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奇跡の在り方19

前回の話はこちら。


  ソードの身体はもう言うことを聞かなくなっていた。意識も強く保っていなければ飛んでしまいそうだった。彼女が気持ちを伝えきるまで何とかもって欲しい。ソードは力を振り絞った。

  葉子が目を開くとそこは過去の正彦と合っていた場所だった。葉子は急いで約束したベンチへと向かった。

「正彦君!よかった、いた…。」

「ユウコさん!よかった!来てくれたんですね。もう会えないのかと思った…。」

「大袈裟ね。」

「だって!約束したのに、あの日来てくれなかったから…!」

「え?あの日…?」

「約束したのは1週間前だったじゃないですか!あの日ずっと待ってたんですよ!渡したい物があって。諦めず毎日来ててよかった…。」

「そんなに時間がズレてしまったのね…。本当にごめんなさい…。」

「いいんです!…今日こうして会えたから。」

「…1週間毎日来てくれてたのね。」

「きっと何か理由があるんだろうと思って。」

「正彦君。」

「信じてよかった。」

「ごめんなさい、私のせいで。」

「全然平気です!謝らないでください。」

「違うの…!学校で…いじめられてるのよね?」

「ど、どうしてユウコさんが…?!」

「私の、私のせいで……。」

「ユウコさんのせいじゃないですよ!きっと、僕が鈍臭いから…。」

「正彦君…。」

  葉子は涙が止まらなかった。

「ユウコさん?!どうしたの?泣かないで…。」

「ごめんなさい、本当にごめんなさい…。」

「だから、ユウコさんのせいじゃないですよ。」

「違うの、正彦君。よく聞いて、大事な話があるの。」

「は、はい。」

「信じられないかも知れないけど、私は…この時代の人間じゃないの。」

「え…?」

「未来から貴方に会いにきてたの。死神さんの力をかりて。」

「未来?死神…?どういう事、ユウコさん?」

「混乱するわよね。いい?私はユウコじゃないの。貴方の幼馴染の…桜庭葉子よ。」

「桜庭葉子…?葉子ちゃん…?」

「そう。貴方が学校の送り迎えをしてくれていた。」

「え…?だって知り合いだって…。」

「ごめんなさい騙して。混乱するわよね…。」

「なにが…なんだか…。」

「お願い、最後まで聞いて!私ね、貴方と別れてからずっと病院で暮らして来たの。10年間ずっと。」

「10年間も…。」

「でね、私疲れちゃって死んでしまおうと考えていたの。そうしたら私の前に死神が現れたの、迎えに来たと。」

「死神…?」

「自殺を考えていた時だからそれでお迎えが来たと思ったんだけど違ったの。私は病気で死んでしまうんだって。悩んだ挙句、自殺まで考えたのに…。」

「10年経っても、病気は治らなかったの…?」

「原因は分かったらしいんだけど、治療法はまだないの。」

「病気が原因で…?」

「原因は別みたいなの。身体が弱ってるとこに風邪引いて肺炎…だったかしら?」

「そんな…?!」

「これはもう決まった事みたいだから仕方ないの。でもね、死神さんが教えてくれたの。人は死んだら魂になって生まれ変わることができるんですって。その魂を迎えに来るのが死神の仕事なんだって。」

「魂……。」

「でもね、自殺すると死神は仕事が出来ないそうなの。」

「どうして…?」

「自殺した人間は魂になれないらしいの。死んだらそれまで。消えてしまうんですって。」

「消える…。」

「うん、生まれ変わることが出来ないの。」

「そうなんだ…。」

「だからね、私は最後まで頑張って生きようと思うの。」

「ユウコさん……。」

「そして、正彦君にも自殺なんて考えを捨てて欲しいの!」

「え…!どうしてそれを……?!」

「未来では貴方は…死んでしまってるの。」

「そっか……。実はあの日、ユウコさんに出会わなければ僕は死ぬ気でいたんだ。どうしていじめられるのか分からなくて…。苦しくて…。」

「ごめんなさい、そのいじめも私が原因なのよ…。」

「え?ユウコさんが…?」

「だから私は葉子よ。私が学校へ行かなくなったのもいじめのせいだったの。私が学校に来なくなったからいじめが正彦君に向いたそうなの。仲良しだったからって…。」

「ユウコさん…いや、葉子ちゃんもいじめに…。」

「辛いのは分かるけど、私はなにも出来ないけど貴方に死んでほしくない。生きて欲しい…!」

「葉子ちゃん……。僕は…迷っていたんだ。でもユウコさんに出会っている時は忘れられた。貴女が僕の支えだった。」

「そう、嬉しいわ…。」

「僕は貴女に会いたくて。ただそれだけで生きる価値があると思えた…。」

「私も貴方が好き…!小学生のあの時からずっと。この10年間も忘れた事は無かったわ…。」

「葉子ちゃん、僕もあの時から…。そして、今の葉子ちゃんも大好きです…!」

  2人は抱き合おうとするが葉子の体をすり抜けてしまった。

「ごめんなさい、触れることは出来ないみたいね…。」

  残念そうに見つめ合う2人…。

  その時、葉子の頭にソードの声が響いた。

つづく

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