タコ部屋のセックスを止めたSiri。
明け方の三時、他人のセックスで目が覚めた。
木造でできたコテージのような建物。プールが大、小二つ。木でできたブラインドを覗くと、朝から夜まで多国籍のボーイ&ガールズがキャッキャキャッキャと楽しそうに泳いでいる。
この付近で日本人は、私だけの様だった。
宿に泊まっているのは、英語を話せる人ばかりで、皆バカンスに訪れているようだった。
14畳程の部屋には、トイレとシャワー、そして一つ一つがカーテンで囲われた二段ベットが、縦に二つと向かい側に一つ並ぶ。
六人の素泊まり部屋。
ここは、バリ島のバックパッカーホステルだ。
私は一人、バリ島に来ていた。
泊まっているのはバックパッカーホステル。
六人のタコ部屋の中、突然おっぱじまった他人のセックスで人生初めて、目を覚ましたのだった。
バーンバンバンバーン!ボーーーン!!パンパン!ブヴォンヴォンヴォン!!ギッタンバッタン!!
ギギギギィー!!ガガガガカッ
ヴォンヴォンヴォンヴォン!!!!
少し経ってから他人のセックスだとわかったけれど、謎の効果音、ヴォン・ヴォンヴォンのせいで脳内でスター○ォーズのあの有名なBGMが大音量で流れ出す。
パ!パパッ!!!!!
パーン!パーン!パパパパパーーン!!パーン!パパパパーンパン!
BGMに時折、ライトセーバーの音が響く。
ヴォン・ヴォンヴォン
たった今、同じ部屋の誰かの「愛のエピソード1」がはじまった様だった。
「俺のライトセーバーが火を吹くぜ!」
眠気におそわれる中、激しくBGMにまぎれてヴォン・ヴォンヴォンがそう雄叫んでくる。
実にうるさい。
「お前らもう、下半身だけダークサイドから二度と帰ってくんなよ。」と中指(ぴーーー)を立てながら思う事1時間と強。(なっが)
突然、私のiPhoneが叫んだ。
「よし、やってみます!!
生麦!生米!生卵!
すもももももも!もものうち!!
赤パジャマ!青パジャマ!黄パジャマ!
赤巻き紙!青巻き紙!黄巻き紙!!!!」
画面を見ると、使ったこともない私のSiriが突然発動し、画面には今Siriが叫んだ早口言葉がつらつらと書かれていた。
一気に静まり帰る室内。
謎の言語で突然、捲し立てられる(まくしたてられる)赤パジャマや、すもも、カラフルにぐるぐると巻かれた紙に驚いたのか、急にライトセーバーはフォース(光)を失った様だった。
ヴォン・ヴォンヴォン鎮静。
その前に私がめちゃくちゃびっくりして、ひっくり返ってiPhoneを顔に落とした。
同時に笑いがこみ上げてきて、耐えきれずに枕で声を押し殺して爆笑した。
なんの銀河系の試練やこれ。
バリ島のタコ部屋の試練や。
ブラインド越しに太陽がチラつく。
もう、スター○ォーズの主題歌もライトセーバーの音も聞こえない。
戦いは終わった。
タコ部屋の平和はSiriに守られた。
平和を取り戻した外では鳥が、チュンチュン鳴いている。「もう、朝やん…。」
さあ眠ろう!
再び眠りにつこうとした時に気づいた。
「なぁSiri。あの日本人、『クレイジーだよ』と思われてへん?」
私はもう、二度と
Siriでセックスを止めたりしない。
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