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昔の学童

あの頃、全国で学童がどんな風に運営されていたのか、わたしは知らない。
けれど、ある町にあった、ある学童の話なら、知っている。

わたしのともだちは、毎日放課後になると、学童へ通っていた。
放課後だけでなく、土曜日も通っていたはずだ。

ともだちは、学童のことを、
「みんなきょうだいみたいで、お姉さんがいて、楽しいよ」
と言っていた。

毎日自宅へ帰るわたしにとって、学童は、あこがれの存在になった。

(学童、どんなところ?行ってみたい!)

残念ながら、お家に帰る時間に、家に大人がいるお家の子は、学童には通えないらしかった。

それでも、わたしは、学童へのあこがれを、抱き続けた。

そしてついに、ある土曜日、わたしは学童へ遊びにいくことができたのだった。

学童には、優しいお姉さんがいて、みんなと一緒に、ホットケーキを焼いた。
とてもいいにおい。
みんな、笑顔だった。

(お料理もできるなんて、学童、すごい!)

学童は、想像以上に楽しいところだった。

しかも、帰りがけに、そのお姉さんは、
「またおいで」
と言ってくれた。

わたしは、ますます学童が好きになった。

そうしているうちに、学童のお祭りに招待された。
わたしは、喜んででかけた。


夏祭りだったこともあって、出し物は、
「お化け屋敷」。

なんと、ダンボールから、無数の手が出てきて、わたしを襲った。

(こ、怖えぇぇぇぇ・・・・・!!!!!)

無数の手に怯えた後は、暗い中、首筋にコンニャクにも落ちてきた。

こんな恐ろしいものに、出会ったことがない。
と、当時は本気で思った。
遊園地のお化け屋敷の何倍も、怖かった。
わたしは、半泣きになって、逃げた。

その後、つきものが落ちたかのように、学童への興味は薄れた。
お化け屋敷のせいだったかもしれないし、わたしが単に、大きくなったからかもしれなかった。
なにが原因だったかは、覚えていない。

でも、時がたってみると、

友達の学童に憧れて訪れた、この記憶だけは、なんとなく大切な思い出として残っている。

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