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自分で探して、自分の足で歩いてそこへ行く。<Book Review>

この記事は、2023年4月3日にStand.fmにて配信した内容を記事化したものです。


こんにちは、VOICE Lab.のJidakです。
この番組はマーケティングリサーチャーで脚本や物語を書いているJidakが、ヒト・モノ・コトを通じて聞こえてきたVOICE・メッセージを緩くお伝えする番組です。


13人の居場所を自分で見つけた女たちのお話。

今日はブックレビューを。 ただ、本の内容ばかりじゃなくて、この本が著された背景とか、作者の方のお考えとかに触れる機会があったので、それをお知らせしようと思って配信をすることにしました。
戦いの庭 咲く女、彼女がそこにいる理由という本で、ジェーン・スーさんが書かれたものです。
文藝春秋から3月24日出たばかりです。 ’インタビューエッセイ’という新ジャンルで、インタビュアーではないけれど、動き続けている女性のことを、活動弁士のように紹介したかったと。そして、インタビューエッセイというフォーマットに落ち着いたとおっしゃっていました。
週刊文春WOMANに何年かにわたって連載されていたものが一冊の本にまとまったもので、ジェーン・スーさんが会いたいと思う人に、厳選に厳選を重ねた13人の女性にインタビューしたものが載っています。
大草直子さん、吉田羊さん、野木亜紀子さん、田中みな実さん、神崎恵さん、あと北斗晶さん、そして一条ゆかりさんなどなど、どのお名前を見ても、皆さんご存知の方ばかりですよね。
このインタビュー企画は、ジェーン・スーさんが「あの人の話を聞きたい!」というとこから立ち上がった企画で、どうやって自分で自分の居場所を作ったんだろうという背景・バックグラウンドを知りたかったということなんですね。


あなたも自分で咲く場所を見つけられる。

3月30日に、刊行記念のトークイベントが、紀尾井町の文藝春秋の出版社の本館サロンで開催されました。

スーさんと大草さんの対談みたいな形のトークイベントでして、私、幸運にも参加させて頂いたんです。
めちゃめちゃ倍率高かったらしいんですけれども、いつ私応募したんだろうって忘れてたぐらいなのに当たったんです。
しかも2列目の真ん中で、スーさんと大草さんの一挙手一投足が見える席で。
私、Over the sunというポッドキャストのファンでもあるんですけれども、みなさん、互助会の人(コアリスナー)なんだろうなって感じで、本当に雰囲気があったかくて、楽しい1時間50分を過ごしてきたんですね。

そのトークイベントの際に、文春WOMANの編集長が、13人を選んだ理由を振った時に、スーさんがまず「実家が太くないこと」って言ったんですよ。
実家が太くないこと、イコールもともとお膳立てされているような環境があっただの、恵まれていただの、経済的に苦しくなかっただの、特に迷いもせず、気がついたらこの道を歩いてましたみたいな人の話は聞きたくないと。 そうじゃなくて、ゼロから始めて、自分はどこにいて、どこで花を咲かせる人なのかっていうのを、自分でもがきながら捕まえた人、その女たちの試行錯誤が聞きたいっていうので選ばれた人たちらしいんですよ。
(注:スーさんは、「女性」ではなく「女」と表現されています)
だから、その道の先駆者、他に類を見ない活動をしている人たち、つまり、その人の後に道は開けたかもしれないけれども、まずあなたはきっと苦労したはずだってところをスーさんが聞きたいっていうことでインタビューした方たちなんですね。
普段活動してるのをこちら側から見てる限り、キラキラしてるとか、多分あの人だからできるんだろうな、あの人は特別だからとか、自分と比べるのは、並べるのはおこがましいぐらいな特別な人だから、みたいに思ってしまいがちな人たちなんですけども、実際に読むと、「この人たちも、こんなに苦労してたんだ」と感じました。勝手に特別視してはいけないって、本当にそういう感じです。
そして、スーさんは、「あなたもそうだよ。あなたもこの人たちのように自分が咲くべき場所を自分の足で歩いて見つけられるんだから」というメッセージも手渡したくて、この本を作ったらしいんです。


自分で自分に許可を与えよう。

インタビューは連載の形で都度都度行われていたので、みっちり取材期間も設けてあったそうです。
編集長の方が言うには、「今度インタビューする人の資料これです」ってどっさり箱に資料を渡すらしいんですねこういう時。過去の著作だったり、週刊誌のインタビュー記事だったり作品だったりっていうのを全部集めて、スーさんの方にお送りしたらしいんですね。
一般的にはインタビュアーの人に渡しても、1割2割読むかな、読んでないなみたいだなってことが多い中、スーさんは全部読み切って、その取材の場に臨んでたらしいんですね。
だから聞けてる内容が本当に深いです。
通り一遍のみんな知ってるようなことをどこかで語られていたようなことじゃない、鉄板ネタじゃないところまで掘り出していく、みたいな気概でスーさんが臨んでいるので、多分、よそで語られてないことばかりが、この本の中に展開されています。
特別な人たちが特別に頑張った話じゃなくて、「女たちよ、もっと自分で自分に許可を与えて、女の呪いから解き放たれるように、自分に許可を出していこう」っていうメッセージにあふれているわけです。
本を読んでそれを感じたし、トークイベントでも感じたし、総合的に聞こえてきました。
でも。
スーさんはみんなの先頭に立って旗を振ろうとか、「敵はどこだ!」みたいに煽ってるわけじゃないんですよね、全然。
そんなんじゃなくて、「あなたが、自分のために、自分の戦いをしていこうよ」ってのを言ってるんですよね。
連帯する必要もないし、敵を見つけて突撃する必要もない。
ただ、自分で自分の可能性を狭めてるんだったら、その鎧は脱ごうよ、その呪縛は解こうよ、制限は解除しようよってのをすごく言い続けてらっしゃいます。
だから、この本を読むと、「あの人は特別だから」と思っていた人が全然特別じゃなくて、もがいてもがいて、やっとその場所に自分が立っているって状態なんだなっていうのがわかるんですね。 それをわかってほしいっていう思いが、スーさんはすごい強いんだなと思いました。

何者かになる必要はない。’何者か’は他者が決めること。

このトークイベントはYouTubeでもまだ一般公開されているので、興味ある方は見ていただきたいです。
私はあの場にいたのですが、なんというか祭りみたいな状況だったんですよ。
すごい高揚感があって、「そうだそうだ、いいこと言う!」みたいな、みんながうんうん言ってて。
「自分の場所でやっていくぞ!」みたいな気概に溢れる時間になってたんです。
参加した全員、たぶん頬が紅潮してましたね。
別の言い方でいうと、焚き付けられたって感じで(笑)。
「なんか祭りみたいになっちゃったね」ってスーさんも言ってたんですけどね。
その感覚がアーカイブ見るだけでもすごい味わえると思うので、ぜひ見てほしいですし、この本も読んでほしいなと思います。

そのトークイベントで語られてた、「なるほど、そうだよね」って思ったことをいくつかお伝えしますね。
まず、「自分は何者にもなれなかったっていう言い方は全然する必要ないよ」と。
「そもそも何者かなんて他者が決めることだから、自分で決めるもんじゃないから」と。
「何者かになれないとダメだって誰が言ってるの?」という話になりました。
「何者かであるべきだ」って思っているのは自分で、何者かでないとこの世の中にいてはいけない、認められないって思っている自分がいるだけなんだと。
そんな思い込みは捨ててしまおうって言ってました。
そして、「私なんか」っていうのが絶対一番ダメってお話しされてました。
昔に何か傷つけられたようなことがあって、その結果なんだろうと。だから「私なんて」って先に自己防衛してしまうようになってるんじゃないかなって。
「私なんてダメですよ」って言って、何にもトライしない、一歩踏み出さない、それが一番安全ってことになってしまっている。
踏み出したっていいことは起きない。 過去の経験上、経験値がそう言ってるわけで、だからまず下げてしまうと。
でもね、それは自己防衛してるようで、単にあなたの可能性を自分で狭めてるんだよと。
昔に自分で決めた、「この枠の中で生きていく」っていうふうな箱の中に入っちゃってるけど、「その箱なんかないんだよ、 一歩出て全然いいんだよって、自分に言ってあげるのは全部自分ですよ」と。
「敵はどこだ?」じゃなくて、結局敵は自分。自分が決めた罠にずっと絡めとられてるだけなので、 それを解くのも自分ですよって言ってました。
それから、「自分への期待値を下げる必要は全然ないです」ってお話しもされていました。
これは大草さんもううんうんってうなずいてらっしゃって。もうほんと名言ばかり。
そんなふうにして前へ進んで、「ここで私は咲ける」って自分で勝ち取った場所なんですよね、13人の皆さんが。
インスタライブもあって、それも名言ばかりで。

途中で「置かれた場所で咲きなさいってことなんですね」ってコメントが入ったんですね、そしたらスーさんが「え? 違う違う違う! 間違ってるよ! 咲ける場所に歩いてくんだよ。足があるでしょ」って。
そうやってその受け身になってしまうのも、何年も何年も女たちにかけられた呪いだって言ってました。

’女らしさ’という呪い、トリック

ここから「女らしい」という言葉で何を想像するかという話になり。
例えば協調性が高いとか、サポート力が強いとか、我慢強いね、博愛精神があるね、ケアの労働に向いてるね、従順だねって、要は誰かを支えることが上手、これが全部イコール「女らしい」として語られるんですよね。
そして真面目な人ほど「女らしい」って褒め言葉にはまるように、そこを目指してしまうと。 なぜかというと、そうやってると褒められるから。みんなに好かれるから。 楽しく生きていきたいし、多くの人にすごいね、いいねって言われたいって思う気持ちで、自分のことを俯瞰で見ることなく、「女らしい」っていうのがゴールみたいに目指してしまうと。
例えば、「即断即決ができる」「みんなを引っ張っていける」「誰よりも人を安心させられる」みたいなのは、女らしいとは言えない。 だけど、生物学上の女の人でそういう能力を持ってる人はいっぱいいるんだけれども、それは女らしいという褒め言葉では語られない。
で、その「女らしさ=正しい」と、そこしか見ないで突き進んでいくと、どうなっちゃうかっていうと、 困ったことに、心配で心配でしょうがなくて、自信がなくなっちゃって、不安な人になってしまうんですって。 だってずっと支え続けているから。誰かのために、誰かをケアし続ける、博愛の精神になって、自分自身というものを見ないまま来ちゃうから。だから、自分のことがなかなか決められない人になってしまうんですって。
「すごいトリックでしょ。これ」って言ってて。

もし、「女らしい」って言葉に含まれる毒というか、それを飲まされていたことに合意してなかったのに、ついつき進んでしまっていたっていう場合は、今見直す時期だよって思ってほしいと、スーさんは言ってました。

「自分の居場所を人が用意してくれることは絶対にないから、自分でどこなんだって探していかなきゃいけない」、本当にそうですよね。
そしてその時に必要なのは、我慢強さとか忍耐じゃなくて、工夫、観察力、分析力、俯瞰する力。「自分が何ができるのか」っていう自分の棚卸しをし、それを言語化していくってことらしいです。
これらは、13人の人の話を読んでいく中でも、「なるほど」ってじゅわじゅわ染み込んでいきます。

No More '私なんか…’

あ、そうだ。あと、インスタライブの時のお話だったと思うんですが、一歩踏み出そうって時に 「人の話は聞いた方がいいよ」って言ってました。
「これやってみたらどう? あなたぴったりなんじゃない?」って勧められたら、「女らしい」を目指してた人ほど断るんですって。
「いや私なんて無理です」って言って。
でも男の人だったら「これどうなん? やってみれば?」って言われたら、 「ほんと? やってみようかな?」って割とハードルが低いらしいんです。
「女らしさ」を目指してしまった人ほど、自信もないし心配もしていて、どうしたらいいかわからないのに、「こうしたらいいんじゃない? あなたにいいわよ」って言われても、「いや私なんて…」ってなって、結局また抜け出す道がなくなってしまう。
なので、信用できる人の言葉を信用してやってみたらいいよと。
ピックアップしてもらえるのなら それに乗っかっていこうよと。
そうすることで自分のやれることやりたいことの方向づけがはっきりできてくるよっていう話をしてました。

それから。
自分で自分にどんどん許可を与えてくださいって言ってました。
「これが欲しい」とか「あれをやりたい」みたいな、自分の欲望がわからなくなっちゃってる人が多いって。
それは、勝手に自分で制約つけて、「私にはそれはダメ、無理」って思い続けて来ているから。
そうじゃなくて、どんどん許可していこうと。
「あれを求めてもいい」「それをやってもいい」っていう風に許可してあげる。
「自分を許すみたいなことが、まず第一歩として重要ですよ」と言ってましたね。
でも、ただがむしらにやっちゃダメって。それは無駄だから。
それに、がむしゃらにやってると「なんか私やってる」って、中身もないのにやってる気になるだけだからと。
ちゃんと棚卸しをして、分析と観察が重要なんですね。

最後に、「人の期待に応えていく」ってことと、「自分軸でやりたいことをやっていく」っていうのは 難しいことのようだけど両立できるんですよっていう話をされていました。

一番の味方は、明日の私。

それらをやってきた人たち、この本に載ってる13人の人たちなんだろうなって思います。
13人の最後が、一条ゆかりさんのインタビューなんですね。
一条ゆかりさんは、私の世代よりもまたさらに上なので、本当に厳しい時代に頭を出した人で、軍隊のような人だと思うんですけど(笑)、こんなふうに言ってらっしゃいます。

「どんなに嫌な自分でも、いつも真正面から自分と戦いたい。あなたの敵は?と聞かれたら、今日の私と答えます。一番の味方は、明日の私。明日の私に褒められるように今日の私と戦うのよ」

すごいな、この強さ。
誰に禁止されるわけでも、誰に命令されるわけでもなく、自分で自分を点検していくことの大切さと難しさ。
それができる人たちがこの13人であり、そして自分がそこにいる理由っていうのを分かっているってことなんですね。
ぜひ本も読んでほしいです。
あとはインスタライブとかYouTubeを見ても十分に肌と膝を打つことばかりなので、迷える大人の女たち、おすすめです。

以上、Jidakでした。ではまた。

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