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ギャラいる、いらない? 取材謝礼論争どっちが正しいショー

新聞社の取材の是非をめぐって炎上中

人気ドラマ『孤独のグルメ』の原作者、久住昌之さんの投稿で新聞社の取材謝礼問題が紛糾しています。久住さんの投稿に私も賛同コメントをしましたし、大半が支持レス、共鳴リツイートでした。
一方、新聞業界と思しきユーザーからも反論がなされており、泥沼の様相です。どうも業界側の反論が芯を食っていなくて議論が噛み合ってないと思いました。

「取材謝礼を払っていたら成り立たない」。この反論はよく分かります。例えば政治取材で疑惑の渦中にある議員が「インタビューに応じたよ、はいギャラ」という訳にはいきません。物笑いの種、逆にネタにされます。

それは芸能人も同様でしょう。例えば密会現場で本人を直撃。無論、メディアからの報酬はありません。ただこの場合、通称「特写」という裏ルールがあります。オフの芸能人が無防備な格好を写真誌に掲載されたらイメージを損ないます。そこでメディアと事務所が協議して、メイク・衣装を整えた上で再度、撮影するという手法ですね。芸能事務所とは関係を保ちたい出版社サイドの救済措置と言えます。

あるいは事件取材。現場周辺の目撃者や住民にいちいち謝礼を払う訳にはいきません。重要な証言者の場合、詳しく聞きたいからお茶でもということで、喫茶店でお茶代ぐらいはありえるでしょう。

パブ記事ではない場合

広告費用をかけずにPRする「パブリシティ」記事、通称「パブ記事」。これは素材を提供する代わりに新聞やテレビで紹介してもらいます。商品やサービスを提供する代わりに無料でPRしてもらえるし、メディア側は記事ネタになります。
あるいは「●●県出身のアーティストが県PRソングを作曲」で本人が紙面に登場。アーティスト側は自分の宣伝にもなるし、新聞社としてはご当地有名人がギャラ無しで紙面に出てくれるのはありがたい。もちろんそれは読者も嬉しい。これなら無償でも三方よし!

ただ久住さんのように娯楽性が強い取材で「無報酬」というのはかなり無理がないかと。これ、出版社のインタビューならばまず無報酬はありえません。私の経験では面談3万円、電話1万円が相場。出版社がスタジオを持っている時は場所代は必要ありませんが、「談話室」「会議室」のような場所を借りる時はその分の費用もいります。無料の場合もありましたが、それは「新刊のエッセイ本を紹介」とか「他のタレントをバーターで出す」といった条件付きです。

テレビは制作費が潤沢なようですが、1時間ぐらいしゃべって使用したのは本番数分で謝礼無し、あるいは「番組特製テレカ」とか驚きます。

どうもマスコミからは「協力して当たり前」という思想が透けて見えます。

当事者と思しきこのユーザーは「無報酬が原則」と言いますが、より娯楽性が強い企画、特集まで無償で協力しなければならないのでしょうか。「吉永小百合に護憲を語らせる」ならば無償でもむしろ本人が前のめりでしょう。ただし例えば「深夜の飯テロってなに?」といった娯楽性が強い企画をうって久住さんのようなグルメ通の芸能人に「無償」でインタビューというのは酷いです。

日ハム「新庄監督」新春インタビューの“高額ギャラ”にスポーツ紙記者が漏らした本音

こんな記事もありました。私の邪推ですが当時、新庄監督に取材が殺到したから抑制策でギャラ要求したのではないか、と。まあ邪推ってことで。

いずれにしても無報酬に対する反発は「新聞社様ありがたや」の時代であれば起きなかった問題かもしれません。報酬話が紛糾するのは、マスコミ不信の裏返しであることに気付かないと。

しかも自分で情報発信できる時代に新聞に掲載されたことにどれだけのプレミア感があるかもナゾ…。

約2万円を惜しんだ朝日新聞と、払ったNHK

こういう事例もあるのでご紹介しましょう。私は熱海市土石流取材に関わってきました。この事件も多数のメディアが殺到しています。

とある重要な取材協力者がいました。豊臣さんと仮名にしておきます。熱海の盛り土に関係した人物や企業を示す資料が山梨県の某所にあるということで豊臣さんが自分はそれが入手できる、と。交通費約2万円をくれたら資料をコピーしてくるとマスコミ数社に提案しました。それがNHKと朝日新聞。

豊臣さんによれば朝日新聞は「出せない」という回答でしたが、NHKは支払ったそうです。NHKの方が取材費は潤沢かもしれません。そこは受信料パワーというやつでしょう。

元テレビディレクターのYouTuber、さっきーさんによるとNHKの取材は民放と異なり「お金(制作費)を使わなければいけなかった」と明かしています。こういう局側の事情も2万円の理由かもしれません。

ただ思うところがあります。私が同じ立場なら2万円ぐらい自腹を切りました。だってそれで独自ネタが取れたら名誉ですよね。もしこの記者たちが教育費も家のローンも(泣)という世代なら同情しますが若手記者でした。そんなの勉強代ってもの。取材の修行になりますよ。

この問題は取材経費が出せないという以上に「そこまでの情報は要らない」「報道発表で事足りる」という内部事情があるかもしれません。

実は私も豊臣さんからの提案を受けてこの資料を山梨で入手しました。もちろん記事に反映しています。ただ一般紙に資料内容が掲載される可能性は「低」です。この辺り、マスコミの横並び報道の原因かもしれません。

資金力で言えば私などNHKや朝日新聞の足元にも及ばないのが悲しい現実。そこは工夫というものです。何も資料を見るだけに山梨には行きませんよ。朝日新聞甲府支局の熊出没誤報記事について取材して

天下の 朝日新聞『落日新聞』へ 転化の道⑥「ツキノワグマ遭遇」誤報記事は なぜ起きた?

このようにレポートしました。「受領は倒るる所に土を掴め」とはよく言ったもの。朝日新聞の誤報というのが実に皮肉でした。


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