「なぜ私たちは関係性について考えたいと思ったのか」WORK and FES 2021振り返りインタビュー#WORKandFES2021
なぜ私たちは関係性について考えたいと思ったのか
長い準備期間を経て開催された「WORK and FES 2021」が終わると同時に、早くも「WORK and FES 2022」に向けてメンバーは動き出そうとしています。でも、その前に、少し立ち止まって“これまで”と“これから”を考えることにしました。ご登場いただくのは、プロジェクトを牽引する「働くの実験室(仮)」の中澤茉里さんと大木早苗さんです。
コロナ禍の生活にも慣れてきたので、これから目指す方向を見定めたかった
──WORK and FES 2021お疲れさまでした!
中澤 お疲れさまでした!
大木 お疲れさまでした!
──WORK and FES 2021 は「関係性」がテーマでした。なぜこのテーマに行き着いたのでしょうか。
中澤 新型コロナウイルスの影響で、暮らしや仕事の在り方が一変したのが 2020年だったと思います。それから1年が経ち、ようやく変化にも慣れてきたなかで、これから目指す方向をあらためて見定めたいなとぼんやり考えていたんですね。そのための取っ掛かりとしてどんなキーワードがいいかなと探していたところ、今はいろんな物事の関係性が変わっているんだろうなとふと思ったんです。
──それは何かきっかけがあったんですか?
中澤 大きかったのは、働くの実験室(仮)※01で取り組んだ『“働く”の100年史』※02という映像プロジェクトでした。早稲田大学の原克先生※03に映像の時代考証と近代日本社会の“働く”を考察する寄稿をお願いしたんです。それを読んで、これまで私たちが当たり前だと思っていた働き方は歴史も浅 く、変わらない保証もないんだと再認識して。現にSmartHRでもコロナ禍に入る前までは基本的に毎日オフィス勤務でしたし、コアタイムも設けられていましたが、その前提が変わったことでメンバーの仕事とプライベートの境目が薄くなった気がするんです。私もリモートワークの合間に洗濯物を干すことがあるし、メンバーによっては子どもを迎えに行くこともあって。そういったことを含め、さまざまな関係性の変化が起きていると考えるといろんなことが腑に落ちたんですよ。
──最近は、恒久的にフルリモートOK※04になったプロダクトサイドを中心にオフィスから遠く離れた場所に引っ越すメンバーもいますよね。2人は東京近郊から離れるとしたら住みたい場所はありますか?
大木 今は東京にいたいかもしれません。カルチャーや情報にすぐ触れられる感じが好きなんですよね。将来どうなるかはわからないですけど。
中澤 今は全然考えていないですが、もし引っ越す機会があるなら惹かれるお店がある場所を選びたいなと思っています。最近いいなと思ったのは、松本とか倉敷とか。調べてみたらいくつかあったんですよね。素敵なお店がある場所には、面白いコミュニティがありそう。
──SmartHRにかぎらず、居住地を限定しない働き方は増えていくんですかね。
中澤 きっと増えますよね。日本の労働力人口はこれからどんどん減っていくので、場所に縛られずに働く方法や子育てをしながら働く環境などを整備しないといけなくなるのかなって。
大木 実際、プロダクトチームでは地方在住のエンジニアの採用をはじめているんですよね。それもフルリモートが可能になったから実現したことですし。
中澤 話は少し逸れるかもしれませんが、多様性という観点だと社員が500名を超えたばかりの今のSmartHRはまだまだ同質性の高い人たちが集まっていると思うので、会社の規模を拡大するなかでどうやってより多様な働き手 を採用していくかは課題になりそうです。たとえば、これまでは「100の問題を、100人で1問ずつ解く」※05という考えのもと、それぞれの領域で自律的に働けるスペシャリストを中心に採用してきましたが、ずっとそれでいいんだっけ? もっと多様な属性の人が活躍できる土壌を整えてもいいのでは? など、新たな議論が生まれつつあるような気がします。
年齢や経験に関係なく、学び直しができる環境も必要
大木 あと思い切ったキャリアチェンジのハードルも下がっていくといいなと思います。たとえばマーケティングやブランディングに携わる私が今から人事になりたいと考えても、経験値が足りないからなかなか難しいと思うんです。ただ、これから40年以上も働くと考えると、もっと多様な道が開かれていてもいいんじゃないかなって。
──現在は年齢を重ねるほど転職しにくいイメージが強いですよね。
中澤 いわゆる第二新卒と呼ばれる20代後半くらいまでは未経験でも求人の選択肢がある程度あるんでしょうけど、30代を過ぎてからまったく経験のない職種に就くのはまだ一般的にハードルが高い感覚があります。といっても、SmartHRには思わぬ前職を持つメンバーがたくさんいるので、大胆なキャリアチェンジをする人たちがこれからもっと増えて、その体験談が世に出ていったら面白いですよね。
──「学び直し」のような言葉が話題になることも増えていますが、年齢や経験に関係なく転職できる環境がもっと整うと生きやすくなるのかもしれません。
中澤 実は今、社内コミュニケーションなど特定のテーマのもとに集まるグループ横断のプロジェクトがいくつかあるんです。そういうものがより増えていくといいのかもしれないなと思いました。そうすると、既存の肩書きのままで新たな知識や経験を身につけることもできるので。
大木 それはすごくよさそう。いろんな可能性が拓けてくる気がします。
回を重ねるごとに“みんな”と呼べる範囲を広げていきたい
──2回目の開催となったWORK and FESですが、2020年とくらべていかがでしたか?
中澤 もちろん改善しないといけない点もありますが、いろんな挑戦ができてよかったと思います。2020年とくらべると2倍以上の方に見ていただくことができましたし、2021年は働くことに関するより広いテーマを取り扱うことができました。あと、セッションも予定調和にならず、そのときの盛り上がりのなかでしか聞けないことが話されていたんじゃないかなって。
大木 今回は特に登壇者が魅力的だったなと思います。何か明確な答えを言ってくれるというよりは、印象に残る言葉が生まれたり、そういう考え方もあるのかとハッとする瞬間があったりして、すごく面白かったです。
中澤 こういうイベントを企画する醍醐味って、オンラインであってもひとつの場所に集って登壇者の会話を聞きながら、みんなで同時に思考を深めていくことにあると思うんですよね。そういう意味では、どのセッションにもいいグルーヴが生まれていた気がするので、見ていただいた方にとっては何かしら視野を広げるきっかけになったんじゃないかなと思います。
──先ほど改善しないといけない点もあると言っていましたが、具体的にどんなことを変えていきたいと考えているのでしょうか。
中澤 ふたつあって。ひとつは「思っていたよりも面白かった!」という感想をもらったことです。嬉しい言葉ですが、それって裏を返せば元々の期待値がそこまで高くなかったということじゃないですか。そうなってしまったのは、このイベントで扱う題材がDXやD&Iなど、休日に考えるにはやや硬いものに見えることが一因としてあると思うんです。そうであるなら伝え方についてもう少し考えていかないといけないなと。同時に、当日を楽しみに待つための事前の仕掛けについて、次回以降もっと充実させたいなと考えています。
──では、もうひとつは?
中澤 モデレーションの部分ですね。これは今回もよかったのですが、さらに工夫できることがあるんじゃないかと考えさせられました。たとえば、当日モデレートしてもらうだけではなく、企画が形になる前から議論に参加してもらい、一緒にゲストの人選をして当日を迎えることで、より魅力あるセッションが生まれることがあるなと実感して。生配信のトークセッションは一回勝負だからこそ、思わぬ盛り上がりが生まれるための土壌づくりをより丁寧にやっていきたいなと。それもあって2022年は、私も自らモデレーターをやってみたいと密かに企んでいます。
大木 自分で経験してみないとわからないこともありますもんね。あと、社内のメンバーをどうやって巻き込んでいくかも考えていきたいと思いました。たとえば、私たちが所属するマーケティングチームと日々の仕事で関わらないプロダクトチームって、もっと意思疎通の機会を持てるんじゃないかなと思うんです。コロナ禍でオフィにいることも少なくなり、偶然の出会いが減ってしまっているからこそ、これまで関わることが少なかったチームと密にコミュニケーションを取っていきたいなと思います。
──今まで話していたことを踏まえて「WORK and FES 2022」に向けて抱負があれば教えてください。
大木 現段階では何も決まっていないのですが、まずはヒアリングの場を増やしたいなと考えています。以前、私と異なる部署にいるメンバーにWORK and FESをもっと盛り上げていくためにはどうしたらいいと思うかを聞いてみたら、いつも話しているメンバーと違う視点で意見をもらうことができてすごく新鮮だったんですね。社内外問わず、もっといろんな人の意見を聞いてみたいなと。
──中澤さんはいかがですか?
中澤 WORK and FESって「こういうイベントみたいにしたい!」という明確なベンチマークがない状態ではじまったこともあるので、独自のカラーを育んでいきつつ、もっと多くの人に楽しんでもらえるようなイベントにしていきたいと思っています。回を重ねるごとに、“みんな”と呼べる範囲を広げていければいいなって。
文:村上広大 撮影:田野英知 図版制作:製作所
■働くの実験室(仮)公式サイト
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