購買意欲がある顧客を知るには?

ヒューリスティックスとPareto/NBD モデル

ヒトが情報の一部を無視するのは合理的

今まではヒューリスティックスは非合理的な判断方法とされてきました。

ヒューリスティックスの例としては購買意欲がある顧客を知る為に、直近数ヶ月以内の購買歴を調べ、購買歴があれば「購買意欲有り」、購買歴がなければ「購買意欲無し」と分類するなどがあります。

逆に、合理的な判断方法とされるのはPareto/NBD モデルのように将来の購買確率をさまざまな変数を用いて分析するものがあります。

今までは、ヒューリスティックスなどの変数を多く分析しない方法よりPareto/NBD モデルのような多くの変数を分析する方法の方が将来の購買行動などを的確に予測できるとされていました。

しかし、近年ではヒューリスティックスが有効かどうかは状況に依存し、いつでもPareto/NBD モデルのような合理的とされるモデルより劣るわけではないことがわかってきました。

事実、ヒューリスティックス*とPareto/NBD モデルのどちらが顧客意欲のある顧客をより正確に分類できるか検証した研究では、結果は次のようになりました。

アパレル販売分野:ヒューリスティックス(83%)Pareto/NBD モデル(75%)
航空会社分野:ヒューリスティックス(77%)Pareto/NBD モデル(74%)

つまり、(少なくともこの2つの業界においては)Pareto/NBD モデルを使うよりヒューリスティックスを使う方が正確に顧客を分類できるようです。
*この研究で用いられたヒューリスティックスは中断ヒューリスティックスです。中断ヒューリスティックスとは他の情報全てを無視することです。例:1度の購買金額や購買頻度などを無視して直近の購買の有無だけに注目するなど

参考文献;

Gigerenzer, Gerd & Gaissmaier, Wolfgang. (2011). Heuristic Decision Making. Annual review of psychology. 62. 451-82. 10.1146/annurev-psych-120709-145346.

Wübben, Markus & Wangenheim, Florian. (2008). Instant Customer Base Analysis: Managerial Heuristics Often “Get It Right”. Journal of Marketing. 72. 82-93. 10.1509/jmkg.72.3.82.