髪の毛
病気で髪を失ったあの子は、
「髪の毛がなくたって、絶対に、彼氏を作ってやる」
と、こころの奥底から言ったのだった。
そのセリフを吐くタイミングは、体調がよく、機嫌よく、叫びながら言う時もあれば、そうじゃない時もあった。
体調が悪い時は、見れば分かった。
目元に生気がなくなり、ぐったりとしたような目と動きをしていたから。
バンダナは付けていたけど、ウィッグをつける気力は、そこには無さそうだった。
それでも呟いた、あの言霊。
「絶対に、彼氏を作ってやる」
願いのような、呪いのような言葉を、あの子は吐き出した。
一生懸命だった、あの子。
あの子の原動力は、あの言葉の深いところに、あったのだろうか。
何があって、あの言葉を、あの子はあんなに大事にしていたのか。
どうしているだろう、あの子。
今も、この世界で暮らしていることを、切に願う。
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