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桜の季節4

前回の桜の季節はこちら。

   場所戻って現在の庄之助宅中庭。桜庭庄之助が一雄に語りかけている。一雄は庄之助の話しに夢中で聞き入っている。

「そう約束すると桜の精は消えてしまったんじゃ、それから桜の精がわしの前に姿を表すことは無かった……。まぁ、この桜とは毎日会っていたがな。」

 そう言うと庄之助は桜の木を見上げた、真似をする様に一雄も桜の木を見上げる。

「いままでの人生色々な事があったが、頑張って生きてこれたのはこの桜の木のおかげだとワシは思っとる。ずっと見守ってくれているとワシは信じとるんじゃ、この場所でな。」

 「いつもおじいちゃんをここで見守ってくれているんだね。」

「そうじゃな。」

「桜の精か……、会ってみたいなぁ。」

「会えるといいのう。」

「うん!」

「じゃが、桜の精も今の一雄には会ってくれんかもしれんな。」

「どうして?」

「また、泣いておったじゃろ?桜の精とはワシは人前では絶対に泣かないと約束したんじゃ。一雄もワシと同じ約束したじゃろう?」

「うん。」

「その約束をちゃんと守れとるとは言えんからのう。」

「そんな!……、分かった、僕もっと頑張る!」

「うんうん、その意気じゃ!男たるもの簡単に人前で泣いちゃいかんぞ。」

「うん!」

  庄之助は優しく一雄の頭を撫でた。

「約束、守ってたら僕も桜の精に会えるかな?」

「さぁなぁ。それはワシにも分からんのう。」

  そう諭された一雄は黙って桜の木を見上げた。すると玄関から女性が中庭に入ってきた。

「やっぱりここだったのね、お父さんいつもごめんね。」

「お母さん!」

  入ってきた女性に走りより抱きつく一雄。彼女は谷山葉子、一雄の母であり庄之助の娘である。辺りはすっかり暗くなっていた、なかなか帰宅しない一雄を心配して探しに来たようだ。

「おお、葉子か。いいんじゃよ、ワシの話し相手になってもらっておる。」

「本当にごめんなさい。よかったら今日は家で一緒に夕飯食べない?」

「いや、大丈夫じゃ。」

  庄之助は最近この家を離れようとしなくなっていた。一緒に夕飯を食べられると期待した一雄は少し不服そうな表情をしていた。

「それなら無理強いはしないけど、最近あまり元気無いように見えるから心配なのよ。」

「心配いらんよ、元気にしとるから。」

「相変わらず頑固ね、分かったわこれ以上は言わないわ。何か不自由があったらすぐ連絡してね。」

「ああ。」

「おじいちゃん、またお話し聞かせてね。」

「ああ、いつでも来なさい。」

「うん、バイバイ!」

  葉子は頭を下げると一雄の手を引き自分たちのマンションへと帰っていった。一雄は何度も振り返り桜の見える庄之助の家を見ていた。

つづく


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