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7/23 ニュースなスペイン語 Síndrome de Diógenes:ディオゲネス症候群

ディオゲネス(写真)というと、古代ギリシアの哲学者で樽(タル)に住んでた人、くらいのことしか知らなかったが、この人物の名前を冠した症候群があるという。

ディオゲネスは知識や教養を捨て去り、いわば、世捨て人のように大樽(「甕(カメ)」とする説もあり)に暮らし、外見には無頓着だったという。

このディオゲネスの有り様から、高齢になることで、自分の身なりに関心を払わなくなったり、自ら進んで社会的な繋がりを断ち、孤立するような症状をディオゲネス症候群と呼ぶらしい。

別名「老年期隠遁症候群」。

そして、身なりに気を使わないというところから、不潔→ゴミを捨てない→ゴミをため込む、と発想が二転三転して、おかしな方向にベクトルが向き、「ゴミ屋敷症候群」という名称まで持つようになった(ディオゲネス自身は、いわば、元祖ミニマリストだからゴミをため込むことは、多分、なかった)。

さて、今回参照した記事のタイトルには「Síndrome de diógenes digital(デジタルディオゲネス症候群)」というドキっとする用語が踊る。

小生は実生活では普通にゴミは捨てるものの、果たして、パソコンやサーバー上のデジタルゴミ(basura digital)をこまめに整理してるかというと、むむむ、全く自信がない。

ある専門家は次のように話す。

私は受信トレイに大体3万通のメールが入ってますよ。皆さんいつか使うかもしれないと思って取っておくんでしょうけど、まぁ、そんな日はまず来ないんです(Yo tengo unos 30.000 correos electrónicos en mi bandeja de entrada. Los vas guardando por si algún día los vas a utilizar, aunque nunca llegas a hacerlo)。

メールを送ったり(enviar un correo electrónico)、ファイルに保存したり(almacenar archivos)、インスタに写真をアップしたり(publicar una foto en Instagram)、音楽をストリーミングで聞いたり(escuchar una canción en streaming)することで、情報通信技術(TIC;Tecnología de Información y Comunicación)を使用する。

そして、このことで温室効果ガス(gases de efecto invernadero)が放出される――。

当たり前だが、データの送受信はもちろん、保存などの、デジタル世界での営みには全て電力が伴う。

この電力がクセモノで、例えば、1メガバイトのメールは4〜5グラムの二酸化炭素を放出するという。

温室効果ガスの総量の2〜4%が情報通信技術によるというから、まぁ、割引は大きくないが、空恐ろしい。

そして、二酸化炭素の放出もさることながら、情報通信技術を使うことで、データサーバや端末は熱を帯び、これを恒常的に冷やす必要がある(requieren una refrigeración constante )という。

ビッグデータセンターは、冷却効果を高めるために、エアコンの代わりに(en lugar de aire acondiconado)、冷却塔(torres de refrigeración)なる装置を使うそうで、これに大量の水が使用されるという。

この水の大部分が飲料水の水源から取られている(gran parte proviene de fuentes potables)ので、昨今の水不足下では懸念材料(puede ser preocupante) となる。

北欧スウェーデンの首都ストックホルムでは、ビッグデータセンターが放出する熱を、ビニールハウスを温めるのに使い、野菜(hortalizas)や虫(gusanos)を育てる試みがあるみたい。

また、ビッグデータセンターが発する熱をオフィスや養殖場(piscifactorías)の水を温めるのにも活用しているという。

紙の使用が少なくなり、フロンガスも規制されたと思ったら、今度は、ビッグデータに起因する温室効果ガス、そして、熱とこれを冷やす水が必要になってくる。

なかなかしわ寄せがなくならない。

写真はジャン・レオン・ジェローム(Jean-Léon Gérôme)作『ディオゲネス(1860)』 

この風変りな哲学者はいろいろな画家たちが題材に選んでいるが、特徴的なのが、やはり住処としていた樽ないし甕。

それと、タイトル写真のように犬が描かれることもある。

これはディオゲネスが犬儒学派(キュニコス派)を体現したため。

キュニコスは、シニカル(冷笑的)の語源。

当のディオゲネスが、もし、現代の我々のデータため込みを見たら、きっと、冷笑を向けるだろう。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20230722/coste-medioambiental-acumular-viejos-emails-otros-archivos-tenemos-sindrome-diogenes-digital/2448078.shtml