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カリンバな時間

原木からつくる若きギター職人の制作過程で出てきた、端材でつくったカリンバの試作品。
柔らかで、重なるように響く倍音の美しい音に魅かれる。
適当にポロポロと音を出しているだけで、心地よくなる。
しかし、奏でるようになるのは、極限的にむずかしい。
右がドミソで左がレファラなのに、その上は逆になる。
それでも何とか、たどたどしく音を探れば、曲に聞こえてくる。
アレ?、♯や♭を弾けないことにも気付くが、気にしない気にしない。
なにしろアフリカの熱い大地で生まれた楽器なのだ。
太陽の下で飛び跳ねたり、地平線に沈む夕陽を想像して、弾けばいいのだ。
「瀬木貴将」の「サファリに行こう」のサンポーニャに適当に合わせて、象さんの気配を感じた気になれば、幸せな時間を味わえる、それで良いのだ。
だから、とても不思議な楽器なのだ。
初めて見た人は「本当に楽器」と首を傾げ、音を聴いた人は立ち止まり、少しだけ勇気のある人は「一つください」と言う。
しかし、若きギター職人は気難しく、なにより忙しすぎて、カリンバにかまけている暇がないのだ。だから、人前では絶対弾かないようにしている。
いつかの話は、冨澤健一さんのつくるブナの木のカスタネットに合わせて、カリンバを弾いてみたい、という夢の時間が叶うことかな。




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