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第8話 私はいつからジストニア?

藁をもすがる想いで行ってみた、とある治療院。
先生は、感染症がジストニアの原因だと考えていた。
そして、弱い体を補うために症状が出ている、とも。
これまでの自分の経験と重なる話だ……。

これが前回までのお話です。



第8話 私はいつからジストニア?


その一方で、まだ解決できないことがありました。
ジストニアは感染症が原因だと言っても、いったいいつからの感染症か、ということ。

「転倒によって脳が弱っていることは確かだし、
手術で感染が広がって症状が悪化したのも確か。
けれど、これだけの難病になるってことは、生まれた時から症状があったはずだよ」

先生は、初診の頃からこう指摘していました。

人は誰しも細菌やウイルスを持って生まれてきて、それと共存しながら生きていく。
その中には病原体も含まれる。
けれど、だからと言って、それを持っていること自体は特別なことではない
と先生は言います。
特別になってしまうのは、一定の条件がそろったとき。

「生まれたときからお金持ちの子もいれば、貧乏な子もいるように、病原体を持って生まれる量というのがあるんだよね。
あとは、入りどころが悪かったり、他の細菌やウイルスとの組み合わせが悪かったり、病原体と体との相性が悪かったり。

生まれた時から病気かどうかというのは、運みたいなところがあるのかもね」

この治療院では、筋肉反射テストというのを使って、診断しています。
患者の体に先生が触れても、正常なら脳は拒否反応を示さないので筋力は下がらない。
けれど、異常な箇所に触れると、脳は嫌がって全身の筋力が下がってしまう。
そうやって、患者の筋肉の反応を診て診断をしています。

感染症の診断も、同じ方法で行われます。
ただ、診断基準が逆になるところが、通常の診断とは違う点です。
通常の場合、脳が体の異常を感知したときに筋力は下がります。

けれど感染症の場合、筋力が下がるのは体が正常なとき。
感染していないとき。
なぜなら、体の中に特定の病原体がいないから、外の異常に脳が拒否反応を示すから。

私の場合、風疹ウイルスとポリオウイルスに体が強く反応しました。
全身がこれらに感染して、炎症を起こしているのだそう。

「細菌は、血液を嫌うから血流の少ないところに逃げ込む。
ウイルスにいたっては細胞の中に入ってしまう。
だから血液検査や画像検査で異常が見つかる方が、むしろ珍しいんだよね。それで原因不明の難病とされてしまう。
けれど難病の影には、だいたい風疹かポリオが関係しているよ。

思い当たる症状、何かない?」

そう言われても、特に思い浮かばない。
私のジストニアは、いつから、どう始まったのだろう。

年数が経っても、疑問が残りつづける。
一方で、治療は着実に実を結んでいました。

「前から見かけていましたよ。
見違えるほど良くなりましたね。
以前はとても辛そうだったのに、良かったですね」

待合室で、他の患者さんに声をかけられることが年々増えていきました。
気力・体力ともに、充実していきました。
こうして私は、少しずつ社会復帰に向けた準備を始めていくのでした。

(つづく)


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