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Dr.ナイフ「白井聡は無名」説を検証する

ニュースサイトでも取り上げられた京都精華大学教員、白井聡さんの「ユーミンは醜態をさらすより、早く死んだほうがいい」発言。私もnoteで話題にしました。面白いことにやはりnoteで扱ったツイッターインフルエンサー、Dr.ナイフさんにも飛び火しています。ナイフさんは白井擁護派ではあるけど「白井聡とかいう無名の人(僕は知らなかった)」と言っています。

さて「白井聡」は果たして無名でしょうか。そこで左派界隈ではどのようなステータスか検証してみました。私は左翼、市民集会によく出かけます。会場では大方、他の集会、シンポジウムの案内チラシが配布されます。また市民団体のMLにも案内してもらえますが、そうした情報をまとめて白井さんの言論界的な立ち位置を計測してみましょう。

最古の記録は2012年、田原牧とパネリスト

あくまで私が所有する資料、データでということを先にお伝えしておきます。それ以前の情報があれば教えてください。公の場における白井氏の言論活動は2012年、研究所テオリアの発足記念シンポジウム。この時は東京新聞特別報道部記者でトランスジェンダーをカミングアウトしている田原牧さんとパネリストで登壇。

白井聡(しらい・さとし)さん 現代政治思想。文化学園大学教員。著書に
『未完のレーニン』(講談社)

プロフィールはこうなっています。この時、白井さんは35歳ですが、おそらくレーニン研究などで他でもすでに講演活動はしていると思いますが私が確認できた最古の活動はこれでした。

そして2013年3月『永続敗戦論 ―戦後日本の核心―』太田出版〈プラス叢書〉。同書によって朝日新聞のインタビューを受けたり、この著書をテーマにした講演会が増えました。

第4回いける本大賞、第35回石橋湛山賞、第12回角川財団学芸賞を受賞。

様々な賞を受賞しています。これより専門のレーニン研究から政治学、政治思想に移行していきます。同年12月に「純化する敗戦レジーム」で講演。タイトルからして永続敗戦論の内容が中心でしょう。さて白井さんの活動にとって追い風になったのは安倍政権でした。安倍政権批判で名を挙げていきます。

それが2015年の『「戦後」の墓碑銘』(金曜日)でした。本書によって白井さんの安倍批判が加速していきます。というよりも周囲が安倍批判の気鋭の学者として奉るようになりました。当然この手の講演会活動が増えます。

2013年9月、永続敗戦論でインタビューを受けていますがコメント欄が結構手厳しいです。

Sora Aoi
5 年前
天皇の本当の価値が分かるのは、多分、50歳を超えてからではないかと、思います。30代では、日本人としての価値観の形成過程において、まだまだ発展段階でしょうね。日本人のDNAが、突然意識される、といったら良いのか。天皇は、独立してある訳ではないんですよ。日本に勝った米国でさえ、天皇を残しています。悲しいかな、米国人の方が、この若者よりは、日本をちゃんと理解していますよね。

Super Chiku
5 年前
全ての根源は軍事的な独立がなされてないから。
軍事的独立を実現するため国際関係を構築しどういうシナリオを描くか、ここがキモでしょ。政治家や官僚が対米従属せざるを得ないのは結局はリアルパワーを持ってないからであって、その議論を抜きに話を進められても空理空論ですぜ。あの貧乏な小国である北朝鮮を見れば一目瞭然でしょ。

wadia2000
5 年前この人 口喧嘩は達者そうだけど延々と語ってる(批判する)くせに
結局、代案ZERO

nabeyan1997
6 年前
到達すべき理想の国家観を語れて無いから白井の言ってる事も愚痴でしかないんだよな~まあ、愚直に思想を全面に出して社民みたいにギャグ扱いになるのが怖いんだろうけどさハッキリ天皇の戦争責任論を言及できずにオブラートに包んじゃってるようじゃ「強くて豊かで元気な国」って言うシンプル極まりないゼロ年代以降の自民的価値観に敵いっこないよ

tanaka ken
5 年前
歴史の講釈するときは威勢がいいなあ・・・・・・・・・・・・・・・・白井さんは「炭鉱のカナリア」かもしれないけど、その「傀儡」政権をえらんだのは日本国民。TPPでどうなるんかねえ・・・・・・・なんか・・・インドがうらやましいなあ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

代表作のインタビューですが、どちらかと言えばリベラル系統の人からも辛口コメントが寄せられていました。とは言えメディア露出、講演会、単著・共著は増えていきます。

内田樹・白井聡『日本戦後史論』(徳間書店、2015年)

デイキャッチャーズボイス(ラジオ番組)
▼敗戦か終戦か?宮台真司と白井聡が迫る 『戦後』の正体 2015年

このぐらいになるともう専門のレーニンはどこかに消えてしまいました。そりゃそうでしょう。レーニンの話より「アベは反知性主義」とやっている方が楽だから。週刊SPA的に言えばエッジな人的なポジションを得ていきます。何がエッジがよく分かりませんが「なんとなく反権力」をしておけば、エッジなんでしょう。そしてアベ政治を許さない文化人としてカウントされていきました。それが如実に表れたのが2016年2月18日「翁長沖縄と共に闘おう!」東京大集会。

講  師  
小沢 一郎 氏(衆議院議員、生活の党代表)       
白井  聡 氏(政治学者、京都精華大学専任講師)
山崎行太郎 氏(文芸評論家)
前泊 博盛 氏(沖縄国際大学大学院教授、元琉球新報編集長)
南丘喜八郎 氏(月刊日本主幹)
※ 翁長 雄志 氏(沖縄県知事)(メッセージ参加)

なんと小沢一郎と名を連ねるようになりました。さらに、さらにあの問題が政界を揺るがせます。そう「森友学園問題」。

「森友学園問題の真相に迫る」
2017年5月13日(土)、文化芸術センター中ホール(アクア文化ホール)
<第一部>17:00から
市議、国会議員、市民告発団弁護士からの報告など
<第二部>19:00から
講演「森友学園問題から戦後日本を問い直す」
講師:白井聡さん(『永続敗戦論』著者、京都精華大学教員)
【主催】森友学園問題を考える会

「森友学園問題から戦後日本を問い直す」という演題にある通り、森友学園に得意の戦後問題をぶち込んでくる荒業。他に適任の論者はいたと思いますが、逆に言えば白井さんのステータスが向上したのでしょう。

長くなるので細かな活動は端折りますが、一応「対米従属を批判する気鋭の若手学者」というポジションを得ています。繰り返しますが、安倍政権という大きな存在があったからこそ白井さんは成長できたと思われます。ただそのことが研究成果とは思えませんが・・・。

そして直近では検察庁法改正案反対のハッシュタグも左派でブームになりましたね。今年5月14日、ZOOM集会「検察庁法改正案に抗議する!リレートーク集会」に白井さんが登場。

1.はじめの挨拶 「なぜ問題か何が問題か」 弁護士大江京子    2.「改正法案の問題点」 弁護士海渡雄一             3.「弁護士有志・弁護士会の反対声明などについて」弁護士島田広                                 4.浜矩子先生(経済学者 同志社大学大学院教授)         5.白井聡先生(政治学者 京都精華大学専任講師)         6.「ネット署名の報告・公務員労働者から見た検察庁法改正案ほか」藤本泰成さん(安倍9条改憲NO!全国市民アクション・平和フォーラム共同代表)                               7.前川喜平さん 「元官僚から見た検察庁法改正案の問題点」前川喜平さん (元文部科学事務次官)                    8.最後に まとめの発言と行動提起 海渡雄一弁護士 

どうです? もうオールスターですよ。専任講師だからまだ学者としてはキャリアアップの途上にありますが、左翼スターとしては十分ではないでしょうか。

界隈では有名人、一般的には・・

以上の通り、白井聡という名前は左翼界隈、運動家業界ではかなり高い部類だと思われます。ナイフさんも論座に寄稿するような立場ならば知っておくべき論者です。「白井聡とかいう無名の人」と言ったものの、「左」の間では圧倒的に白井聡>Dr.ナイフ。メディアがツイッターを誇大視する風潮だからDr.ナイフというハンドルネームが広まったことも事実ですが、どう考えてもリアルな言論の場では白井聡のステータスは(あの世代では)かなり上位にあると思われます。もっともごく普通の生活を送る人にすれば白井聡も「?」という反応でしょう。

ちなみに評論家の栗原裕一郎さんはかなり厳しい評価を下していました。アジテーターとしての白井さんは存在感はあっても「学者」「教員」としては疑問符がつきますね。

さてまとめです。2012年以来、白井氏さんの足跡を見てきましたが「無名ではないこと」「専門分野でのし上がった論者ではないこと」「安倍政権が追い風になったこと」「アベ批判の中で存在感を高めてきたこと」以上の特徴が挙げられます。つまり研究成果に対する評価ではなくて「アベを許すな」という攻撃性に対するニーズではないかと思われます。

「ユーミンは醜態をさらすより、早く死んだほうがいい」

この投稿の本音とはユーミンに対する怒りというよりも、安倍晋三という格好のターゲットを喪失したことに対する「不安」と「動揺」。この裏返しだったのではないでしょうか。

それにしてもこれからの左派は大変ですよ。政党、支持労組、支持団体、こうした利害関係があっても「アベ政治を許さない」この一点でまとまれました。旧ユーゴスラビア連邦はチトー大統領を失い瓦解しましたが、そんなユーゴが如く左派界隈の地殻変動が起きる気がしてなりません。

白井さんはレーニンに帰るか・・新たな政権攻撃のアジテーターになるのか。いずれにしてももう至福のアベ時代は終わりました。

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