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へそ曲がりと山歩き「夏油の鞍掛森山」編

薮漕ぎ最高の「鞍掛森山」

秋も店仕舞いの季節、きのことりのおじさんたちも里へ帰った。
夏油大橋の手前を左に入り、駒ヶ岳への林道を辿る。
登山口を過ぎてさらに進むと、三角沼への入り口に着く。
林道はさらに伸びていて、大規模な伐採と工事がおこなわれていた。
三角沼へは、ピンクのテープが下着を干してるように、たくさんぶら下がっている。前回、下見に来たときは無かった。
視界がピンクになったが、気を取り直して進むと、10分もかからずにつく。
太陽は、ちょうど駒ヶ岳の上にあり、三角沼は光の中にあった。
昔話で、大岩魚を釣る話があった。その子孫は、いまもいるのだろうか。
フライフィッシャーマンは、想像の中で、キャストを繰り返す。
今は禁漁期。岩魚はあきらめて鞍掛森山に登るのだ。

水鏡に映る駒ヶ岳


誰が名付けた「鞍掛森山」。金ヶ崎側からみると、鞍のようにも見える。
駒ヶ岳頂上には、三体の神馬。たしかに鞍はつきものだ。
この山には道がない。でも薮山好きな方はいて、記録は残っている。
岩手の山、完全踏破を成し遂げた方もいらっしゃる。ぜひ、書物に上梓を。
おおよその方向に目星をつけて、歩き始める。最初は快調だ。
オボガ沢をわたると、南斜面の急登がはじまる。
遅いなめこが残っていたが、とらない。山のものは山に置くのだ。
なかなかの急登が終わると、東西にのびる尾根に着く。
灌木と薮がさらに濃くなり、木登りしては、行く先を確かめる。
西に向かう広い尾根は、薮を一層濃蜜にして、絡めとろうとする。
北峰と南峰の中間地点に出る。秋田側の斜面は急だ。
先ずは、南峰を目指して薮に突入する。尾根沿いを進もうとするが、ブルトーザーでもないと進めない。尾根沿いをあきらめて、西斜面を進む。
薮はましだが、急な斜面で、頼りになるのは細い木だけだ。
頂上直下、難攻不落のカリオストロの城は薮でできていた。
藪の中のほふく前進をくりかえし、なんとか抜けたところが頂上。
残念ながら、クラリスはいないし、お宝もない頂上は、やっぱり藪の中。


いやらしいことに、木の幹にピンテを巻き付け、登頂日や名前などが記入していた。ピンテの使い方を間違っている。モヤッと、何か苦さが湧いた。
眺望があるほど開けていないので、中間地点まで戻る。
つぎは北峰だ。距離があるので、東に行き過ぎないように注意する。
それでも東にそれてしまい、とうとう薮の中に閉じこめられた。
薮に蔦に笹に絡まって、にっちもサッチモWhat a wonderful world.
悪戦苦闘わずか10分だが、藪の中で溺れていた。もがき苦しんだ。
疲労の極致。まさか薮で酸欠になるとは、長生きしてみるもんだ。
ようやく予定のコースに戻ると、なだらかな笹原にでる。
ここを過ぎると尾根は曲がり、薮の少ない尾根道を行くと北峰につく。
あの薮漕ぎが続くと覚悟していたので、拍子抜けだ。
北峰にもピンクのテープがぐるぐる巻きだ。取ろうかと思ったが触りたくなかった。
木々の間から夏油の山々が見えるので、写真を撮ったものの、写っていたのは薮薮薮薮薮薮薮薮薮。
あんまり薮薮いうなと、阪神ファンから叱られそうだ。
登りと同じく苦戦して、ようやく三角沼に戻る。
鞍掛森山はピンテに始まり、ピンテに終わった。
長靴の中には、お土産の、木の葉などがどっさりと入っていたとさ。

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