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橅の森へさんぽしに

橅とは、大変失礼な字だ。
木だけど無用だと、役立たずだ、ということだろうか。
山に登り始めた昭和40年代は、渓谷という渓谷に林道を通して、山という山から木を伐採して、集材してから、原木の状態にして、トラックに積み込んで、山からだしていた。
なかでもブナは、直径2m以上あるような大木が、運ばれていた。
あれから50年以上が経ち、林道という林道は放置されたが、一度できた砂防ダムや堰堤はそのまま残って埋まっている。
ようやく静かになるかなと思ったら、今度はバブルとやらで、大規模レクリエーション計画とか、スキー場にゴルフ場の乱立と、まあよくもこれほど山という山をいじるのだろうと、切なくなった。
足繁く通っている焼石連峰も、国道397号線は、冬季を除けば、岩手と秋田の間にトンネルができ、立派な舗装道になっている。
夏油温泉に通じる道はスキー場まで立派になったし、ダムもできた。ダムの脇には温泉までできている。さらにはゴルフ場まである。
林道も新しく伸びていたり、静かに見える山の中も、真冬以外はなかなか賑やかになっている。
そんな山でも、橅は無用と言われながらも、ひっそりと生き残っている。
尾根筋に太いブナが揃っていると、足が止まって魅入ってしまう。
夏油温泉の奥に、天狗森という山がある。

左手の奥が天狗森
右手にはオガラ森~前塚見が見える


標高千メートルほどの山だが、牛形~経塚~駒ヶ岳がつくる三角形の中にあるので、夏油の森を360度見渡すことができる。
雪の有る時にしか行けないが、ここでは人工物を見ないで済む。
頂上標識もないし、登山道もない。
登る人もいなければ、振り返る人もいない。
あるのは濃密な森のうねりだけだ。


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