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いちばん幸福な状態

 書斎の窓際にお役御免となった3台のパソコン。いずれもウィンドウズ10以前には活躍していた7やXPたちだから壊れているわけではない。
「捨てるに忍びない」とOSをリナックスに変更してやった。緑色のミント・デスクトップがともり、見事に現役復帰!
 
 世間では65歳以上を「高齢者」と呼ぶが、日本老年医学会は新たな提言をした。65~74歳は「準高齢者」、そして我ら75~89歳が「高齢者」で、90歳以上を「超高齢者」と呼ぶらしい。
 こんな高齢社会にコロナ禍が追い打ちをかける。医師不足はさらに深刻化するだろうから、(高齢者の印を押されても)免許を授かった身としては隠居などしていられない。
「年寄りの冷や水」と笑われようが気にせず、爺医が行う正真正銘?の老人医療を続けたい。
医師法と同い年なる老医われ第一条で地域まもらむ(医師脳)
 
 弘前市の医師募集をインターネットのM3情報サイトで検索する。25件のヒットが〈60歳以上も可〉の条件を加えた途端、すべて消えてしまった。
「焦っても仕方がない」と長期戦に備え、スマホにM3アプリをインストールする。更に設定を、常勤だけでなく非常勤とスポットも加えた。
「求人はありません」のメッセージが続く。
 
 浪々の身とは言えダラダラ暮らすのは嫌なので、毎日のスケジュールを立てた。
 朝5時過ぎに起床、6時に朝食を摂ったら机に向かい、午前中は短歌を詠んだり、原稿を書いたりのアウトプットに充てる。昼食と昼寝のあとは、読書などのインプット、気が向けば妻のガーデニングを手伝う。夕食後は、涼しくなったころ夫婦で30分ばかり散歩する。シャワーで汗を流し、のんびりしていると眠くなる。
 とまあ、こんな生活を始めた。
 そして出来上がったのが、クリアファイルブック8冊。
『モリオカNOW』
『クィーンズ俱楽部』
『健生塾』
『切り抜き帳』
『爺医の繰り言』
『500字DE爺医の繰り言』
『国立病院は永遠に』
『公用旅券を捲り昔日思ふ』
 さて、これら小冊子の使い道だが……。
 自分の通夜の席で酒の肴にしてもらう。会葬者の口が軽くなるように、9冊目のタイトルは『会葬御礼』と決めた。
 でも執筆はもう少し先にしよう。
 
 半年余りの閑居の末、たまたまスマホで見つけた非常勤の健診医募集に応募したところ、婦人科検診も担当することになった。7年前に被災地の南三陸病院で産婦人科を再開させて以来だから、それこそ「昔取った杵柄」である。
 津軽保健生活協同組合健生病院に感謝を込めて一首。
半世紀前の医師免許証ありがたし。『賞味期限』なる語とは無縁と自負す
 だがくれぐれも「老害」と言われぬように。
 
 この世に生まれて「いちばん幸福な状態」とは?
「たえず有益な活動を続けられることであり、いきいきと仕事をしているときだ」と『幸福論』で有名なカール・ヒルティは言う。
 余談だが他にも、「三大幸福論」と呼ばれる名著がある。イギリスの哲学者バートランド・ラッセルの『幸福論』に、フランスの哲学者アラン(本名エミール=オーギュト・シャルティエ)の『幸福論』だ。
 
 すでに「後期高齢者」と呼ばれるようになった爺医でさえ、「幸福な生き方とは?」と問われたら……。
 こう答えたい。
「朝起きてやる仕事が決まっていることである」
 もちろん職場でのサポートがあってのことだし、妻の支えにも感謝している。
ヒルティの『幸福論』によらずとも老いて働ける幸せを思ふ

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