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桜の季節7

前回の桜の季節はこちらから。


  死神が本物である現実を突きつけられた庄之助であった。

「おじいちゃん……?」

「……ああ、すまんのう。ほれ、そろそろ帰らんと、すっかり暗くなってしまった。」

「……うん。それじゃ、また明日。」

「ああ……。」

  一雄はゆっくりと裏庭から外へと向かった。庄之助は複雑な心境だった、また明日……。今別れると明日にはもう会えないのだ、大好きな孫に……。

「……一雄。」

「!?」

  庄之助は外へと向かう一雄を呼び止め抱き寄せた。

「おじいちゃん?」

「……。」

「おじいちゃん、どうしたの?苦しいよ。」

「ああ、すまん。」

  急に抱き寄せられた一雄を何が何だか分からない様子だ。いつもと様子の違う庄之助に不安になった。

「おじいちゃん、何かあったの?」

「いや、何もないんじゃ。すまんのう急に、さぁお母さんが待っとるんじゃろ」

「うん。」

  一雄は素直に庄之助の言葉を聞き外へと向かったが、再び踵を返し。

「おじいちゃん、桜の精さん。さようなら!」

「ああ、さようなら。」

「あ、さようなら。」

  見えも聞こえもしていないがスレイブも挨拶を返した。一雄は中庭から門を抜け母の待つ方へと走って行った。

「勘違いしちゃったみたいですね。」

「ああ……。」

  庄之助に先程までの元気がない。

「よかったんですか?一雄君ともっとお話ししなくて。」

「ああ、いつも沢山話していたからな。今日も沢山話した。十分じゃよ。」

「すいません、お伝えに来るのが遅くなってしまい。やはり、お伝えしない方がよかったでしょうか?」

「いや、聞いておいてよかったよ……。少し1人にしてくれ……。」

  そう言って庄之助は重たい足取りで部屋へと戻って行った。

「やはり伝えるべきではなかったのかな……。」

  スレイブはそう呟き空を見上げた。空には無数の星が輝いていた。

  死神スレイブの仕事は命の尽きた生き物の魂を天界と呼ばれる場所へと導く事である。本来ならば対象の命が尽きてから魂を迎えにくれば良いのだが、このスレイブと言う死神は少々変わっていた。昔から対象が亡くなる前に宣告し、死ぬ前に悔いが残らぬ様に好きな事をして欲しいと思って行動しているのだ。死神の中では異端な存在だった。

  スレイブは顔を下ろし溜息をついた。その瞬間スレイブを春の暖かい風が包み込んだ。すると先程までいなかったはずの桜の木の横に白い着物を着た人らしき者が立っていた。

つづく





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