4/6 ニュースなスペイン語 Encuesta de las elecciones（２）：選挙世論調査（２）【4/6 修正版】
真打登場！
選挙世論調査の老舗、社会動向調査センター（Centro de Investigaciones Sociológicas：CIS）の選挙予想が５日、公表された。
昨日の記事のエレクトマニア（Electomania：ELE）の数値と比較してみると以下のようになる：
国民党（Partido Popular）：58議席（ELE）vs 59議席（CIS）／スペイン社会労働党（PSOE）：37議席（ELE）vs 38議席（CIS）／ボックス党（Vox）：14議席（ELE）vs 9議席（CIS）／マス・マドリード党（Más Madrid）：16議席（ELE）vs 20議席（CIS）／ポデモス党（Podemos）：11議席（ELE）vs 10議席（CIS）／市民党（Ciudadanos）：０（ELE）vs ０（CIS）
市民党の泡沫ぶりはELEもCISも変わらないが、この他の政党では大きく解釈が分かれる。国民党、PSOE、ポデモス党は±１票で僅差だが、ボックス党とマス・マドリード党では±４～５議席でその差は大きい。
２社の世論調査から分かることは、まず、国民党の躍進は止められず、現職のマドリード州知事、イサベル・ディアス・アジューソ（Isabel Díaz Ayuso）の再選の可能性が高いということ。
もうひとつは、どの政党も１党だけでは、マドリード州議会（136議席）の過半数（mayoría absoluta）である69議席を保持できないということだ。ここでカギとなるのが連立（bloque）だ。そして、連立の可能性に関しては、ふたつの調査で大きく結果が変わる。
この場合の連立とは、イデオロギーが似通った党が共闘することで、「右派連立（bloque de la derecha）」と「左派連立（bloque de la izquierda）」が考えられる。そして、右派連立は国民党とボックス党、左派連立は残り三党（PSOE、ポデモス党、マス・マドリード党）がそれぞれ担うことになる。しかし、党の思想が似通っているとは言え、例えば、国民党が中道右派であるのに対して、ボックス党は極右なので、かなり大雑把なくくりではあるが…。
さて、各連立の獲得予想議席は以下のとおり：
右派連立：72議席（ELE）vs 68議席（CIS）／左派連立64議席（ELE）ve 68議席（CIS）
CIS予測では右派左派の両連立が同数議席となるのに対して、ELE予測では右派連立が圧勝となる。実際のところ、どうなのか？
議席を得票率によって配分する方法の元祖がベルギーの数学者ヴィクトル・ドント（Victor D'Hondt）だ。この人の発案したのがドント方式（Método de D'Hondt）と呼ばれるもので、スペイン、そして日本も、この方式を採用している。
このドント方式によると、右派左派の両連立の獲得予想議席は、
右派連立：66議席／左派連立：70議席
となり、左派連立に軍配が上がる。つまり、ELEとCIS、そしてドント方式が三者三様の結果となった。
これからの焦点はどこにあるのか。
まず、右派連立について、アジューソ自身は「そのうち、分かるでしょう（Ya se verá）」と述べ、ボックス党との連立の可能性の明言を避けている。つまり、そもそも、右派連立の成立自体が不確かだ。
もうひとつ重要なのが、意外にも、市民党だ。政治信念としては中道右派なので、国民党と親和性がある。しかし、過去の記事で既報のとおり、国民党はすでに市民党と破局状態。
かと言って、国民党があまりつれない態度を取り続けると、市民党は、ぷぃ！と左派側に振り子を振りかねない。CISの調査が実施されたのが、例のムルシア州の不信任決議案（moción de censura）でゴタゴタしていた時期なので、そのきっかけを作った市民党のイメージは当然悪い。
だから、今後、市民党が巻き返せれば、少数ながら、議席を獲得できるかもしれない。わずか３議席でも獲得できれば、そして、それを国民党にプレゼントしてやれば（右派連立が成立すると仮定して）、とりあえずは69議席に達することはできる。
選挙運動は18日に解禁されるが、解禁前から各党のポジショニング争いが面白い。
写真は20 minutos（4.5.）より。CISの数値を半円グラフにしたもの。外円が来月４日の予測。内円が現在のマドリード州議会の構成の元となった2019年３月26日の選挙結果。オレンジ色が市民党。26議席を獲得していた当時と比べると、その凋落ぶりは明らかだ。
【4月6日修正版】記事中、ドント方式の右派連立と左派連立の獲得予想議席について、「右派連立：70議席／左派連立：66議席」と記しましたが、正しくは、逆で「右派連立：66議席／左派連立：70議席」でした。お詫びします。これに伴い、その後のコメントを若干、加筆修正しました。