そろそろカルナさんについて語らせてくれ①

こんなプロフにしてるのに肝心のカルナのこと全然書いてないことに気が付いたので今日はカルナについて語る。

だがその為にはまずカルナが登場するマハーバーラタという叙事詩について説明する必要がある。長くなりそうなので、この記事は二つに分けようと思う。今回はマハーバーラタ(以下、マハバと略すことがある)のあらすじや設定についての話に留めておく。


マハーバーラタとはインドの古典叙事詩である。従兄弟同士の王権争いというメインストーリーを軸に神話とか伝承とかをごちゃ混ぜにした、世界一長い叙事詩だ。

例えるなら、平家物語を軸に古事記・日本書紀と万葉集と今昔物語集を全部混ぜてそのままお出ししたような感じの物語である。

主人公達は王妃と神の間に生まれた五人兄弟。それぞれ父神が違い、父親によって様々な個性を持つ。以下参照。

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そこに現れるのが敵キャラである従兄弟のドゥルヨーダナと99人の弟達(こういう所にいちいち突っ込んでたらキリがないのでスルーして)。

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自分こそが次期国王にふさわしいと名乗りを上げたドゥルヨーダナと臣下達はいかさま賭博で五人兄弟の長男ユディシュティラを打ち負かし、そのせいで五人は揃って14年の間森に追放されてしまう。

(中略)

長き隠棲期間を乗り越えた五人の王子は、遂にドゥルヨーダナ軍との全面戦争に挑む。後に「クル・クシェートラの戦い」と呼ばれるこの世紀の大戦の結末やいかに……!?

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というのがマハーバーラタのあらすじである。
カルナはドゥルヨーダナ軍の将軍であり、五人の王子の生き別れの兄にあたる人物だ。五人兄弟は実は六人兄弟だったのだ。

王妃がまだ未婚の姫だったころに不慮の事故で産んでしまい、「自分には育てられないから」と川に流した赤ん坊、それがカルナだった。

カルナは御者の夫婦に拾われて立派に育ち、ドゥルヨーダナにその弓の腕を見込まれて臣下になったのだった。

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えっ……絶対強キャラやん……?
設定がもう約束されし強キャラやん……?

ちなみにカルナが自分の出自を知るのはクル・クシェートラの戦いの直前なのだが、クリシュナによる「今、自分が五王子の長男だと名乗り出れば大戦は起こらず、お前は王となり全てを手に入れるだろう。ドゥルヨーダナの元を離れてこちらに付け」という提案に対してもカルナは「ドゥルヨーダナとの友情を裏切る訳にはいかない」と断固拒否している。

その後訪れた実の母(王妃)に対しても「親としての義務を果たさなかった貴女に何を主張する権利があるのか。アルジュナ以外の兄弟は殺さないでおいてやるから帰ってくれ(要約)」と突っぱねている。

いや、古代インドでこの価値観は凄ない??? まだ親絶対視の時代やん??? 自分の正義より公の正義が優先される時代やん????

マハバ、本当に紀元前から語り継がれてグプタ朝に今の形となった叙事詩なのか? 僕が知らないだけで本当はマガジンとかDCコミックスとかで連載されてたんじゃないのか?

いやここ以外は違うのだ。ちゃんと「ああこれ現代の価値観で読むと理不尽な話だけど古代インドではこれが正しい行為だったんだな」って展開はめちゃくちゃある。師匠のドローナがアルジュナを最強の戦士にするべく、アルジュナより強そうな戦士の親指を切り落としちゃうエピソードとか普通に美談として語られてるのだ。

そんな世界観の中だからこそ、現代人にも共感できるような価値観を持っているカルナさんが輝いて見える。

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カルナさんはマハバの中では悪役だが、現代インド人には大人気だ。これは僕の妄想ではない。本当なんです。次回はその辺りのことについて書こうと思う。

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