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私がNPO自治経営の理事になった理由

NPO法人自治経営 理事 青沼 千鶴

1.魅惑の公民連携の世界へ

「何をしている人なのかよくわからない」
そう言われることに慣れてきた私だが、本業は司法書士・行政書士というオカタイ仕事をしている。
「八雲町」といっても、たいていどこにあるかわからない。北海道の南方のこの小さな町に暮らして11年になる。
小さな町では、ちょっと変わったことをすればすぐ目立ってしまう。ひとりの投げた石が描く波紋がくっきりと際立つ。そういう意味では、都会で暮らしていると味わえないおもしろさがある。気づくと、多種多様なイベントなどを主催し、その規模がだんだん大きくなって、巻き込まれてくれる人の数も多くなっていた。
もともと、好奇心旺盛で興味が向いたことにはすぐ飛び込んでみたくなる性分。きっかけは、一冊の本だった。そこで「リノベーションまちづくり」「公民連携」という言葉を初めて知った。ちょうど、相続の仕事を取り扱うたび、増え続ける空き家を目の当たりにし、何とかならないかと思っていた頃だった。そのヒントを得ようと、リノベーションスクール都電沿線や、トレジャーハンティング清水を経て、公民連携プロフェッショナルスクール3期生となった。
学べば学ぶほど、深くておもしろい。「公と民の結婚」とも表現される公民連携は、私は失敗してしまったクチだ。その傷から立ち直るためにも、知りたかった。気になった場所には自分の目で確かめるためすぐに足を運んで話を聞いた。師匠たちの、求めれば惜しげもなくチャンスを与えて導いてくれる器の大きさや、人間的魅力にも夢中になった。
スクールが、間違いなく私の転機といえるだろう。環境が人を作るというが、どこに自分のチャンネルを合わせるか、見ている先の世界が、この頃から変わったと思う。

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2.ちいさな試みの数々。そして小さな兆し。

何が正解かは、教えてはもらえない。答えは自分で探さなければならない。スクールで教えてくれるのは、手法と思考プロセスだ。
ケーススタディブックを手にすると、全国で起きている汗と涙にまみれた試行錯誤の数々に、重みをずっしりと感じる。未踏ルートを開拓する先駆者たちの、勇気の書。
臆病者の私は、下手くそなりにも、小さな玉を数多く打ち続けることだけが、できることだった。
古民家を勢いで借りて、スタートアップ専門のシェアスペース「カミヤクモ321」の運営を始めたのは3年前。お金をほとんどかけず、あばら家のような建物なのに、今や6店舗が入居し、日替わりで店主が変わるお店となった。ベーグル屋、パンと珈琲と古物の店、ウイスキーとボードゲームのバー、ハワイアンマッサージのサロン、珈琲とノンアルコールカクテルの店など。週末は、ライブや映画会、講演会や個展をやっている。「カミヤクモ321で出店するのを目標にしている」と言ってくれた人がいた。
今年9月にオープンさせた68歳の女性が営むおにぎり屋さんは、山奥にあるにも関わらず、必ず売り切れる。ご近所さんも加わって、4人の「かあさん」が働く人気店となった。
そしてカミヤクモ321で出店した2家族が店の周辺に移住を決めた。この近くで店をかまえる夢に向かっている。カミヤクモ321の建物のオーナーは、特技を活かして自らワークショップをやってくれた。
すぐに取り組めることからひたすら動いているだけなのだが、人と場所とチャンスの情報が集まってくるようになったのは確かだ。
木彫り熊の発祥地という町の物語に光をあてたくて、木彫り熊を扱う店を事務所の隣に作ったところ、テナントの大家さんも、奥に眠らせていた木彫り熊を飾り始めた。
毎月1回、事務所の駐車場に無水カレーのキッチンカーを呼び、ビルの中の空きテナントを使って様々なポップアップストアをつくっているが、いつのまにか4年。すっかり日常に定着した。
キャンドルナイトの野外フェスイベントは、最初は公園を借りるのも前例がなく苦労したが、7年続けているうちにどんどん規模が大きくなり、「八雲といえばキャンドルナイト」という嬉しい声も町外から聞こえるようになってきた。
具体的に動いてみて、変わりながら続けていれば、必ず小さくても内外に変化の兆しはある。そこに敏感でありたい。

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3.どこにある私の「本気」

「君が本気でやらなくてどうする。本気でやらなければ誰もついてこない。」そう言ってくれた、経済評論家のぐっちーさんの言葉はずっと胸に残っている。
何かやれるはずだと、常に発破をかけてくれていたのに、結局本気で取り組む姿を見せられないまま、永遠に会えなくなってしまった。
自分が本気で情熱を傾けられることは何か。どこにあるのか。それを探そうとすると、薄っぺらで空っぽの自分に気づく。自分の中にないものは出せない。途方にくれそうになる。パーツはたくさん集めてきているけれど、どう形にしたいのかがわからない。今はまだ。
そんな未熟な私が、NPO自治経営の理事をさせていただいている。すごい理事メンバーたちからたくさんの刺激をもらっている。私が貢献できることを見つけていきたい。ここでこれからも多くを学び、楽しみ、わくわくしながら、NPO自治経営と一緒に大きくなっていきたいと思う。自分自身に、自分の取り組みに、もっと厚みをつけていきたい。
そしていつの日か、私の「本気」を、空の上にいるあの人に見てもらえるようになりたい。


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