教員の働き方改革への提言(6)
教員の働き方改革への提言と高大接続改革
おはようございます!
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本論では、「適正な学習評価」としてのエビデンス・アカウンタビリティの根拠を、学校全体(全教科科目、教科外教育活動の総て)で、「グラデーションポリシー」の共有と実践を進めていくことに求め、「定期考査の廃止と平常点作業の見直し・削減」を断行することを提言しました
同時に、「テスト点70点(若しくは80点)・平常点30点(若しくは20点)」の思考から脱却し、新学習指導要領・観点別学習状況の評価の理念に基づく適正な学習評価の在り方を示してみました
定期考査を廃止し、教科書の副読本、授業プリントから出題する「単元テスト」の実施
「単元テスト」で定期考査は不要となり、長時間を要する作問作業・採点作業も不要
「単元テスト」では、「知識・技能」評価の7割・「思考・判断・表現」評価の2割を評価する
年に1回若しくは2回設定する「パフォーマンス課題」により「思考・判断断・表現」評価の6割と「主体的に学習に取り組む態度」評価の7割、「知識・技能」評価の3割を一体的に評価
発表後に、個人論文・レポート・提案書・ジャーナルを書くことで、「思考・判断・表現」評価と「主体的に学習に取り組む態度」評価の残りの部分を一体的に評価
情意も含めた授業の取組み態度の評価やノート・プリント点検等の「平常点」業務も、「パフォーマンス課題」で「思考・判断・表現」と「主体的に学習に取り組む態度」を一体的に評価することで不要
定期考査業務(教科打合せ・作問・採点等々)、昔ながらの平常点作業、これらを削減することで、先生方が勤務時間内に生徒たちと向き合う時間をかなり創出できるはずです
他方、校長や先生方にとって、「適正な学習評価」としてのエビデンス・アカウンタビリティの根拠を、学校全体(全教科科目、教科外教育活動の総て)で、「グラデーションポリシー」の共有と実践に求めていくことへの不安があることが想起されます
「テスト点70点(若しくは80点)・平常点30点(若しくは20点)」は、長時間の業務量とミスが許されない重圧はありますが、「このようなデータ(定期考査の素点、詳細な平常点等)を根拠にこう評価しました」と表明する意味では、校長・先生方にとってとても安心です
その背景には、いわゆる評定平均値の「0.1」「0.01」の差が生徒の一生を左右することがあります
指定校推薦(「学校推薦型選抜」)や、推薦枠人数に制限のある国公立大学の「学校推薦型選抜」等の校内選考におけるエビデンス・アカウンタビリティ、「総合型選抜(旧AO入試)」の出願条件の問題です
対象生徒・保護者にとっての公平性の担保が何より必要不可欠で、先生方は、学習評価に最大の緊張感と細心の注意を払って臨むからです
これらの不安を払拭するためには
「教員の働き方改革」と新学習指導要領・観点別学習状況の評価の理念に基づく適正な学習評価を一体にして捉え、その取組みを推進するためには、高大接続改革、とりわけ「大学入学者選抜改革」の力強い推進が必須です
私は、教科書の副読本、授業プリントから出題する「単元テスト」の実施と(定期考査の作問ではなく、単元テストの作成)、年に1回若しくは2回設定する「パフォーマンス課題」により「思考・判断断・表現」評価の6割と「主体的に学習に取り組む態度」評価の7割、「知識・技能」評価の3割を一体的に評価することを提言しました
例えば、3学期制では年5回の定期考査で学習評価を行う代わりに、単元テストと年1回(ないし2回)のパフォーマンス課題等で主な評価をする
これで大学入試に耐えうる学力が培われるのか
しかし、私が提起している学習評価、その対象となる学びは、そもそも高大接続改革、高校教育改革で示されている理念そのものです
『授業が変わる 学習評価深化論』において、京都大学 石井 英真 准教授は、
「物事の意味を考えたり関連付けたりしながら学ぶ姿勢の弱まりは、受験勉強としても非効率と言えます。また、大学入学までの受験勉強が「学びのピーク」になって、その後に学ばなくなることは、転職が当たり前の、変化する社会においてリスクを負うことになります。社会への関心をもって学び続けることこそ、変化への一番の備えなのです。(p.29)」
と述べられています
話を戻すと、
旧態依然の大学入学者選抜が、高校現場の不安感を煽っているのです
大学入学共通テストは、高大接続改革、「大学入学者選抜改革」の理念に基づきよく工夫されています
私は、箕面高校でパフォーマンス課題設定に悩まれている数学科の先生に、大学入学共通テストの問題を参考にしてご覧とよく助言していました
リーダーシップを発揮して、高大接続改革、「大学入学者選抜改革」の理念を実現しようと取組んでいるのは東北大学で、大野英男総長は昨年、入試の一般選抜について「全て総合型選抜へ移行したい」と表明されています。東北大は、「総合型選抜(旧AO入試)」入学定員の30%も達成しています
平成27年9月14日、一般社団法人 国立大学協会 は、国立大学の将来ビジョンに関するアクションプラン 概要を公表しました
○確かな学力とともに多様な資質を持った高等学校・高等専門学校卒業者の受入
(例)入試改革の推進と推薦入試、AO入試、国際バカロレア入試等の拡大
その、「国立大学の将来ビジョンに関するアクションプラン 工程表」では、次のように目標を掲げています
第3期中期目標期間(H28~H33)
入試改革:推薦入試、AO入試、国際バカロレア入試等の拡大(入学定員の30%を目標)
個別入試における面接、調査書の活用等(準備から実施へ)
昨年度(令和5年度入試)における京阪神の推薦入試、AO入試、国際バカロレア入試等の拡大(入学定員の30%を目標)状況は
京都大学 6.09% 大阪大学 11.16% 神戸大学 9.05% (石田調べ)
関西においては、京阪神が先陣を切ってくれないと高校現場の不安感は解消されず、高大接続改革、高校教育改革の理念の実現は進みません
東北大を見倣った高大接続改革、「大学入学者選抜改革」の理念実現も重要なファクターであることを申し添えておきます
中央教育審議会 質の高い教師の確保特別部会(第8回)で示された「教職員配置の在り方等に関する論点」各論には、
○学級数等に応じて算定される基礎定数に比べて、様々な政策目的の下、地域や学校、子どもたちの課題や実状等に応じて、柔軟に配置することが可能な加配定数の意義や在り方等についてどのように考えるか
が追記されています
「教員の働き方改革」は待ったなし、です
教職員定数が増えれば、授業時数や校務分掌校務が減じられますので、教職員にゆとりができ、生徒と向き合える時間も確保され、定時退勤できる教職員も増加することが容易に想像できます
しかし、法改正や制度設計、財源確保の議論を待っていられません
本論の提言について、私は、令和5年9月「教員の働き方改革と一体にした授業改善をめざすカリキュラムマネジメントについて(1)」より論じ提起してきました
それは、新学習指導要領完成年度を迎える令和6年度こそ実現の好機だと捉えているからです
大学入試では、大きな影響を与えるような変更を行う場合に、2年前に予めの予告を公表することになっています
令和6年度入学生が大学等 高等教育学校を受験する高校3年次の2年前に新学習指導要領に基づく学習評価方法を生徒・保護者に予め予告する必要があるからです
6回に亘り連載した「教員の働き方改革への提言」は今回で最終回となります
次回からは、「コロナ禍と高校生」について検証していきます
現場では何が起こっていたのか
それを検証することは
コロナ禍の4年間、大阪府立高校 校長を務めていた者としての責務だと考えています
コロナ禍 奪われた高校生の生活、青春
生起するであろう次のパンデミックに備えるためにも
何かのきっかけで、現場の生徒たちや先生方が幸せになっていくような議論が拡がればと願います
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします
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