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ブラックリスト

「わたしさ、警察のブラックリストに載ってるんだよね」
仲の良かったあの子が、突然そんなことを言い出した。

成績は決してよくはなかったけれど、
クラスで悪目立ちするタイプではなく、
友達もそこそこいて、
見た目、フツーの子。

当時、クラスで勢いのあったグループにいたわけでもなく、
学校では、ほとんど目立たない子。
それが、その子の学校での立ち位置だった。

でも。

本当は、その子が、先生の知らない放課後、
どんなことをしているか、わたしは知っていた。
彼氏の名前を、腕に彫っていたのも、知っていたしね。
だから、実を言うと、とても驚くというほどではなかったのだけれど、
それでも、
(おっと。そうでしたか。)
って、一瞬思ったのは、覚えている。

でもわたしは、その子と、なぜか仲がよかった。
境遇が全然違うわたし達だったけれど、
わたし達は、よく会って、よく話した。

わたしは、その子を頼りにし、
その子も、わたしとの友人関係を楽しんでいたように感じていた。

勉強を教えてあげたら、40点だったテストが60点になって、
すごく喜んでいたのを覚えている。
わたしも一緒に、すごく喜んだっけ。

わたしが外の世界に夢中になっていた時も、
その子は、わたしの両親にまで連絡をとって、
わたしの所在を確認したりと、切らない努力をしてくれた。

そのおかげで、付かず離れずの関係は続き、
今も、その子がどうしているか、わたしは知っている。

結局その子は、何の犯罪も犯さずに、大きくなった。
そして、
子どもだったあの頃よりも、とても幸せそうな顔をして生きている。

べったりした友人関係では決してないし、
全然マメに連絡を取り合う関係でもないんだけれど、
生きているだけで、なんだかとても嬉しい。

相手がなにをしてくれなくてもいい。
ただ、そこに存在していてくれるだけで、温かい気持ちになる。

そこそこ年をとったわたしには、そんな友人が、数名いる。


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