引き寄せてるんじゃなくて、選び取ってる
「夢を描こう」とか「夢は叶う」みたいな、陽の空気をまとってまっすぐ健やかに進んでいく人達が、すこし苦手だった。
というよりも、ひねくれ人間不信満載で生きてきた自分にとって、そういう言葉は眩しすぎて、「さあ、あなたも一緒に!」と手を差しのべられた日には「自分はちょっと大丈夫です……」と目を伏せて一目散に逃げてしまうような。
成功した快活な大人達は「3年後や5年後のビジョンを持とう!」と声高に言う。けれど、わたしには3年後や5年後のことなんてわからない。ましてや1年後自分がどうなっているかもわからない。なんの仕事をして、誰と仲良くして、誰のことを好きになっているか。そんな不確実性が高い未来は、理想を詰め込んで描いたって、失望するだけで時間の無駄だと思っていた。
ただ、そうやって「夢を描くこと」を遠ざけて生きている間、何かずうっと満たされない部分があった。
なかば人生をあきらめたような気持ちで過ごす日々は、自分の "生の実感" を得られない空虚な毎日でもあった。
そうしていつしか「こんなはずじゃなかった自分」になり、ついに、わたしはわたしの人生に絶望してしまうのだけど。
「こんなはずじゃなかった」と思う日々に終止符を打つために、わたしは観念して、あの快活な大人達が言っていた「夢を描く」をやってみた。
最初のうちは、「こうしたい」「こうありたい」「これをやりたい」といった夢はまったくと言っていいほど描けない。まあそれまでずっと使っていなかった脳なのだから、それもそうだろうと、ちょっとずつ思考のブロックを外しながら、リハビリするような気持ちで続けてみた。そうするより他に、絶望から這い上がる良い手が見つからなかったというのもある。
それで、どうにかこうにか最初に描いた夢は、今もありありと覚えている。
2014年。当時は新卒で入った文房具メーカーを退職した直後で、塾講師として再スタートを切ろうとしていたときだった。描いた「こうなりたい」という自分は、グレーのスーツを着て、大きなホワイトボードの前で、3人の高校生の前で授業をしていた。もっと細かく鮮明に描いたから、ここに書いたのはほんの一部なのだけど。
そしてその夢は、割とすぐに実現する。
わたしは個別進学塾の講師として採用され、ほぼ思い描いたような働き方ができたのである。
そんな成功体験を積んだおかげで、それからというもの、わたしは定期的に「こうなりたい」「こうありたい」を、描くようになった。
例えばこちらは、2018年に描いたもの
元になっているブログはこちら。2018年11月に書いているから、じぶんジカンを始める前、はじめて「自己分析ノート」をつくった直後ぐらいのことだ。
ここに描いた中で、現在叶っているものを羅列してみる。
たった4年で、だいぶ叶ってる。
2018年に描いたときは、全然現実的ではない「夢」だったのだけれど、今読み返すと「残りの項目も、まあいつかは実現できそうだよね」と思えるぐらいにはなっている。
そして昨年にも、わたしは自分が「こんな1日を過ごしたい」と思えるような1日をノートに描いているのだけど、その内容でさえ、すでにもういくつか叶っている。
例えば、クライアントワークをやめてじぶんジカンだけで生計を立てること。ワークショップを主催してみること。「夫が野菜の料理をつくってくれる」とか、そういうのも叶ってる。これは「こういう1日を描いたんだよね〜」と夫に共有したため、夫が叶えてくれたものだけど(叶えてね!というプレッシャーはかけてないつもり、たぶん)。
わたし自身の発信もそうだし、じぶんジカンもそうなのだけど、「ありたい姿を描こう」とか「なりたい自分になろう」とか、こういうメッセージはおそらく、今よりもっと思いっきり斜に構えていた自分には、届かないかもしれないなと思ってる。
それに実はいまでも、わたしはそういうのを小っ恥ずかしく思ってしまう性であることは変わってない。
だからなるべく、自分が小っ恥ずかしくならないような、昔の自分が反射的に「そんなの信じられない」と言わないような伝え方で、届けようという努力はしているつもりだったりする。
ただ、ひとつ言えるのは、「なりたい自分」や「やりたいこと」を描くことは、単純に「夢を持っているって素晴らしいよね!」というポジティブ思考によるものでもなく、スピリチュアル界隈で言われるような「意識すれば自然とそれらを引き寄せますよ!」というものでも、わたしはないと思ってる。
なりたい自分を知っておくこと、やりたいことを自覚すること。そうすることによって、自らの手で、叶えるための手段や道を選びとっていけるのだと思う。
つまり、「夢を描いたら叶うよ!」なんていう生やさしいものではない。どちらかというと、描いてからが本番。
マッチョに聞こえるかもしれないけど、自分の「こうあったら心地よい」を叶える過程は、勇気がいるだけでそんなに険しい道ではない。……うーん、ちょっと嘘かな。最初はやや険しい道かもしれない。まず藪だらけの小道に入っていかなきゃいけなかったりするから。
でも、しばらくしたら、ちゃんと道ができてくるから。そうすればあとは、心地よい方を選べばいいだけだ。
キラキラとした「夢がある人って素敵!」みたいなことではなく。スピリチュアル的なものでもなく。
ただ目的地の設定とルートの選択という、カーナビのような、地に足をつけて歩くために必要なことだというのが、あの時の自分にも伝わるといいなあと思いながら、この文章を書きました。
でもまあ最初は、半信半疑でもいいよ。
描くだけ無料なのだから、まあちょっとやってみてよ。
きっとやってみたら、わかると思うよ。どんなに疑り深い自分でも。
「ああ、この作業は、自分の人生を生きるためには必要なんだ」ってね。
おわり
運営しているブランド「じぶんジカン」では、自分と向きあう時間をつくるノートを販売しています。
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以下は既存の定番ノート。よかったらどうぞ。
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