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アート初心者の美術館巡り③ ~上流階級気分を全身で味わう~

今年やりたいことの一つとしている「アート鑑賞」。
2022の美術館第3弾は、「東京都庭園美術館」で開催中の「建物公開2022 アール・デコの貴重書」展。

庭園美術館の正体

東京都庭園美術館は、私にとって初の場所。事前知識も全くなく、展示の告知を目にしたときに「あら~!なんて素敵な建物!!」という印象だけで足を延ばしてまいりましたが……これがもう、大正解!

目黒駅のほど近くにある公園(というか、実は庭園なのですが)に佇む美術館は、旧宮家のお屋敷だったんですね。
で、このお屋敷の主である鳩彦王は、いろいろあって(雑(笑))3年間フランスで過ごしたのですが、当時全盛期を迎えていたアール・デコの様式にほれ込んで、自邸建築にあたってそのアール・デコをふんだんに取り入れた建物に仕上げたというわけ。


そもそも「アール・デコ」って何?

ところで、「アール・デコ」っていったい何?って話ですが。みなさんなんとなく知ったかぶっていますよね(え?私だけですかね???)。
大昔に、美術で教わったような気もしますけれども。

アール・デコとは、1910年代から30年代にかけて、フランスを中心にヨーロッパを席巻した工芸・建築・絵画・ファッションなどすべての分野に波及した装飾様式の総称です。(中略)1920年代は現代的なライフスタイルの枠組みができた時代でした。飛行機が飛び、汽船による観光旅行が流行し、蒸気機関車や地黄者はより早く走り、世界のあらゆるものがめまぐるしく動き始めました。このリズミカルでメカニックな動きの表現がアール・ヌーヴォーの有機的形態に取って代わり、鉱物的で直線的なアール・デコの基調となっています。電波を表現したジグザグ模様やスピード感あふれる流線形、噴水の図様などに、その繁栄を見ることができます。

こういう感じのが、アール・ヌーヴォー。


で、こっちが、アール・デコ。

・・・・・・ここで私は大きな勘違いをしていたことに気づきましたよ。

見に行く前、「アール・デコ」って聞いて、もっと「コテコテな装飾」のイメージだったのに、あとからご紹介する館内の様子をご覧いただくとお判りいただける通り、そこには「かわいい」が溢れていて、むしろ参考にしたいほどの洗練された装飾が次から次へと。

私、「アール」と聞いただけで「ヌーヴォー」に脳内変換されてたんですね!

「ミュシャ」とか「ヴェルサイユ宮殿」みたいなのがヌーヴォーでクラシック。デコのほうは、いわば現代美術寄り。
ヌーヴォーが足し算で、デコは引き算、みたいな。
(あくまでも、わたし的理解ですけれども!)

なるほど~!そういうことか!


年に一度のお楽しみ

で、ですね。

今回「建物公開2022」と年号が記載されている通り、この「建物公開」は毎年恒例の展示だそうで。
4月下旬から6月中旬くらいまでがその季節のようですね。

普段は展示の背景となりがちな建物にスポットを当て、その意匠を堪能しつつ、さらにそこにリンクさせた展示を毎年行っている模様です。


結論=行かないと損。

いきなり結論から申し上げますが。
これ、絶対行った方が得。
いかないと損です!

理由①:コスパがいい

普通の展示であれば、安くても1200円ほどが相場でしょう。
が、この建物公開は、大人1000円。

国の重要文化財に指定されている本館に加え、そこに入るだけで入場料が取られる庭園も同時に楽しめる。
むしろ、塀の中に一歩入るだけで緑あふれる空間は、文字通り都心にいるのを忘れるレベルで、癒し効果がものすごい!!!

入館者だけが入れるカフェ。
とても魅力的な場所だったので、ここへの入場料と考えてもコスパ◎!

実はこの日、私と友人はお互い早めに帰宅しなくてはいけない用事があり、館内の滞在時間は2時間30分ほどでしたが、満足感がものすごかった!近くに住んでいるなら、30分でもこの塀の中に身をゆだねたいと思わされるほどで、ある意味「パワースポット」といっても過言ではない気がする……。

理由②:季節が最高

新緑が芽吹き、気温も心地よく、梅雨を迎える前のこの季節。
ただでさえお出かけにぴったりなのに加え、木々に覆われたこの空間の美しさたるや!

殿下と妃殿下の居室からだけ出入りできる専用のバルコニーには、この展示のために椅子まで!
次回はここでゆっくり過ごしたい…!!!

さらに、館内に入れば普段は展示品を保護するために日光を遮るべく閉じられているであろうカーテンも、建物公開期間中は多く開かれ、窓の向こうには瑞々しい木々が借景となって、それはもう贅沢空間!

美術館に入館した人だけが利用できるカフェも、まずはテラス席から埋まっていました。
そりゃそうですよね、芝生と木々の緑を眺めながら、ひとりゆっくり過ごすひと時…見ているだけで最高。

なるほど、この時期に建物公開をする理由も、この緑の美しさにあるのではなかろうか、と納得しきりでした。

理由③:上流階級の日常を疑似体験

そしてなによりオススメなのは、これ。「勝手に宮家気分を味わえる」。

アール・デコの装飾とか建築って、図録とかで見るだけでもある程度その素晴らしさに触れられる気がするんですよ。でも、やっぱりかつて宮家の人々が暮らし、名高い人々が集ったであろうその場所に自分自身が身を置くことが、ものすっごく想像力を掻き立ててくれるわけです!!!

一般平民であれば入れないはずの大食堂にはテーブルセッティングも再現されて、それを目の前に、窓の向こうの緑を臨めば、気分はすっかり奥様。

「昨日までのお休みはどちらでお過ごしになって?」とか言っちゃってみたり、見えないメイドさんたちが周りでいそいそ動き回る中、ナイフとフォークを操る私を想像してみたり。

若君や姫君の専用スペースでは、思い通りに設えられた部屋にも関わらず、閉塞感に見悶えながら「いつか私も自由に外へ……!」という思いを胸に抱きながら窓の外をひとり眺めていたのかしら…‥なんて。

あ~たのしい。こういうことですよ。感じるってのは。(多分)

隅々にまでわたってこだわりが発揮されたお部屋の装飾は本当に素晴らしくて写真も撮りまくりましたけれども、その細やかな部分に気を取られるのではなく、そこの息遣いに耳を澄ませることができるというのが、その場に足を運んだからこその醍醐味!!

来年は、この旧朝香宮家について学んだうえで、もっとじっくり時間をかけて「一人宮家ごっこ」をしにこの地に舞い戻ってこようと決意したのでした。

ミュージアムショップに置かれていたこの本を、その場で図書館で予約しましたよ。


おしまいに

……というわけで、いや~本当にいいものを見た、というのを超えた心満たされるひと時。

なんだろう、よく「身の丈を超えた世界を知っておくことが、その人の幅を広げてくれる」的なことを聞きますが、そういう観点でも、すごくいい体験をさせてもらった気がします。

別にここで何をするってわけじゃないのですが、ここで暮らした人々がいたこと、それを追体験できること。ここに身を置くことが、一瞬でも自分を違うランクのところにワープさせてくれて、そのことで人間的な厚みが出る――そういう感じ。

そんなわけで、心がウルッウル、ちゃぷちゃぷと音を立てそうなほどに満たされた庭園美術館。

お天気のよい平日、朝一が狙い目ですよ!

2021年12月、WordPressでWEBサイト「じぶん実験室」を立ち上げましたが、2023年6月より、noteにお引越しを始めました。

2021年12月~2023年6月の記事は、WEBサイトに掲載していたコンテンツをそのまま移行したものです。


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