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6/12 ニュースなスペイン語 Violencia mchista:男性優位的暴力

カナリアス諸島州のテネリフェ(Tenerife)で4月30日、失踪事件があった。幼い姉妹オリビア(Olivia)とアンナ(Anna)、そしてふたりの父親であるトマス・ヘメノ(Tomás Gemeno)である。ヘメノは妻のベアトリスとは別居状態。姉妹のビデオなどを公開し、警察も必死の捜索をしていた。しかし、10日、変わり果てたオリビアが海底約1000m付近で、カナリア諸島州の海上警察隊によって発見された。恐らく自らの父親によって手をかけられたのだろう。享年6歳。心よりご冥福をお祈りしたい。

11日、女性たちが各地で大規模集会(manifestaciones)を開いた。彼女たちを駆り立てたのは、オリビアの死だけではあるまい。今年に入ってから、すでに、19名の女性たちによって殺害された。これを、「男性優位的暴力(Violencia mchista)」と呼ぶ。

主催者のひとりはこのように言う:

加害者たちは狂っているわけでもなく、病気なわけでもない。彼らは男性優位主義者だ。心を病んでいる人ではなく、自らが何をしているかをしっかり理解している。彼らの目的はひとつ。彼らの意の向くまま、我々女性の命を終わらせること(no están locos, no son enfermos, son machistas. No son personas enfermas, saben lo que hacen y su único objetivo es acabar con nosotras de la manera que sea)

恐ろしいことばだ。

マドリード州マドリード市では「女性たちへの暴力はもうたくさんだ(Basta de violencia contra las mujeres)」、カタルーニャ州バルセロナ市では「男性優位的暴力も抑圧も、もうたくさん(Basta de violencia machista y represión)」とのプラカードが並んだ。

もうひとつ、やりきれないことばを見た。

「代理暴力(violencia vicaria)」ー。夫が妻を苦しめるために、自分たちの(もしくは妻の)子供に暴力をふるうこと(el padre agrede a sus hijos para hacer daño a la madre)。冒頭のオリビアはこの犠牲者だ。代理暴力と男性優位的暴力の根は一緒で、事実、今年に入ってから、3名の未成年者が父親もしくは元父親、もしくは内縁の父に殺害されている。

ペドロ・サンチェス首相(Pedro Sánchez)は、外遊先のコスタリカでの記者会で、男性優位的暴力について問われ、以下のように答えた:

代理暴力は二重の意味で、野蛮で非人間的な男性優位的暴力だ。女性たちを傷つけるだけでなく、彼女たちのこどもたちにまで傷を与える。私たちはこの社会の闇を終わらせるべく、働きかけを続けなければならない(La violencia vicaria es violencia machista doblemente salvaje e inhumana, ya que no solo busca causar dolor a la mujer sino también a sus hijos y sus hijas. Vamos a seguir trabajando para acabar con esta lacra)

また、社会の闇を終わらすべく、政党エゴの戦い(la lucha partidista)をわきに置いて、共闘すべきであるとの考えを示した。

写真は仲睦まじい姿の姉妹、オリビア(左)とアンナ(右)。アンナはあくまでも「行方不明」だ。姉の元に行ったとの証拠は、まだ、ない。絶対にあってはならない、と強く願う。