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「みんながやってるから」が罪だと気づいた日

その行為が流行っていたのは、いつのことだったか。

教室で、誰かが座ろうとしたタイミングで、椅子を後ろに引く。

座ろうとした椅子がなかったことで、尻もちをついた子が、

「いってぇ」

と言い、皆が笑う。

クラスでたくさんの子が、そうされていたし、私もやられたことがある。

たいていは、冗談と笑顔で終わった。
むしろ、やられた方は、自分が選ばれたような、ちょっと誇らしげな感じもあった。

そんなものだと、思っていた。

ある日のこと。

わたしは、自分が好きでも嫌いでもないあるクラスメートに、それをした。

突然、座ろうとした椅子がなくなったことで、その子は地面にお尻を打った。
後頭部も少し、椅子にぶつかったように見えた。

わたしは、いつもの反応を待った。

一瞬の間があって、その子は、痛そうに、後頭部を手で押さえて、しくしくと泣いた。

.....しまった。

この時になって、わたしは、自分がしたことの重大さと、その罪に気づいた。

「ごめんね!!○○ちゃん、ごめんね!!!」

わたしは、必死で謝った。

その子は、うんうんとうなづきながら、涙を拭き続けた。

罪の意識、とは、こういうものなのか。

わたしは、自分がしたことを、心の底から後悔した。

みんながやってるからって、やっていいわけじゃない。

心の底から、そう思った。

ある行為が流行っていたとしても、そして、たとえ自分はふざけてやったと思っていても、やっていいことと、悪いことがある。

わたしはそのことを、その子の痛みと、涙を代償に、教えてもらった。

いまでも、後悔とともに、あのシーンを思い出す。

もう決して、再び繰り返すことがないように。

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