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ホームラン実況を構成する『4つの時間』

実況オタクくんです。

今回のテーマは実況の中でもシンプルだからこそ難しい「ホームラン」。

ホームランの実況ってシンプルなようでかなり奥が深いのだ。

試合の中でも実況が盛り上がるシーンが、得点シーン、中でも試合が拮抗している場面でのホームランほどボルテージが上がる瞬間はない。

バッターが打つ、打球がフェンスを超える。

ここだけ聞くとすごくシンプルな事象に感じられるがホームランの描写には4つの時間がある。

それは
①打った瞬間
②打球追い
③入った瞬間
④ホームインまでの余韻

である。

まず

①打った瞬間
これも明らかにホームランの打球もあれば、「外野フライかな?」と思ったらフェンスオーバーのこともある。

ホームラン性の当たりであれば、第一声からパーンと声を張れる。

ただフライっぽい時は「打ち上げました。」や「レフトへ上がった。」のように低めに入る。

実況か「フライかな?」と思ったということは視聴者もそう思ったということ。無理に煽らずに低めに入っていく。
※ここで実況アナウンサーが目が肥えた野球ファンと同じ、もしくはそれ以上に打球感がなければこの第一声に違和感が生じてしまうのは明白である。

②打球追い

打球の質、勢い、外野の下がり方などから打球の行方を追う。
明らかにホームランであればここの時間も短い。一方、フライかな?という打球に関しては低めに入ったところから、「伸びていくぞ!伸びる!まだ伸びる!!!!入るか?!?!」といったテンションの増幅が必要だ。

③入った瞬間

スタンドインの瞬間に「入ったー!」は合わせたいところである。
見ている人も「おー!!!」となる場面であるから。
また明らかにホームラン性の打球の場合はフェンスを超える前から、ホームランになった瞬間に向けての「助走コメント」を始めるケースもある。

例えば、YouTubeでもよく見かける2006年の巨人vs中日戦 延長12回に中日のT.ウッズが満塁ホームランを打つシーン。

実況アナは打った瞬間からこう実況している。
『痛烈!一閃!!今日は、今日は、スリーランに続いてグランドスラム!!!!』

もう、「今日は」のところでほぼほぼホームランを確信している。これでフェンスダイレクトとかだったらちょっと恥ずかしい、、、笑
ただ、グランドスラム!!!の瞬間にスタンドに白球が吸い込まれる様子はとても気持ちがいい!名実況の一つである。

④ホームインまでの余韻

打球がスタンドインして「ホームラ〜ン!!!」と絶叫した後、バッターがホームに帰ってくるまでにどんなコメントを添えるか。

まさにバッターがホームに向かうまでの花道を演出するかのような時間となる。
このホームランがどんな意味を持つのか、誰がどんな思いを背負って打ったのか。
映像もベースを回る打者、スタンドやベンチなどを映した後、最終的にはホームを踏むバッターランナーに戻ってくる。

そこで改めて「◯対◯になりました!」

ということで、ホームランのシーンに締まりが出てくる。


このようにタイムリーであればヒットになるまでの過程、ホームを踏むまでの過程が様々あるが、ホームランは打ったらスタンドに入るまでボールは飛ぶだけ。スタンドインしたらそのあとは打者がダイヤモンドを一周するだけ。

要するに結果の大きさに比べて説明するべき描写が少ないのだ。
そこに余白があるからこそ、表現者として実況アナウンサーは独自のコメントを添えるのである。

ホームランのシーンは特に実況アナの色や意図が出やすいと思う。


2007年の甲子園 決勝 佐賀北vs広陵。
副島選手の逆転満塁ホームランを実況した当時NHKの小野塚アナは素晴らしい実況を残している。

『あり得る最も可能性の小さい。そんなシーンが現実でーーーーす!!!!』


そのまんまなんだけど、「がばい旋風」を巻き起こした佐賀北の勢いや野球にかけた情熱が伝わってくる。奇跡が起きたんだな、と実感できる実況だと思う。

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