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帰れない山について考える

戻れない山、ではなく帰らない山、でもなく。
帰れない山。

何だか自分の意志だけでは、もう二度と行けないような、
そんな寂しげな雰囲気をタイトルから感じた。

実際に始まってみてまず思ったのがスクリーンの大きさ。

横めいっぱいスクリーンを活用しておらず、どちらかと言えば正方形のような。
スクリーンの両端が余っているような感じ。
詳しくないので定かではないが、あの美しいイタリアの縦にそびえる山々を収めるための技法ではないかと。

主人公二人の幼少期の仲の良さからも、これはBL作品だろうとたかを括っていた。
最近では「君の名前で僕を呼んで」や、国内では「おっさんずラブ」など、男性同士の恋愛模様を描く作品も急激に増えている。

しかし、割と早い段階で二人は会わないまま青年期を迎え、三十代半ばになって父親の死をきっかけにようやく再会を果たすのだけど、ふたりの間には恋愛を感じさせるような熱い眼差しはなく、かと言ってただの仲の良い友達とも違う....

もっと深いところで強く結びついている、ソウルメイトという言葉がしっくりとくるような空気が漂っていた。

正直に言えば、この映画が伝えたかったことはよく分からないままだ。
およそ2時間半の、最近の映画作品の中では比較的尺の長い作品。

でも、この長い尺や、常にスクリーンにあった壮大な山々が、彼らだけではなく全ての人の人生とは?というシンプルな問いに応えているような気がした。

この映画を観た後、感傷的な気分が続いた。

映像を思い出しては、何が正解だったのだろうなんて、想いを巡らせたりした。


けれど、結局私は生きているし、
これからも生きていかねばならない。
生き続ける痛みに耐える静かな強さ。

私は登山をするのだけど、登っている時はとにかく辛い。
では下るときはどうかというと、これまた膝が痛くなって辛い。

けれど己と無心で向き合う時間、山頂についた時の喜びや景色は地上での時間とは代え難い。

人生はきっと、死ぬまで耐えることの連続。
でも時々訪れる幸せを糧に、なんとか歩を進める。

なんとも素晴らしい映画に出会ってしまった。

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