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桜の季節6

前回の桜の季節はこちら。

  死神スレイブにより明日死んでしまうと告げられた庄之助、信じられない庄之助はスレイブに問いかけた。

「明日で間違いないのか!」

  もう一度手帳を確認し頷くスレイブ。

「間違いありません。」

「そんな馬鹿な……、こんなにも元気なのにか?」

「そう言われましても、私は貴方の魂を迎えに来ただけですから、お身体の事までは。」

「確かに最近妙に胸が痛むと……。いや!何かの間違いじゃ!スマンが帰ってくれ!」

  庄之助はここ数日心臓に違和感を感じていた、さらに倦怠感から家から出るのも億劫になっていたのだ。思い当たる節がある、そう思うと庄之助は余計に死神を信じたくなかった。当然である、自分の死などそう簡単に受け入れられるはずがない。

「大体、そんなスーツを来た死神なんて聞いた事がないわ!」

「そんな、さっき信じてくれたんじゃ……。」

  すると、先程葉子と家へと帰ったはずの一雄が走って戻って来た。

「おじいちゃん?」

  庄之助は一瞬驚いたが、一雄の顔を見て少し安堵した。

「どうしたんじゃ一雄?こんなに遅くに、葉子と帰ったんじゃなかったのか?」

  一雄は険しい表情の庄之助に一瞬戸惑ったが、直ぐにいつもの優しい庄之助に戻り安心した。

「あのね、おじいちゃんの日記を貸して欲しくて。お母さんに言って戻って来たんだ。」

「これか?」

庄之助は手に持っていた日記を一雄に見せた。

「うん!」

「別に構わんが、読めるかのう?」

「ううん、読めなくてもいいんだ。おじいちゃんの何かと一緒なら明日も頑張って学校に行けるかなって。」

「そうか……。」

  一雄と話していると庄之助の頭には死神の言葉がよぎった。明日には死んでしまう、一雄にはもう会えないかもしれない……。

「あ、やっぱり駄目だよね。大切なものだもんね。」

「いや、違うんじゃ。構わんよ、貸してやろう。」

「本当にいいの!」

「もちろんじゃ、ほれ。」

  そう言って庄之助は一雄に日記を手渡した。

「ありがとう、おじいちゃん!」

「ああ、大切にしてくれよ。」

  「うん。」

  一雄は受け取った日記を大切に背負っていたランドセルにしまった。すると一雄は不思議そうに当たりを見渡した。庄之助は不思議に思い問いかけた。

「どうかしたのか?」

「おじいちゃん、さっきまで誰かとお話ししてなかった?」

「ああ、実は今この人と少し話をな。」

「この人?誰のこと?」

「!?」

  さっきから一言も話さず庄之助の隣にいる黒ずくめの男、死神スレイブと名乗った男は一雄には見えていないのである。

「おじいちゃん?」

「一雄、ここには今ワシと一雄しかおらんのかのう?ワシの横に誰かおらんか?」

「え?誰かいるの?もしかして!桜の精さんがいるの?」

「本当に見えないのか?」

「うん、残念だけど。」

「そんな……、本当に……。」

「言ったでしょう、本当だって。」

  そう言ったスレイブの声も一雄には聞こえていなかった。スレイブを見る庄之助の視線の先に桜の精がいると思った一雄は死神スレイブに挨拶をした。

「桜の精さん、こんばんは。これからもおじいちゃんと仲良くしてくださいね。」

「一雄……。」

「あれ?もう、いなかったかな?」

「……。」

  庄之助は死神が本物である現実に突然寒気が走った。そして、色んな事が頭をよぎり目頭が熱くなるのを感じていた。

つづく

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