「あー、、、そういう意味で言ったんじゃ無いんだけどねぇ」
と苦笑いするとても柔らかな声。え、ナニコレ、怖いけど怖くない。で、ダレ。
と困惑していると、その眩いものは一本指を立てた。
「これ、見て。見えるから。」
見えるから?見”れ”るから、じゃなくて?
眩しくて極限まで細めていた目を凝らす。あ、見えた。何そのキラキラ具合。キラキラというか、、、とにかく「眩(まばゆ)い」。声の主は人の形をしていた。私よりもずっと背が高く細身で髪が長い。顔立ちも声も中性的で性別は分からない。
「よかった、見えたね。まあ、とにかく話をしよう。」
はあ。出られへんな。と思いつつ、なんか面白そうなので承諾する。
「あの子が何を言っているか聞いたよね。さっき言ったように、そういう意味じゃ無いんだよねぇ。時々起きてる誤解なんだけどさ。もはや曲解に近い。」
ああ。この人…ってかヤベェとこに来ちまったな…
と思いつつ、その眩い人(もう便宜上「彼」と表現する)の口から何が飛び出すのかワクワクしてしまって、続きを待つ。
「君はどう思う?」
え。ちょっと質問が抽象的すぎやしませんか…?
彼はニコニコと私の回答を待つ。
うーん、なんか誤解の意味は分かる気がする。距離を置くべきものと関わるもの、でもそれ以前に、自分と向き合うという部分が抜け落ちてしまっていてはその精査すら出来ない。つまり、ある程度以上、自分のことをしっかりと知っていないと使い方を間違ってしまうように見える。逃げ、のために使う都合の良い言葉じゃない、っていうか。あと孤独による自己憐憫や被害者意識、それから変なストイックさっていうのかな?勘違いストイックに使っちゃうとツノが重くなっちゃうように見える。だってあの人、実は全然する気なく見える。ただの脅迫観念。コスプレ。楽しくないプレイ。苦しい、がベース。しんどそう。
「コスプレって。君のそういう言葉のセンスはとても興味深いね。そうなんだよね、孤独であることはただ人を遠ざけるだけでは行けない場所。そこを勘違いしてたどり着いてしまうと、自分から徹底的に逃げる行為になってしまう。自分から”徹底的に”逃げた場所。そこから戻るには、来た道以上の長さが掛かる。」
ほー!!!なるほど。でも時間なんてものは飛び越えられるのでは?気付いて仕舞えば良いだけだと思うんだけど。
「それが出来る人は、自分から逃げなかった人なんだよ。自己。”己”っていう字が付いているでしょ?そこには人間の感情も含まれる。感情をしっかりと認識することは自分と向き合うことでもある。」
味わえ、みたいな話?私、実はそれ、嘘だと思ってるんだけど…
「うん。そうだね。味わうのではなく、認識するんだよ。認めるともちょっと違う。何があるのかを見る。それだけなんだけど」
ねぇ…?と彼はまた苦笑いした。
「如何せん、感情を否定する方向に走る人もある程度はいてね。それが恐れから来ている人たちもいるんだよ。認められないの。自分の精神を。」
あー!理解。確かに感情は如何様にも変えられるもの。
ん?でも、自分の精神を認められない、ということは、自分の思考すら認められていないということでは?
「そう!だから”望んでないこと”が多発して、生き物は苦しいと信じ込む。」
生き物は苦しい、てw 生きること、とかじゃなくて?
「うん。生物全般が苦しいのは当たり前。つまり”世の中は苦しい”に直結しちゃう場合もあるね。」
うわぁ…きっつ。それは生きるのキツいわ。
「君は今、何がキツい?」
へ???とキョトンとして、自分に問いかける。私、なんか今キツいことある?
…あ、生きること。お金ってところがどうにも自分の世界と繋がらなくてキツく感じるかなぁ。お金って生きることに直結させてしまってる。
「そうだね。君の場合は”生活すること”に直結してる。だからド貧乏だと思っていた時は食べ物でいっぱい来てたよね。」
んんん?それは事実なんだけど、私、仰る意味が解って無いです。
「君の場合は”お金=生活すること”なんだよ。だから稼いでいない時に食べなくなる。食べるための仕事、お金を稼ぐことを別に造ろうとしている。よく見て。君のお金を稼ぎたい理由は何?」
…”豊かな暮らし”?
「それ、誰の思考?」
あ!他人のだ!
「そう。他人のいう”豊かな暮らし”。自分のための豊かな暮らしを実現できるとしたら、君はどんな仕事をしたい?」
歌って仕事したい。
「気付いてる?”歌う仕事”って言っていないことに。」
あっ!うん、なんか変だな、って思った。なんか挟まってる。何これ?好きなことを仕事にしたいって思ってて、やりたくないことはもうかなりやめられてる。でも、、、
なんか変!
「君はね、”歌う仕事”をすれば良いの。それと、自分で見つけたよね、”輝きの体現”という言葉。歌うこと、踊ること、人前に出ること、言葉を発すること、それらは全てもうお金として入ってきて良いものなんだよ。」
うん、その生き方が私は一番好きって気付いてる。けどなかなか…
「もう具現化して良い時期に来たよ。それらをお金として顕さない理由はなんだろうね?」
えーーーー!なんだろう!?とあたふたしつつ、ゆっくりと考えを巡らせる。
あ、ちょっとだけ怖いかも。あとは、うーん、わかんないです…
「『自分の存在を 隠したい』だよ」
ああ ああ…この人は。この人は、全てを知っている。なんとなく、けれど確信した私は観念してこう言った。
どうしよう?私、思い出してしまった。。。隠してた理由。
「うん。そこはね、もう思い出さなくてもいい。”追体験をしないでも良い”と言ったほうがいいかな、君には。それはもう分かっているね?」
はい。思い出す必要は無い。引き摺り出さなくても、どうせ見えたら冷静に見れるのだから。
「そう。君はもう”観察者”という方法を知っている。
君は自分という存在を酷く隠してきた。能力を隠し、顔を隠し、酷い時には無機物に擬態して。そりゃあ”生きる”と”生活する”が分離するよね。
どうして、そうしたの?」
私という存在は疎まれ、誰かの邪魔になる存在だから。
うんうん、と彼は私を見ている。続けろということか。
私がいたら、それまでの重要なものは排除され、そこに新たな存在を組み上げることができる。それは今までの序列や秩序を侵してしまう。それはルールを破り、壊す。それによって困る人達が現れる。それは
”周りの人間の人生を狂わせる”。
震えが止まらない。そこまで自分の考えよりも早いスピードで口が動き、言葉を紡ぎ、愕然とした。怖い。怖い。何かが溢れそうだ。言ってはならない。この先は、言っては、この先に行っては
「そして?」
数の暴力。圧倒的な力の差。体格差、年齢差、思考と行動のスピード、糾弾、それならば、と力を捨て、
はた、と気付く。
”自分を、捨てた”?
彼は微笑みを絶やさずに私を見つめ沈黙を貫く。
ああ、違うな、私は、”私を殺した”。メッタ刺しにして、血濡れにして、ドブ川へ捨てたんだ。けれど、それでも足りないという人たち。だから別の人間になろうとした。彼らの欲求と要求を満たす”良い物””良い何か”になった。そして、それに気付いてしまったから、“良い肉の塊”でいることをやめたのだけど。それでも
アイツらは、自分のしたこと・しなかったことを全て”私のせい”にした。
私だけじゃない、どれだけの他人の時間を、人生をお前は喰い散らかした?
それでいて”唯一人歩め”などと綺麗事を。表向き、とても綺麗でストイックでよーございますねぇ?けれど、私は知ってるぞ、お前がどれだけの人間の肉を喰らってきたか。被害者ヅラしながら、蹂躙してきたか。どれだけ逃げてきたか。他人をミンチにしながら、自分は逃げた。だけどな、どれだけ逃げても変わんねぇんだよ、自分だけは、自分からだけは絶対に逃げられないんだからな。許さない。私は私の時間を食い潰した人間をもう絶対に許さない。絶対に、絶対に、
最後の一言が出るには、少し時間が必要だった。もう駄目だ。涙が溢れると同時に諦める。明確な意図を持って、私はその言葉を吐いた。
“殺してやる”
その言葉が出た直後、彼は私の頭に手を置いてこう言った。
「よく出来ました。」
それで良いんだよ、言っても良いの、と。
「君は逃げない。絶対に逃げないんだよね。戦略的撤退?って言うの?それをする気がはなっからないんだよ。そうしたって、結局人は自分からは逃げられないのを知っているから。なんなら倍以上に膨らんで返ってくるのも知っている。幼いうちに学んでしまったね。だからこそ、たくさんの痛みを抱えてきたし、それがぶり返して辛かったのも知っている。それでも君は逃げなかった。何度でも絶対に向き合い、越えてきたんだよ。自分を傷つけるやり方もしつつ、ね。そして今は「自分を傷つけるのではなく、変化させる」というやり方を自ら学び、手にした。
そういう姿に恐怖を覚える人間もいる。それが正しいやり方だと皆どこかで知っている。それでも逃げるのが人間さ。君のような、そういうどこか人間離れした部分を、人間は嫌うんだよ。だから「理解を得られなかった」という認識をここで捨てなさい。理解なんていうのは、やったことのない人間には出来ない。それが良いとか悪いとかじゃないことはもうわかってるよね?」
うんうん、とうなずく
「そうなんだよ。君はもうわかっている。”知っている”し、”解っている”んだよ。だからこそ。だからこそ、だよ?」
そこで一息置いて、私を見つめこう言った。
「自分の人生は自分で造る。もうこれが自由に出来る。
それを、認めなさい。君の、その膨大なる創造力を。
人を思い、人を慈しみ、人を立てて。
そうする為に自分の頭の中を創造し物質化するのを止(と)める
それをもうやめなさい。
君の造り出すものは、確実にこの世への貢献になるのだから。
その姿、勿論今迄の絶対に逃げない君の姿も含めてね、それを見てどれだけの人が自分の人生に立ち帰れたのかわかってる?分かってないよね。君と深く関わる人たちが確実に変わってきたのは、君の在り方を見たからだよ。時に他人は君を非難しただろう。けれど彼らは自分への怒りやもどかしさをぶつける場所がなかっただけ。分からなかっただけ。だって彼らは「そんなものを見たことがなかった」のだから。『見たことのないもの』を認識する力を未だ持ち得ていなかった。だから、それを認識出来るようになった人達は変わっていったんだよ。
そして君はもう許さない。自分を傷つけるやり方を、自分の肉を喰わせるようなやり方を、もう自分に許さない。ごめんなさいと泣きながら、全ての責任をその人たちに返した。ごめんなさい、なんてのも本当は言わなくて良いの。享受し続けたのは彼らなんだよ」
でも、それは。そうしてきたのは私の選択だよ。そんな無責任でいいの?
「良いんだよ。っていうかねぇ…決して無責任なんかじゃないでしょう。よく考えてごらん?よく観察してみて。彼らを慈しみ、立て、彼らの荷物を引き受けることで何が造り出された?」
…平和?
「そうだね。”彼らの”平和。
そうして出来た平和に、君は入っているかい?」
振り出しに戻る、だ。入ってない。絶対に殺してやる、と思う。
「そう!つまり彼らは、どうしたって君から抜けられない。勘違いしないでね、君が抜けられないんじゃ無いんだよ。彼らの一方的な依存だ。君は自分を悪者にしすぎ。自分の責任は自分で取る。それは正論だよ。だけど、それを”彼らの為に”やり過ぎる必要はないんだよ。これでも無責任だと思うかい?」
質問の答えにはなってないけれど…私が彼らを縛っているだけに感じる。
「うん。彼らの責任を君に負わせることに、自分を縛らせているんだよ。
それ、要る?」
要らない。もう要らない。私は私を大事にする。
「あー、そうだね…、うん。それも大事。けど、もうそこじゃないんだよ。よく見てごらん。君のしたいこと、この世に具現化する力、
そのエネルギー、質と量、彼らと合っているかい?」
…合ってない!!!
「そう。もうね、彼らには受け取れないの。彼らには、受け取る質も受け皿もないの。だから、「君が無責任」なんてことは起こり得ないんだよ。」
まあ、その責任を見たいならまだ見れるけどー?と彼は悪戯っぽく笑った。
いや、もういいです。納得いった。ここがずっと怖かったのだわ。
「経験則だね。責任を押し付ける人間は、引き受けることをやめた相手を見たら「無責任だ!」と責め立てるに決まってるじゃない。」
ぐうの音も出ません。。。そんな簡単なことも私は見えなくなっていたのか。
「はい、そこで自分を責めなーい。君は頭が良いからね、すぐに理解してしまう。ロジックと感性がするど…、うん、鋭過ぎると言っても過言でないんだよね。それが故に人の世では生きにくかった。でもそれを魔法の杖にしたんだよ。紛れも無い君自身の努力と研鑽によって。
もっと自分を誇りなさい。You must be proud of YOU、だね。」
ブフッと思わず吹き出した。急に英語!めちゃくちゃ発音良いじゃんw!
「君は真理を求め、さまざまな角度から見て、己の真理に辿り着いた。
それが皆が求める”具現化の杖”なんだよ。だから自分を誇りなさい。
それで良いんだよ。」
よくわかんな…、いや、ごめんなさい、多分解ってるわ。
「うん、理解してる。大丈夫。だから、ほら、見てごらん?」
長い長い話の結末だと言わんばかりに、その人は私の背後を指差した。
あ、完全に忘れてた!ツノの人!私はゆっくりと振り返った。
ギリギリ手の届くか届かないか、そんな距離のツノの人は、目から一滴ポロリと水を零し私の名を呼んでこう言った。
たすけて おねがい
そして、消えた。
呆然とそれが居た空間を眺めていると、眩い人が笑った。慌てて振り返る。
ねえ、あれ、誰!?なんで私の名前呼んだの!?たすけてって何!?
眩い人は笑いながら、
「さあ、どうする?あの子は変わりたいみたい。そしてそれには君が必要。どうしていく?」
…求めるならば与えるけれど、求め方と受け取り方による。引き受けはしない。自分を小さくなんかしない。己の思考は己のものだと認識するやり方。己の現実は己が造り、見ているのだ、と。
っていうか、マジで誰なの!?
「うんうん。うん、良い回答だねぇ!」
無視かい!
「ごめんごめん、目が覚めたらわかるよ。君ではなく、あの子の方が。誰だか分からないとして、君はあの「たすけて」に応じるかい?君の直感で答えてごらん。」
目を閉じて、耳を澄ます。肌。
私の、直感。
答えは”Yes"だった。
「オーケー。では、機会を与えるよ。大丈夫。君はキャッチ出来る。だから焦らなくて良いし、考えなくて良い。答えを探さなくてももう良いんだよ。ものを造り、産み出すことをしていてね。それこそが君のこれからの生き方なのだから。私は”使命”という言葉は好まないんだ。それを縛りにしてしまう人間もいるからね。君はもう自分の在り方をしっかり選んだ。そしてこれからも選び、変わっていくことが出来る。”それが出来る”という在り方すら学んだんだよ。もう一度言うね、
それを、認めなさい。
しっかりと視認し、認め、己の研鑽を讃えるのです。」
最後の一文のちょっと澄ました様子が可笑しくて、思わず口角を引き上げた。
「いいね!君は美しい存在。私たちから見てもね。人間の美しさを見ることが出来る、そういう、ある意味では稀な存在なんだよ。汚いものすら美しいと感じるその感覚とその美しさを具現化していくことを忘れないで。君は、稀有な存在なのだから。己を貶めることはもうしないで。十二分に学んだのだから。」
納得はいったかい?と言わんばかりに彼は両手を拡げた。
納得?そんなものはわからない。わからないけれど、
”わかった”ことはわかっている。
そして、わかった。
ああ、あなたは。あなたは、あの
「さあ、いってらっしゃい。私はあの場所にいるから。沢山の君の”輝きの体現”を持っておいで。」
…ありがとう。本当に。愛してる。
彼はとてもとても美しい顔で微笑んで
「サイノツノは、いつか壊れ
私の子は、己の愚かさに気付くだろう」
詩を読むように朗々とそう言った
ところで目が覚めた。
ぼんやりとしているのに、頭は冴えていた。夢の中の、もはや夢じゃない何かだったのかもしれないが、この長い長い対話は私を、私の認識を確実に変えるものだった。
I’m proud of me,myself.
己。自己。観察者であること。
後日、私は、あの場所にいる眩い人に後押しをされたのだ、と気付く。
ちなみに仕事の依頼も増えた。勿論、私のやりたい仕事。
そんで、それは、
また別のお話。
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