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読みたい本がありすぎる


ある時から頑なに本を読むのを辞めた。

読んで、できた気になって
なんなら買った時点で知った気になって
思考も行動も停止するのではないかと思ったからだ。


今は思考の旅に出ると言うよりも 
どこか自分に足りないものを吸収したい
と感じているのだろうか。

連日行く先々で本を数冊ずつ買い求めている。

それもいつもの書店ではなく 
違う街の 
違う雰囲気の 
久しぶりに訪ねる街の 
偶然見つけた古書店の 
縁ともいうべき一冊。

10センチはある専門書から 
普段は買わない傾向のものから 
敬遠していた作家の物語まで。 

友人と行って
「数分後に集合ね」
といって気になる本を紹介し合う。

友人はどちらかというと
元ヤンテイストが散りばめられた武闘派。
本読むの?と言われることも多々あるらしい。
失礼な話。
本読んでる人偉いのか?
という疑問は常々腹に抱えている。


そんな彼女は嬉々としてランチが運ばれてくるまでの間図書館で借りた本の話をしてくれる。
(私は電車内で向かいの人の本に目をやり
どこの図書館の本か目を光らせ
その人の生活ぶりを妄想する変態だ。)

彼女は読んだ本を決してインスタに載せたりしない。

誰かに紹介するために読んでいるんじゃないの。視線を落としたままそう言うと運ばれてきたかき氷を私にもひと口食べろと勧めてくる。


びっくりしたことがあった。

彼女が探している本があると言うので立ち寄った書店。

目の前を通り過ぎる絶対私が着ている服より高そうな服を着ているであろうお犬様を観察しながら彼女を待つ。

「あった?」と訪ねると表情を変えずに
「なかった」と彼女が答える。

「ちなみになんて本?」

答えを聞いて目を見開いて立ち止まってしまった。


彼女が探していたのは私の別の友人のご主人である覆面作家さんの本だったのだ!

数冊の文庫本まで出していて、北欧テイストの可愛らしいインテリアで統一されたお宅に住んでいる物静かな方で、会社名まで存じ上げている。きっとお伝えしてもリアクションは薄そう。
言うほどのことじゃないかな?
それにしてもなんというご縁!!
こんなに身近で繋がるなんて!
久しぶりの連絡の機会をもたらしてくれたのが最も親しい友人だったこと。

自分の周りに円ができていくような感覚で 
やっぱりなんとなく嬉しくて私は伝えてしまうだろう。

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