ミュージカルを語る 番外編
いつもはミュージカルの話をしているが
今回はミュージカルとはまた違った作品
中島みゆきさんの「夜会」を紹介していきたい
コロナでなかなか舞台に行けない今
色々な作品を見返してみて
改めて好きなのがこの「夜会」である
夜会とは、、、
中島みゆきさんがコンサートとはまた違ったかたちで演出する作品で
演出、作詞、作曲、脚本、主演の全てを担っている
ミュージカルのようでミュージカルでない
"言葉の実験劇場"と呼ばれている
そのなかから人気の作品を紹介する
「2/2」
これは夜会vol.7(1995年)、vol.9(1997年)、vol.17(2011年)と再演、再再演と行っており
さらに、小説化や映画化にもなっている話である。
しかも、面白いのが再演といっても、違った演出で行われているということだ。
残念ながらvol.9の方はDVDもないので、そこは知らないが
7と17では、ストーリーは変わらないが曲や演出が1部変更になり、むしろわかりやすく話がまとまった気がする。
ただ、残念なのがほとんどの曲がCDになっていないことである。
歌詞が素晴らしく、何度でも聴いていたいが、アルバムに収録されていないので容易く聴くことは出来ない。
アルバムにない曲をあげると
があげられる。こんなに多いのかと思われるだろうが、夜会の曲でアルバムに収録されてない曲は全部で”125曲”確認できた。アルバムだけでは中島みゆきは語ることができない、、、。
ここからはvol.17を中心に話をみていこう
最初の舞台は出版社から始まり、明るい雰囲気で膜が開く「旅は始まる」
ちなみに、vol.7(映像版)では、しんみりとしたインストゥルメンタル「LAST SCENE」で始まり
彼女が何かに襲われては、荷造りして圭から去っていく姿から始まる。
その上田莉花働く出版社に矢沢圭が現れ、ひとつの竹の絵を持ってくる。それを梨花は上司に見せるも、ダメ出しをくらってしまう「新しい風が必要」。なんとかOKをもらおうと奮闘するも結局は「書き直し」になってしまい、圭の元へ戻ってくる。そんな彼女をみて圭は莉花に話しかける「笹舟」
彼は絵を置いてそのまま帰ってしまい、梨花は追いかける。
次からは圭のアトリエを中心に描かれ左右対象に2人が座っている。圭が逃げ出さないように遠くから見守っているようだ。だが、心は次第に近くなったりしていく「遠近法」
長時間に及ぶ作業に根をあげたのは莉花のほうで、思わず眠ってしまう。それをみた圭は梨花への想いを声に出す「ささやかな花」
優しいメロディとその歌詞に何度も癒された1曲である。
出来上がったのは1枚の花の絵。これを持って莉花は会社へともどる
そして、翌日
再び同じ光景がうつる。また書き直しになってしまったようだ。違うところは、2人の距離がどんどん縮まっていること。圭は莉花をスケッチして、莉花は戸惑いつつ、丁度いい距離感を保っている。そして次第に急接近の雨の夜「LAST SCENE」
ここも7と変わってくる。7では莉花がトラブルがあって汚してしまった圭のスケッチを持ってきて謝罪をする。そして、帰ろうとすると雷が鳴りだし、ビックリして圭を掴んでしまう。それが2人の始まりのようになっている。ここで歌われる「拾われた猫のように」も僕の中ではお気に入りのナンバーである
7ではベトナムのシーンが多く、2人の出会いから別れまでは回想シーンのように描かれている。
17に戻ると、雨の中圭は飲みものを買いに外に出る。そんななか、停電が起こってしまい莉花は暗闇のなか一人ぽっち。そこへ圭が帰ってくる「NEVER CRY OVER SPILT MILK」
ここから2人は付き合うことになる。
圭は莉花の絵を描き、さらには指輪までプレゼント!
いい関係になってきたとき、彼女は現れた「鏡の中の他人」
真ん中に置かれた鏡から、1人の少女が現れる。それはどこか莉花に似ている女の子。彼女は莉花を操っていく「彼と私と、もう1人」
まず手をかけたのは、莉花が描かれた絵。
それが莉花をあやつり出来上がったのか「鏡の中の少女の絵」になっていたのだ。
何故そうなったのか、莉花は知らない「誰かが私を憎んでいる」
少女に乗っ取られた莉花はシンクロするように奇行に走る
圭のアトリエを走り回り、何もかもをめちゃくちゃにする。かと思ったら、急に倒れて意識を失う。さらには自分の服までビリビリに破いてしまうのだ「夢中遊行」
圭は彼女の行動に驚き止めようとする。そして、戸惑いつつも彼女を守ろうと必死になる「ばりほれとんぜ」
まるで、2人を別れさせる少女vs莉花を守る圭のようだ。しかし、圭の優しさがさらに少女を怒らせる「暗闇のジャスミン」
梨花はなぜ彼女に縛りつけられているのか、そして、少女はなぜ彼女を傷つけるのか
ついに少女は莉花に手をかけ、莉花は意識のない中ナイフに手をかけてしまう。それも圭により未遂でおわり、莉花はなぜそうなったのか知らぬ間に彼を振り回す自分に気がつく。
そして、これ以上彼を傷つけたくない莉花は彼に黙って彼の元から去っていく「1人で生まれてきたのだから」
彼から去り、仕事もやめ、アパートも引き払い
全ての縁を断ち切って、異国のベトナムへと旅立つ莉花
安ホテルに泊まった莉花は市場を散策するもスコールにあい、夜には周りの怪しさに怯える日々。雨に打たれたせいか高熱までだしてしまう。
そして何より、彼と別れてから、彼への思いが日に日に強くなっていく「この思いに偽りなく」
そして、彼の元へ戻ろうと帰国の決心をする「帰郷群」
高熱の中、駅の旅行カウンターへと向かうも、テトという旧正月の祭りがあり人で賑わっている。その人ごみのなかに、再び少女が現れる。まるで彼の元へ帰してなんかやらないというように。
そして、莉花は気づくと荷物をとられ、人混みをかき分けて出た先に現れたのは、、、1台の大型トラック。それと正面衝突してしまい幕は降りる。予想しない1幕のラストに衝撃を覚えた。そこまで狂気に走る少女の恐ろしさがある。
7では少女は登場せず、見えない何かによって彼女は奇行に走る
・壁に口紅で”FUCK YOU”と書き込む
・知らぬ間に大量の酒を呑み、お気に入りのドレスをびりびりに破く
・誕生日の日に圭のタバコの吸殻をコップに入れて飲み込む
・外を眺めているうちに窓の外に身を乗り出してしまう
などなど、ホントに殺しにかかってるレベルで。
ただ、少女がいないので、なにが彼女をそうしてるのか分からない怖さが7にはあるとかんじた
17に戻り、2幕
竹工場から物語は再開する。なんとか軽傷ですんだ莉花は助けてもらった竹工場の親子の元へ身を寄せていた「竹を渡る風の中で」
そこへ、工場の母娘ホア母さんとトァンがやってくる。トァンは優しく彼女を励まし、ホアは力強いが彼女を手厚く手当てする。そして、このままここにいてもいいと伝える「姉妹になるがいい」
とても聴きやすく、とても優しいナンバー。聴いてるだけでこちらも落ち着くナンバーである。
最初は謙遜していた莉花だが、「結局、彼とは上手くいかないなら、ずっとここにいよう」と覚悟を決め2人のところへやっかいになる「鶺鴒」
一方で、圭は彼女を縛りつける何かを追い、福井まできていた「緘口令」。そこではある問題があったようだ。
コーラスのみだが、ここから縛りつけるものの正体が明らかになるとわかる。厳冬のなかのこの歌は、歌なのか、吹雪の音なのかと考えさせる雰囲気がある。
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正体を探す圭だが、誰も彼に取り合ってくれない。緘口令をずっと守り続けているようだ「旅人よ我に帰れ」
そして、何とかたどり着いた1件の病院
そこに病弱の元・産婦人科婦長が寝たきりになっていた。そして、病弱の彼女から聞き出せたのは、
莉花が双子であったということ。そして、片方の子は死産しているという事だった「茉莉花」
「莉花」という名前はジャスミンを漢字で書いた時の「茉莉花」からとられていたのだ。そして、片方の子は。。。
話は莉花に戻り、ホアとトァンと共に竹細工を売りに出かける莉花「竹の歌」「紅い河」
市場を散策する莉花。その目の前に現れたのは、
安ホテルの女主人であった。彼女を見つけると
「ウェイダーサン」と呼び止め、ホテルへと連れていく。
彼女が泊まっていた部屋はそのままになっており、一通の手紙がわたされた
圭が彼女を探しにここまでたどり着いたのだ圭に会える嬉しさと共に、忘れる覚悟を決めた自分もいる。でも、離れることは出来ないと心が揺れ動く。そして、手紙の続きにはこう書いてあった
そこで蘇る全ての記憶。少女の頃、母と大叔母の会話がきこえてくる
この話を聞いた時、大叔母に怒りを感じてしまった。梨花にもだけど、子どもを亡くした母親に死んでしまった方も、生きてる方も責め立てるなんて、、、ほんとにこのお母さんが可哀想にかんじてしまった
そして、その「人殺しだっていうのにさ」が彼女の心を支配し、そして、全ての記憶に蓋をしてしまったのだ。だが、圭の手紙からそれらが解き放たれてしまった「7月のジャスミン」
そして、手紙の続きには
・福井の産院に行ったこと
・そこで30年前に双子が産まれる予定だったこと
・片方の子どもが長時間に及ぶ難産だったため、もう片方が死産してしまったこと
・その時の子供が上田莉花だということ
が書かれていた
全てを知った時、再び鏡の中から少女が現れる。そこで、この少女があの大叔母の会話のときから成長がとまった莉花の心の1部であり、人殺しの自分を憎み続ける存在なのだとかんじた「海のカルテ」
この瞬間、少女は完全に莉花を支配しようとする「自白」
莉花の手をとると、ベッドの横にあった果物ナイフを手に取り、莉花の首へと持っていく
間一髪のときに、ドアの向こうに圭が現れ、莉花を説得する。少女vs圭がはじまった
暴走する少女の怒り。恐ろしさもあるけれど、どこか悲しみも感じてしまう。
そして、最後の力で、、、
どこからか聞こえてくるこの声
すると現れた1人の女性。顔も髪型もすべて莉花とそっくりの女性がそこにいた
思い出してよ。私。ほらほら、私。
「目撃者の証言」
そして、彼女によって語られる真実
・誰も殺していないの
・片方の子の首にはへその緒が巻きついていたこと
・へその緒によって首が締められた事故であったということ
片方の子が死んだのは莉花が産まれるのに時間がかかりすぎたせいでなく、首にへその緒が巻きついて死んだんだから事故であった。
それなのに、「人殺し」と呼ばれ、
死んだ姉に恨まれていると思い込んだ少女は、自分で自分を苦しめてきたのだ
なぜ、この女はそれを知っているのか。。。
彼女こそ、生まれなかった方の姉の
「茉莉(まり)」であった。
そして、茉莉は少女へ問いかける
そして、凶暴化する幼き莉花を茉莉は強く抱きしめる「幸せになりなさい」
優しく少女に語りかける茉莉。この歌を聴いたとき、その優しさから涙腺をやられてしまった。まるで、この言葉を聞いて浄化していった少女のように。
少女はこの言葉を聞いて、静かに光の中へ消えていった。残ったのは同じ姿をした2人の”茉莉花”
あの時のように、2人は身を寄せて
身を寄せていた2人だが、お互い別の道を歩まなければならない。
茉莉は再び彼女を突き放し、莉花のもとから去っていく
それと同時に閉ざされた扉が開かれ、圭は莉花のもとへ駆け寄る。
梨花は茉莉のほうへ手を伸ばすも、もう届かないところに行ってしまった。そしてそばにいた圭を抱きしめる。
新しい愛を受け入れ、本当の幸せを莉花は手にすることができたのだ。
そして茉莉は光のほうへと消えていき幕はおりる。
そして、第3幕!
鏡の向こうには母親と茉莉の姿が
一人ぽっちの莉花を呼び鏡を超えて
3人はひとつになる
幕
ほんとに短いシーンだが、色々とメッセージが込められていて印象深いシーンでもある
以上だが
なんといっても歌詞だけでも素晴らしいのが
中島みゆきさんの世界である
44曲と、かなりの曲数だが
ひとつひとつがメッセージ性があり
どれも聞き惚れてしまう❤
vol.7との違いをまとめる
おなじ作品でもさらに進化を続けるのが夜会の見どころ
それを四半世紀かけてリニューアルして演じる中島みゆきさんの凄さが半端なく感じられる作品となりました
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