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複合的な’好き’をつなげる。

この記事は、音声配信Stand.fmにて2023年6月9日に配信したものを記事化したものです。

 

’好き’の見つけ方、つなげ方を考えてみる。


こんにちは。

今日はちょっと前に見つけて、 あ、これみんなと共有したいと思っていたことをすっかり忘れていたので、 ちょっと日付が戻ってしまいますが、共有させてもらっていいでしょうか?

「好きの見つけ方、つなげ方」に関連するものです。
皆さん、自分の‘好き’を意識的に理解・把握されてますか?
「私はこういうものが好き」「こういうことをするのが好き」とか、「どこどこに行くのが好き」「どんな時間を過ごすのが好き」っていうようなことです。
「私が好きなもの」っていうのは複数あると思うんですけれども、それぞれの‘好き’をちゃんと分かってあげられてますでしょうか?

生きていく上で、一番自分の、まあ明日も何とかやっていこうと、 「がんばって」までは思わなくていいんですけど、明日も落ちずに前を見ていこう、みたいにしていける、 その下支え、エンジン、ガソリンになるのは、「好き」っていう気持ちと、 それを分かっている状態であるっていうことが大事なんだろうなって思います。
「何々ができる」とか、「何々の専門家である」「得意である」の、もっと手前のとこですね。
「好きだ」ってところを、 わかってあげられているかいないかで、自分を肯定的に捉える力っていうのも高くなったり、下がってしまったりするんじゃないかなって感じます。


東京藝術大学学長の「好き」の究め方に学ぶ。


4月に発売されたAERAに出ていたもので、日比野克彦さんのお話なんです。


日比野克彦さん、ご存知ですか? 

芸術家です。
多分私が知ったのは、 80年代に、段ボールアーティストみたいな、段ボールを使っていろんなものを創作するっという、オブジェを作って色を塗ってって、何というか小学校の図画工作の時間から抜け出た圧倒的なクリエイティビティみたいな、爆発力とかを感じました。
あと当時の印象としてはアメリカナイズされているっていうのかな、ニューヨークを彷彿とさせる ポップアートっていう印象があったんです。
その日比野克彦さん、今も芸術家として活動を続けているんですけれども、 大学の学長になっているんですね。東京藝術大学の学長さんをやっていらっしゃいます。その日比野さんがAERAで語ってたんですね。
タイトルは「好きの極め方―必要なのは自分の好きを複合的につなげる柔軟さ」。ちっちゃい頃から、どんな人にも好きってあるものでしょっていう、食べ物の好き嫌いから始まり、 遊びの好き嫌いとかね、そういう「好き」っていう気持ちがその人を形づくる価値観につながっていくんだって話をしています。


価値観にぶち当たるまで掘り下げてみる。


「これが好き」っていういくつかの‘好き’のグループと、「これが嫌い」っていう‘嫌い’を集めたものを眺めると、 多分その人の傾向って出てきますよね。
そして、その‘好き’を深掘ったり‘嫌い’を深掘ると、 もう少しまとまったものになっていくんですよ。
「こんな風に生きていきたい」「こういうものを大事にしていきたい気持ちがある」、だから、これを好きと思う、 このことを嫌いと思うっていう風に、深堀って煮詰めていくと、抽象度は上がるけれども、いろんな‘好き’に共通するような言葉にぶち当たるんです。
これが価値観ってことになるんだと思うんです。
そうやって自分の価値観を自分で見つけられると、それに寄っていくっていうのか、引き寄せていくというのか、 そういうことができるようになりますよね。
「こういうのが自分を大事にしてるんだ」って分かりさえすれば、もっと‘好き’を集められるし、‘嫌い’って思うような気持ちが沈んでしまうものからは意図的に離れていく、選んで離れていくこともできると思うんですよね。 つまり、‘好き’を極めていこうっていうのはその話なんだと思います。

とはいえ、「自分が本質的に何が好きなのかっていうのに気づくには、やっぱり時間がかかるんです」って日比野さんも言っています。
単純に何も考えずにいると、「あれが好き」「これが好き」ってぽつぽつと島宇宙のように浮かんでいて、全然繋がらないですよね。
「好きなものはあれとあれとあれです」って、自己紹介でも単発で言うのが通常じゃないですか。
「私はこういう価値観を持っているので、好きなものはこれとこれ、共通点はこれです」みたいな自己紹介はないわけなので、考えようってならないと、 「本質的に何が好きなのか」ってところまで降りていくという、掘り下げることはできないんですよね。

でも、そうやって好きなものに共通する要素って何だろうっていうのをちゃんと分析する、嫌いなものを分析していくと、本質的に自分の好きなもの、自分が大事にしている価値観だったりが現れてくるんだと思うんです。
日比野さんの場合は、「絵を描くのも好きだけど、おしゃべりするのも嫌いじゃない」とか、「歌は下手だけど、だからって歌うのは嫌いじゃない」「ピアノ弾けないし楽譜も読めないけど、鍵盤を叩くのは嫌いじゃない」っておっしゃってます。
音楽だったりピアノ弾く、歌を歌うという中でもいろいろな要素があるわけで、「全部好き」って丸めるよりは、部分的に見つめていって、「ここが好きだけど、ここは好きじゃない」みたいに分けていく、腑分けしていくことで、自分の‘好き’の要素が集まってきて掘り下がっていくと。「なるほど。こういうことが自分は好きなんだ」っていうふうにわかってくる。

それで日比野さんも自分の今の仕事につながっていったって書かれています。
例えばサッカーチームの旗を作ったり、福祉施設で障害のある人たちと一緒に過ごす中で生まれた福祉xアートの取り組みをしたり。というようなことにつながったって言っています。
また、自分の‘好き’をより深めるためにも、より‘好き’を楽しむためにも、続けたり発信するってことが大事だという話もされています。

本当に自分の好きなことをやり続けていれば、次第に周りの人から「お前の‘好き’をちょっと見せてくれ」と声がかかり、価値の交換が生まれ、結果的に仕事になっていくんじゃないかという話をされています。
この場合は「仕事につながる」っていう話ですけれども、仕事につながらなくとも結果的に仲間が増えていったとか、自分の‘好き’のこの入り口から入ったら、出口はもっと豊かになって‘好き’が広がったってこともあると思うんです。
そして、いろんな領域の中で自分の‘好き’の共通項を見つけていけば、どんなことをやっても自分の‘好き’は続けられる気がする、と。
さらに、こうも話されています。

‘好き’を極める方法論は、根本的なところで「自分は何が好きなのか」を世の中のありとあらゆるところから見つけ出す手法です。これは好きを継続するのに重要なスキルだと思います。

AERA 2023年4月10日号

私ここに100%同感です。

’好き’がつながると、強い。


私自身、好きでやっていることがマーケティングリサーチだったり、脚本を書いたり物語を書いたりってことなんですけど、全部つながってるんですよね。
私の中で‘好き’‘やりたい’が重なっているのは、つまりは人に向き合うことなんだと思います。
人に向き合うってことは、自分にも向き合うことだし、あといろんな方に会うので、今の自分の引き出しだけではストックだけでは対応できないから、ずっと学び続けなくては、インプットし続けなければいけないわけですが、私は学ぶのがすごい好きなんですよね。
好奇心というか、新しいことを知りたいとか、一つ知ることで世界を広がるときのあの充実感、「そういうことか!」っていうひらめきとか、あれとこれが結びついたっていう感動みたいなものを味わうのが好きなので、やっぱり「学び続けていきたい」っていうのが私の‘好き’の向こう側にある価値観ということになると思います。
それがリサーチで人と話していく中で、その方の潜在的欲求が浮かび上がる瞬間に立ち会うことだったり、その言語化を一緒に進めるということであってり、物語を書いたり、そのための下調べをしたり、人に出会って新しいことにワクワクしたりっていう、出口がいろいろあるだけなんですね。
だから、何か一つにこだわらなくても、本質的な‘好き’をずっと大事におさえておけば、どういうところででも出口があって、楽しめるなと私も思っています。


’好き’に向き合う。強みが見つかる。楽しくなる。


以前、マルチポテンシャライトさんに関する配信をしました。
その時に、「‘好き’は一つじゃなくていいと思うんです。あれもやりたいこれもやりたいでいいんです、余力があるのならあれもこれもそれもやってOK」っていうような話をしておりました。

それをこの日比野さんの話に結びつけると、いろんな’好き’を楽しみながら、渡り歩きながらも、同時に本質的な‘好き’に向き合っていくことを意識するようにいくと、すごく強みになるってことだと感じました。
「自分が何が好きか」がわかるし、いろんな領域にまたがる‘好き’を束ねて、それを貫くもの、結局自分が大事にしているのは何なのかっていうのを見つけていくことが、どういう形であれ自分らしく日々を綴っていけることになるんだと思います。

必要なのは、狭い領域の中で自分の‘好き’を追求するのではなく、様々なジャンルにおける自分の‘好き’を複合的につなげる柔軟さだと思います。そうすれば自分にしかない‘好’きになり得るし、そのほうが他者との接点は増えていくはずです。
他者との接点が見出せないある一点だけの‘好き’を追求してしまうと、他者からは遠ざかってしまいます。まずは自分の‘好き’を分析して、複合的に応用していくスキルを身につけることをお勧めします。

AERA 2023年4月10日号

と締めくくってらっしゃいます。
やっぱり複合的な‘好き’と強いっていう結論ですね。

そしてその複合的な‘好き’に共通する本質的な‘好き’、つまりは価値観のところまで掘り下げられれば、状況が大きく変わっても 住んでいる場所とか、今やってることを全部やめなきゃいけなくなっても、次の‘好き’を見つけられるしなやかさにつながると思うんですね。

固執することなく、自分の‘好き’の共通項、一番根本的なところさえ押さえてそこがわかっていれば、いつでも楽しくいられるってことなんだなって思いました。

以上Jidakでした。ではまた。

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