そろそろカルナさんについて語らせてくれ②
前回の続きだ。今回は主に、現代インド人にカルナさんがどう見られているのかについて語ろうと思う。
前回も言った通り、カルナ及びドゥルヨーダナは敵サイドの人間でありマハーバーラタ(以下、マハバ)の中では概して「間違っている人物」として書かれがちである。にも関わらず、現代インド人には中々人気があるのだ。
まずはこれを見てほしい。
これらは全て、主人公が明らかにカルナをモデルにしていると確認できる映画だ。ダラパティなどはGEOで借りられるので是非見てほしい。
カルナがモデルになっている人物の特徴としては、
・もう名前がそのままカルナ(現代インド読みではカルン、もしくはカラン)か、父親であるスーリヤ
・幼少期に捨てられて養父母に育てられる
・実の親は裕福、育ての親は普通又は貧乏
・アウトロー、復讐者などダークな面を持っている
・いい奴
などが挙げられる。カルナがモデルの人物は大抵この中の3つ前後の項目に当てはまることとなる。
ちなみに、かの大ヒット映画『バーフバリ』の主人公もいくつかカルナ要素を持っている。例えば父バーフバリのシヴァガミの前でサソリに噛まれても耐えるシーンや、子バーフバリの生まれてすぐに川に流され一般家庭に拾われる展開などはカルナのエピソードを踏襲している。
バーフバリの鎧のマーク、太陽の中に馬というモチーフもカルナの父神であるチャリオットに乗った太陽神スーリヤを意識したものだろう。
高貴な生まれの者が故郷を追われ、やがて帰ってくるという展開は「貴種流離譚」と呼ばれ世界中の民話・神話に見られるパターンだが、インドでその展開が出たらまず作者がカルナを意識していることは間違いないだろう。
なお、マハバ本編の主人公であるアルジュナやクリシュナがメインキャラのモデルになっている映画はカルナに比べるとはるかに少ない。これは両名が半ば神格化されている(クリシュナに至っては完全に神格)ということもあるだろうが、やはり日本で言うところの「判官びいき」のような作用が働いているのだろう。人は劣勢な方、可哀想な方を応援したくなるのだ。
ちなみに、カルナがモデルだからといって皆が皆不幸な結末を迎えるわけではない。というかむしろハッピーエンドを迎えることが多いと思う。インド人が映画に求めているのは主に「笑い」「恋愛」「スカッとする話」なので、ハッピーエンドを迎えるカルナとかいう最高の存在が量産されているのだ。ありがとう現代インド人。
そして、これは映画に限った話ではない。
小説、
劇、
などなど、カルナ人気ひいてはドゥルヨーダナ人気はあちこちで見られるのだ。
2017年に公演が行われた歌舞伎版マハーバーラタ、『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』もカルナを主人公、女体化したドゥルヨーダナをヒロインとして描いている。
▲漫画で強キャラムーブをかますカルナさん。
オチが思いつかない。
とにかく、折角日本語訳が沢山出ているのだから皆マハバを読んでほしい。全訳じゃなくて部分訳の方がオススメだ。
直近だと、沖田瑞穂氏が『マハーバーラタ入門』というマハバを一冊にまとめた本を出している。この記事でマハバに興味を持ってくれた方、まずはこちらからどうぞ。
部分訳じゃあ推しの全発言全行動が見れねぇだろうが! という方、全訳なら山際素男版マハーバーラタがオススメです。英語からの重訳となりますが、比較的読みやすい文体です。もう一つの上村勝彦版は原典訳ですが直訳調で、それに何より未完ですので……。
マハーバーラタを何卒宜しくお願い致します。
参考文献
前川輝光「インド映画におけるマハーバーラタ」(2003年,亜細亜大学国際関係紀要 12(2), pp.61-89, 亜細亜大学,https://ci.nii.ac.jp/naid/110000539888)
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