Better Call Saul 最後のシーン
日本では2015年9月に始まり、昨年8月にシーズン6の最終話(ep.13)の放送を終えた「ベター・コール・ソウル」。
その前の2008年-2013年にわたって放送された「ブレーキング・バッド」の前日譚&後日譚であり、足掛け15年に渡ったアルバカーキ・サーガの締めくくりとなったのが、ベターコールソウルのシーズン6 ep.13「Saul Gone」です。
この2作品は、私のドラマの見方を根底から変えました。
この先どんなドラマが出てきても、この2作で受けた感動や衝撃・絶望はそうそう薄まらないはず。
自分の感情がこんなにも良くも悪くもアップダウンさせられるなんて、と驚きを感じた作品です。
この先も、この2作については「う、語りたいっ!」ってタイミングが折々あると思うので、その都度、綴っていけたらと思います。
今日は、ベター・コール・ソウルの最終話、シーズン6エピソード13の、最後の最後のシーンについて、「そうだったのか…」と発見したことがあったので、それを置いておきたいと思います。
ということなので、これ以降に置くものは、ネタバレを含みます。
今ちょうど見ている、この先見るはず、の方は、この先に進むのはご遠慮ください。
ではいきます。
ーー ここから、ネタバレあり ーー
S6-ep13のscreenplay、台本を入手しました。
(って言っても、ネット上で誰でもフリーで閲覧できるものですが)
他のいくつかのエピソードもありましたが、むくむくと興味が持ち上がったのは、S6-ep13のラストシーンです。
キムが刑務所にジミーをたずね、面会を終えて敷地外へと出るというシーン。
歩いているキムを、囚人用の屋外広場のようなところから、フェンス越しにジミーがずっと見つめている、というシーンです。
二人の間にある距離、フェンスという隔たり。
辛かったですよね。
ジミーが指で作ったピストルでキムに向かって撃つマネをします。
(この動きは、それまでのエピソードで2人の間で何度か繰り返されていて、多くのことを意味するものです)
問題は、この後のキムの動き。
最初に見た時は、私、キムの指の形に気づきませんでした。
もう一回見て、
「あ、指ピストルしてるよね! 絶対してるよね!」
と気づきました。
とはいえ、腕を曲げていかにも、というようなポーズではなく、バッグを持っている側の指をかろうじてそうかもとわかる程度に、というかすかなレベル。
このかすかさが本当につらくて痛くて、と同時に愛を感じて。
ああ、この2人はこの後もずっとつながっていくんだって確信するシーンでしたよね。
これが、脚本上はどうなってるんだろう、あのかすかな、しかし確かな絆が描かれている素晴らしいシーンを、文字でどう表現されているのかと思ったわけです。
で、読んでみました。
以下、該当箇所の抜粋です。
わかります?
私の拙い英語力でもわかったことは、脚本においては、
「キムは撃ち返し(ポーズをとり)、煙が上がった体で口で吹く」
となっているのです。
つまり、脚本上ではキムははっきりと指ピストルでジミーに応えている、ジミーとの絆がはっきり濃いめに描かれているのに、実際のシーンでは「かすかでうっすら」「わかりにくい」方へと修正がされていたのです。
これ、脚本どおりにキムがアクションをとっていたら、余韻が全く違っていたし、積み重ねた物語の重みまで変わっていたのではないかと思います。
あの「かすかな」、気づく人しか(つまりキムとジミーにしか)わからないレベルで交わすやりとりだからこそ、二人の絆の深さがより深く感じるなって。
すごいなー。
まさに引き算。
そしてここで一つの疑問が浮かびます。
果たして、この変更は、ピーター・グールドまたはヴィンス・ギリガンによる現場での判断による変更なのか、キム役のレイ・シーホーンの提案・采配によるものなのか。
あともう一つ、私が読むことができた脚本自体が決定稿ではなかった、という可能性もありますよね。
(ただ、別のエピソードの脚本には、表紙に「TBD」と書かれたものがあり、それは明らかに放送されたものと大きく違っていました)
いろいろ推測したり新たな発見があるので、脚本を読むのは楽しいです。
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