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国内主要自動車メーカー6社のCASEに関する取り組み

1. はじめに

2016年パリモーターショーでメルセデスベンツが中長期戦略として掲げたCASE。Connected(コネクティッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリングとサービス)、Electric(電動化)を意味し、自動車業界の今後の方向性を示す言葉として使われています。
CASEへの潮流が生まれてから、自動車メーカー各社もCASEに基づいた戦略を様々に打ち出しています。この記事では、日本自動車メーカー主要6社を対象に、各社のCASEに関する取り組みを見ていきます。

※CASEについて知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
自動車の未来:CASEって何?

  • トヨタ自動車株式会社(以下トヨタ)
  • スズキ株式会社(以下スズキ)
  • 本田技研工業株式会社(以下ホンダ)
  • 日産自動車株式会社(以下日産)
  • マツダ株式会社(以下マツダ)
  • 株式会社SUBARU(以下スバル)
※メーカー記載順序は2021年国内新車販売台数に基づく

2. トヨタのCASEへの取り組み

2.1 概要

トヨタはモビリティに関わるあらゆるサービスを提供し多様なニーズに応えることのできる「モビリティカンパニー」として、「未来のモビリティ社会」の実現に取り組んでいます。そして、CASEへの取り組みも高度に、多方面に展開しています。

2.2 コネクティッド

2.2.1 コネクティッドサービス「T-Connect」「My TOYOTA+」
トヨタ自動車とトヨタコネクティッドが構築したオープンプラットフォームであるモビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)の基、トヨタのコネクティッドサービス「T-Connect」が提供されています。T-Connectで提供されるサービスは大きく三種類に分類され、緊急時のオペレーター機能などの「安心・安全」、リモートの車の操作などの「快適」、エージェント機能(ナビによる目的地や情報の検索)などの「緊急時のオペレーター機能などの「安心・安全」、リモートの車の操作などの「快適」、エージェント機能(ナビによる目的地や情報の検索)などの「便利」が存在します。
T-Connect契約者向けのスマートフォンアプリである「My TOYOTA+」は車に関する情報の確認や操作、車載ナビとの連携機能が利用可能です。
また、保険会社などのサービス提供企業がMSPFを利用して車両の情報と連携することにより、様々なサービスが展開されています。

2.2.2 コネクティッド・シティ「Woven City」
2020年1月に開催されたCES2020にて、トヨタは人々の暮らしを支えるあらゆるモノやサービスがつながる実証都市「コネクティッド・シティ」のプロジェクト概要を発表しました。静岡県にある東富士工場の跡地を利用し、約70.8万平方メートルのエリアで街づくりをするというものです。
実証都市は「Woven City(ウーブン・シティ)」と命名され、ロボット・AI・自動運転・MaaS・パーソナルモビリティ・スマートホームといった先端技術を人々のリアルな生活環境の中に導入・検証出来る実験都市を新たに作り上げることを目標にしています。将来的にはトヨタの従業員を含む2000人以上が暮らし、社会課題の解決に向けた発明がタイムリーに生み出せる環境を目指しているとのことです。

2.3 自動運転

2.3.1 自動運転の考え方「Mobility Teammate Concept」、予防安全と自動運転に対するトヨタ独自のアプローチ「トヨタガーディアン」と「トヨタショーファー」
現在、トヨタは「Mobility Teammate Concept」という考え方に基づいて研究開発を進めています。このコンセプトは、人とクルマが同じ目的で、ある時は見守り、ある時は助け合う、気持ちが通った仲間(パートナー)のような関係を築くトヨタ独自の自動運転の考え方です。
トヨタは、「トヨタガーディアン」と「トヨタショーファー」の2種類のアプローチで、予防安全と自動運転システムを開発しています。
「ショーファー」は車両が自律走行できるようになることを目指し、究極的には、人間による監視や緊急時の操作がなくても運転できる状態を目標としています。このアプローチによって、年齢や心身の状態、その他の理由で現在運転できない人にも移動の自由を提供します。
「ガーディアン」は、「ショーファー」と同様の基盤技術を使用して開発されています。ドライバーの能力に取って代わるのではなく、拡充・強化することで、安全性を向上させるように設計されています。トヨタや他社によって開発された、レベル4およびレベル5の自動運転システムと組み合わせ、安全性と品質を向上させるショーファー型システムのバックアップとしても機能し、別のシステムに重ね合わせることで、システム障害の可能性を低くすることを目指しています。

2.3.2 自動運転モビリティサービス「Autono-MaaS」と自動運転EV「e-Palette」
「Autono-MaaS」は、「Autonomous Vehicle(自動運転車)」と「MaaS(モビリティサービス)」を融合させた、トヨタによる自動運転車を利用したモビリティサービスを示す造語です。 2018年、CES2018にて用いられたのが初出で、同時にトヨタはAutono-MaaS専用EV「e-Palette」を発表しました。e-Palette は2021年開催の東京五輪の選手村でも導入されたAutono-MaaSを体現するコンセプトカーで、電動化、コネクティッド化、自動運転化が図られています。
「e-Palette」以外でも、協業を進める米配車サービス大手のUberは、トヨタのミニバン「シエナ」をベースとした車両にガーディアンシステムとUberの自動運転システムを連携させた自動運転ライドシェア車両の開発が進められています。

2.4 シェアリング

2.4.1 カーシェアリングサービス「TOYOTA SHARE」
2019年10月、カーシェアリングサービス「TOYOTA SHARE」も全国展開を開始しました。トヨタは全国共通サービス制度を構築し、アプリ・デバイスを開発すると同時に、トヨタ販売店/トヨタレンタリース店がそれらを活用し事業を運営しています。
アプリ・デバイスの開発に関しては、専用アプリの開発に加え、スマホアプリ操作により車両の解錠施錠を可能にするSmart Key Box(SKB)やカーシェア運用に必要な車両情報(位置情報・走行距離)を取得する通信機TransLogⅡといったデバイスを開発しています。

2.4.2 新車サブスクリプションサービス「KINTO」
2019年7月に全国サービスが開始されたKINTOは、定額料金を支払うことで自動車の利用権を一定期間得られるサブスクリプションサービスです。2022年5月時点で、トヨタ車とレクサス車を選択できる「KINTO ONE」と、レクサス車限定の「KINTO for LEXUS」が提供されています。トヨタ車は3/5/7年間、レクサス車は3年間の契約期間となります。
KINTOの提供するサービス内容には、車両代金、KINTO所定のオプション(装備品)代金、登録諸費用、自動車税環境性能割、契約期間中の各種税金・保険(自動車税種別割、重量税、自賠責保険料、自動車保険(任意保険)料)、メンテナンス費用(点検、故障修理等)、車検費用が含まれます。
※本稿においては、自動車のサブスクリプションサービスにおける車の所有者はサービスの提供元であり、契約解消後は自動車の返却の選択が存在するという点から「Shared&Service」に分類しています。

2.4.3 マルチモーダルモビリティサービス「My Route」
2018年10月、マルチモーダルモビリティサービス「my route(マイルート)」が福岡県で開始されました。マルチモーダルモビリティサービスとは、複数の交通機関の連携を通じて、利用者のニーズに合わせた効率的な移動を提供するサービスで、my routeでは、専用アプリによってバス・電車・タクシー・サイクルシェア・レンタカーなどを組み合わせて移動ルートを検索し、必要に応じて予約・決済まで行うことができます。
北九州市、熊本県水俣市、神奈川県横浜市にエリアを拡大しており、今後も宮崎県宮崎市や日南市をはじめ順次全国展開を進めていく予定です。
※本稿においては、モビリティサービスを全体的に包括する概念としてMaaSを用い、またMaaSプラットフォームを経由したサービスを「Shared&Service」として取り扱っています。

2.4.4 モビリティの課題解決に取り組むモネ・テクノロジーズ
2018年にソフトバンクと設立した「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)」が様々なサービスの創出や実装を目指し横の連携を進めています。
業界・業種の垣根を越えてモビリティイノベーションを実現する「MONETコンソーシアム」には2020年8月時点で、幅広い業種や研究機関など606社が加盟しています。
ヘルスケア大手のフィリップスジャパンが長野県伊那市と「医療×MaaS」の実証を行う例や、三菱地所がオンデマンド通勤シャトルの実証を行う例など具体的な取り組みも進められており、今後も多くの企業や自治体などの参加のもと、モビリティサービスの可能性をどんどん広げていくと考えられます。

2.5 電動化

2.5.1 トヨタのEVへの取り組み方針
2021年12月14日、トヨタは「バッテリーEV戦略に関する説明会」を開催し、2035年までの電気自動車(EV)に関する方針を発表しました。 内容としては、2030年までに世界のバッテリーEV販売台数を年間350万台、またレクサスブランドでは2035年までにEVを100%にすることを目指すというもので、そのために、2030年までにEV関連に4兆円を投資します。EVに最後まで積極とは言えない姿勢でしたが、今回の発表では、EVに大きく舵を切ったとも解釈できます。
ただし、同時にハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車についてはさらに4兆円の投資を行うと発表しています。TOYOTAのBEVは唯一の回答ではなく、水素自動車など他の新エネルギー車の普及にも力を入れようとする姿勢も感じ取れます。

3. スズキのCASEへの取り組み

3.1 概要

2019年、CASEの対応に際してTOYOTAと資本提携し、対応を推進しています。2021年2月24日に発表された中期経営計画においてはCASEへ対応が遅れていることを認識し、「小さく・少なく・軽く・短く・美しく」をモットーとし、主にコンパクトカー領域でのCASE対応の取り組みを加速しています。

3.2コネクティッド

3.2.1 コネクテッドセンターの立ち上げ
2019年1月、スズキは「コネクテッドセンター」を新設しました。「コネクティッド」の研究・運用にさらにフォーカスして取り組んでいくために設けられたのがコネクテッドセンターで、自動車から取得されるデータを収集・分析して、ユーザーがより快適・安全に移動できるクルマづくりに活かすことや、新たな事業創出や商品展開へと繋げていくことを目的としています。

3.2.2 コネクティッドサービス「スズキコネクト」を開始
2021年12月、スズキはコネクティッドサービス「スズキコネクト」を開始しました。スズキコネクトは、オペレーターサービスやスマートフォンのアプリによる「安心」の提供を標榜しています。具体的な機能としては、事故や緊急時に消防・警察への通報をサポートする「スズキ緊急通報(ヘルプネット)」、車両に発生したトラブル解消をオペレーターがサポートする「スズキトラブルサポート」、遠隔でのエアコンなどのリモート操作や駐車位置、運転履歴などが確認できる「スズキコネクトアプリ」で構成されています。
スズキコネクトアプリでは、駐車位置の確認や離れた場所からのエアコン操作ができるほか、ドアロックのし忘れやハザードランプの消し忘れをスマートフォンに通知し、車両に戻ることなく操作ができます。また、ハザードランプの点滅操作や駐車位置を示したURLも家族や友人に共有可能です。さらに、過去の運転時間、走行距離、平均燃費、急発進、急ブレーキの回数や場所、運転開始時や終了時の場所をスマートフォンに表示し、自分の運転を振り返ることが可能です。

3.2.3 「Commercial Japan Partnership」プロジェクトに参画
2021年7月、スズキとダイハツは、軽商用事業でCASE普及に向け、商用事業プロジェクト「Commercial Japan Partnership(CJP)」に参画すると発表しました。
CJPは、いすゞ自動車、日野自動車、トヨタ自動車が今年4月に立ち上げた商用事業プロジェクトで、いすゞ自動車と日野自動車が培ってきた商用事業基盤に、トヨタのCASE技術を組み合わせることで、CASEの社会実装・普及に向けたスピードを加速し、輸送業が抱える課題の解決やカーボンニュートラル社会の実現に貢献することを目指しています。
CJPにスズキ・ダイハツが加わることで、協業体制が軽自動車まで拡大し、物流の大動脈(トラック物流)から毛細血管(軽商用車)までつながるコネクティッド基盤構築による物流効率化を図ります。また、スズキ・ダイハツの良品廉価なものづくりの力とトヨタのCASE技術を生かして、廉価な先進安全技術や電動化の普及に向けた取り組みを一緒に進めていきます。

3.3 自動運転

3.3.1 浜松自動運転やらまいかプロジェクト
浜松市は、ソフトバンク株式会社※1子会社の自動運転開発企業BOLDLY株式会社※2やスズキ、遠州鉄道株式会社※3と自動運転に関する連携協定を締結しています。「浜松自動運転やらまいかプロジェクト」と題したこの事業では、自動運転技術を活用したスマートモビリティサービスの事業化に取り組み、交通課題の解決や地域や産業の発展に貢献していくことを目指しています。
浜松市の交通課題を解決し、持続可能な公共交通のあり方を探るため、将来の自動運転の実用化を見据えた車両の予約・運行管理システムの検証を実施しています。

出典:浜松自動運転やらまいかプロジェクト第2回実証実験結果報告書

※1 ソフトバンク株式会社:https://www.softbank.jp/corp/aboutus/profile/
※2 BOLDLY株式会社:https://www.softbank.jp/drive/company/
※3 遠州鉄道株式会社:https://www.entetsu.co.jp/company/profile/profile.html

3.4 シェアリング

3.4.1 中古車サブスクリプションサービス「スズキ定額マイカー」
2022年1月、月額定額で利用できる中古車のサブスクリプションサービス「スズキ定額マイカー」を開始しました。
スズキ定額マイカーは、車をもっと気軽に利用してもらいたいという思いから生まれた、税金や自動車保険料を含めて月額2万9000円からスズキの中古車を利用できるサブスクリプションサービスです。
スズキは、予防安全技術「スズキ セーフティ サポート」を搭載した高年式の中古車を取り揃え、契約期間を6か月間とすることで、ユーザーにシンプルで気軽に利用できるようにしています。また、申し込みから契約、登録手続きまでを専用サイト、または郵便を用いた非対面形式で完結することで、時代の変化に対応したサービスとなっています。

3.4.2 中古車カーシェア「Patto(パット)」
スズキと丸紅株式会社※4、株式会社スマートバリュー※5の3社は、カーシェアリングサービス「Patto(パット)」の実証実験を2月22日より1年間、大阪府豊中市周辺エリアで実施しています。
Patto(パット)」は、「普段使いができる気軽なクルマ」をコンセプトとした、地域に寄り添ったカーシェアリングサービスです。急な雨や荷物の多いときなど、「今日クルマを利用したい。近くにクルマがあったらいいのにな」といったユーザーの声に応えるカーシェアとして、スズキアリーナ豊中や提携駐車場など大阪府豊中市周辺エリアにて展開されています。
※4 丸紅株式会社:https://www.marubeni.com/jp/
※5 株式会社スマートバリュー:https://www.smartvalue.ad.jp/

3.5 電動化

3.5.1 スズキのEVへの取り組み方針
2021年2月に発表した新中期経営計画において、今後5年間の研究開発に1兆円を投資し、2025年までに電動化技術を集中的に開発する計画で、2025年までに国内で軽自動車サイズの電気自動車を投入する予定です。
EV開発では、トヨタとの共同開発を活用し、インド市場に、2025年までにストロングハイブイリッド車とEVを投入、国内ではCJPプロジェクトで商用軽EVを開発、乗用軽自動車にも展開し、実質負担額を100万台に抑えた軽自動車EVを2025年までに投入する予定です。

4. ホンダのCASEへの取り組み

4.1 概要

ホンダの将来の技術開発について発表する「Honda Meeting 2019」において語られたホンダ流のCASEとは、コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化に加え、サービスとエネルギーを加えた「HONDA・CASE」であるとのことです。
HONDA・CASEをベースにエネルギーの社会循環を形成するという大きな構想で、足下のパーソナルカーから移動の自由の可能性を広げるシュアリングや自動運転などのモビリティサービス、そして4輪以外の移動体も連携する社会を想定し、多様なエネルギー技術を活用したスマートシティを作ることで社会に貢献することを目指しています。

4.2 コネクティッド

4.2.1コネクティッドサービス「Honda Total Care プレミアム」
Honda Total Care プレミアムは、Honda車専用通信機を含む車載通信モジュール「Honda CONNECT」を通じて、お客様のカーライフをより安心・快適にするホンダのコネクティッドサービスです。
Honda Total Care プレミアムでは、進化したHonda Total Care緊急サポートセンターがユーザーに24時間365日、より安心・安全なサービスを提供しています。また、通信を通して新しい地図に自動更新する自動地図更新サービスや、車内Wi-Fi機能など快適・便利なサービスも提供しています。スマートフォンアプリとしては、コネクティッドサービスをスマートフォンで扱う「Honda Total Care」と、操作機能を持つ「Hondaリモート操作」の2つに分かれています。

4.2.2 Google と車載向けコネクティッドサービスで協力
ホンダと Google LLC(Google)※6は、Google の車載向けコネクティッドサービスで協力し、ホンダの2022年後半に北米で発売する新型車に搭載を開始し、その後、順次グローバルに展開していく予定です。
ホンダと Google は、2015年から自動車業界全体で Androidプラットフォームの自動車への導入に向けて協力してきました。その成果として、2016年発売のAccordより「Android Auto」の搭載を開始し、スマートフォン機能をドライバー向けに最適化させることで、安全かつ快適に利用できるUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供してきました。
主な機能としては、「Google アシスタント」による音声アシスタント、「Google マップ」によるナビゲーション、「Google Play」による車載用アプリケーションが提供されます。
※6 Google LLC:https://www.google.com/

4.3 自動運転

4.3.1 日本で唯一自動運転レベル3に成功
2020年11月、ホンダは自動運転レベル3 型式指定を国土交通省から取得し、2021年3月には「自動運行装置」であるトラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)を実現したHonda SENSING Eliteとそれを搭載する新型LEGENDを発表しました。
車両制御においては3次元の高精度地図や、全球測位衛星システム(GNSS)の情報を用いて、自車の位置や道路状況を把握し、多数の外界認識用センサーで周囲360°を検知しながら、車内のモニタリングカメラでドライバーの状態を見守ります。こうしてさまざまな情報をもとにメインECUが認知・予測・判断を適切に行い、アクセル、ブレーキ、ステアリングを高度に制御して上質でスムーズな運転操作を支援します。
システム開発においては安全性・信頼性を最も重視し、約1,000万通りのシミュレーションを重ね、同時にテスト車両を用いて実証実験を実施しました。また、いずれかのデバイスに不具合が生じた場合の安全性・信頼性にも配慮し、冗長設計が取り入れられています。

4.3.2 世界でも実証実験を展開
ホンダは、自動運転システムのグローバル展開に向けて、日本以外でも実証実験を展開しています。中国では、中国政府が定める自動運転技術推進企業である百度(バイドゥ)※7と中国独自の地図及びその応用技術の共同研究を実施しています。また、AI技術に関してSenseTime Group Limited(sensetime社)※8との共同開発を推進しています。欧州では、自動運転に対する受容性検証を目的とするL3Pilotというコンソーシアムに参画し、実証実験を行っています。さらに北米では先端研究の拠点であるHRI(Honda Research Institute)USを主体に、AI技術の自動運転への活用について先進的研究を実施しています。高速道自動運転技術についても、実証実験の準備を進めています。
※7 百度:https://www.baidu.com/
※8 SenseTime Group Limited:https://www.sensetime.com/en

4.4 シェアリング

4.4.1 中古車サブスクリプションサービス「Honda Monthly Owner」
ホンダは車のサブスクリプションサービスとして、中古車サブスクリプションサービス「Honda Monthly Owner」、新車サブスクリプションサービス「楽らくまるごとプラン(略称・楽まる)」を展開しています。
「Honda Monthly Owner」は2021年1月に開始したサービスで、税金やメンテナンス費用、自動車保険料などがワンパックで、最短1カ月から最長11カ月まで、定額でホンダの中古車を利用できるサブスクリプションサービスです。利用用途は、クルマを保有する生活の体験や、買い替え検討を目的とした「試乗」が多く、そのほか、「通勤・送迎」、ウインタースポーツなど季節性のある「趣味」といった、多様な期間限定の用途が多いとのこと。また、コロナ禍における移動ニーズの高まりを受け、公共交通機関やカーシェアリングサービスに代わる移動手段として利用されることもあるそうです。

4.4.2 新車サブスクリプションサービス「楽らくまるごとプラン」
「楽らくまるごとプラン(略称・楽まる)」は、2021年5月に開始したサービスで、ユーザーの好きな車種(新車)を月額定額で使用可能な金融商品です。車両代に加え、契約期間中のメンテナンス、延長保証、税金、自動車保険(任意加入)が全て月額料金に含まれる商品となっています。契約期間は、3年・5年・7年より選択することができ、契約期間中の中途解約や買取も可能です。

4.5 電動化

4.5.1 ホンダのEVへの取り組み方針
2022年4月、ホンダは「Honda四輪電動ビジネス説明会」と題した記者説明会を行いました。2030年にEVの年間生産台数の目標を200万台以上としています。ホンダの年間販売台数が450万~500万台であると考えると、200万台はその40~45%となります。
また、同発表では今後10年の資源投資として、電動化・ソフトウエア領域の研究開発費に約3.5兆円もの予算を投じる予定とのことです。

4.5.2 ソニーとホンダのEV開発
2022年3月、ソニーとホンダは両社で合弁会社を設立し、新会社を通じEVを共同開発・販売し、モビリティ向けサービスの提供と併せて事業化していく意向を確認した基本合意書を締結しました。
ホンダが長年培ってきたモビリティの開発力、車体製造の技術やアフターサービス運営の実績と、ソニーが保有するイメージング・センシング、通信、ネットワーク、各種エンタテインメント技術の開発・運営の実績を持ち寄り、利用者や環境に寄り添い進化を続ける新しい時代のモビリティとサービスの実現を目指します。
EV車両の初期モデルの販売開始は、2025年を想定しています。

5. 日産のCASEへの取り組み

5.1 概要

日産のCASE戦略は、外部資源を使う傾向が強いといえます。仏ルノー・三菱自動車とのアライアンスに加え、IT企業との連携により、CASE対応を進めています。

5.2 コネクティッド

5.2.1 コネクティッドサービス「NissanConnectサービス」「NissanConnectEV」
日産はコネクティッドサービスとして、「NissanConnect サービス」を展開しています。
コネクティッドアプリとしては「NissanConnectサービス」と、EVオーナー向けの「NissanConnectEV」の2つに分かれています。「NissanConnectサービス」は車のリモートコントロールなど車から離れたところで操作・管理が出来るアプリです。「NissanConnect EVアプリは」、EVオーナー向けのアプリで、車のリモートコントロールや充電スポット満空情報などの多彩なサービスが利用可能です。

5.3 自動運転

5.3.1 自動運転コンセプト「Pro PILOT(プロパイロット)2.0」
日産自動車は、自動運転レベル2の技術を「Pro PILOT(プロパイロット)2.0」として、一部市販車に搭載しています。高速道路でのハンズオフ運転を可能にする機能で、2019年9月から搭載がスタートしています。
車両のカメラやレーダー、スキャナーのほか、HDマップ(3D高精度地図データ)などを活用して車両の周囲の情報と自車の正確な位置を把握することにより、ハンズオフでの滑らかな運転が可能になるとのことです。

5.3.2 ウェイモとの自動運転技術の提携
2019年6月、ルノー、日産とウェイモ(Waymo)※9は無人自動運転を用いたモビリティサービスの検討に関する独占契約を締結したと発表しました。3社は各市場の分析や商業・法規面の課題などを共同で調査し、検討を進めていくとのことです。まずルノーと日産自動車それぞれのホームマーケットであるフランスと日本でその可能性について検討を実施し、その後、中国を除く他の市場への検討に移る予定です
※9 ウェイモ:https://waymo.com

5.4 シェアリング

5.4.1 新車サブスクリプションサービス「NISSAN ClickMobi」
「NISSAN ClickMobi」は、インターネット上で新車を注文し、車両本体価格、自賠責保険、また点検や車検、税金などを、まとめて月々定額で支払うことができるクルマの購入・利用サービスです。さらに、自宅にクルマを納車するサービスや、「NISSAN e-シェアモビ」と連動したオンラインの試乗予約なども組み合わせることも可能です。2020年3月より北海道札幌地区で始動し、全国展開されました。

5.4.2 EVカーシェア「NISSAN e-シェアモビ」
2018年1月、日産は自社の経営方針である「日産インテリジェント・モビリティ」の取り組みを特徴としたカーシェアリングサービス、「NISSAN e-シェアモビ」を開始しました。
「NISSAN e-シェアモビ」は、日産のEVとe-POWER※10のみを使ったカーシェアリングサービスで、電気自動車ならではのドライビングの楽しさと快適さを提供する電動化技術と、自動運転技術や自動駐車機能などの知能化技術を体感できるカーシェアリングサービスです。
また、免許証がそのまま会員カードに、15分単位から利用できる、利用時の距離料金が追加発生しないことなど気軽に利用できるように工夫されています。
※10 e-POWERとは、日産が開発するハイブリッドシステムで、ガソリンエンジンは発電のみ、走行はすべて電気モーターによる電動パワートレインです。

5.4.3 オンデマンド配車サービス「Easy Ride」
日産は株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)※11とともに、無人運転車によるオンデマンド配車サービス「Easy Ride(イージーライド)」の開発や実証実験に取り組んでいます。「Easy Ride」は、「もっと自由な移動を」をコンセプトに誰でも好きな場所から行きたい場所へ自由に移動できるサービスとして開発中の取り組みで、スマートフォンアプリから自動運転車を呼び出し、乗り込んでからは車内にある「GO」ボタンを押すだけで目的へと向かうことができます。
2018年2月より横浜みなとみらい地区で取り組んできた「Easy Ride」は、2021年9月より第3回目となる実証実験が行われました。
※11 株式会社ディー・エヌ・エー:https://dena.com/jp/

5.5 電動化

5.5.1 日産のEVの方針
2021年11月、日産は電気自動車を中心とした電動化を戦略の中核とする長期ビジョン『Nissan Ambition 2030』を発表しました。2030年度までに電気自動車15車種を含む23車種の新型電動車を投入し、グローバルの電動車のモデルミックスを50%以上へ拡大する目標です。そのために、今後5年間で約2兆円を投資し、電動化を加速するとのことです。

5.5.2 仏ルノー・三菱自動車とのアライアンス
2021年1月に開かれたオンライン記者会見にて、日仏アライアンス3社はアライアンスロードマップを発表しました。2030年に向けて、アライアンスは電気自動車(EV)とコネクテッド・モビリティに注力し、2026年までにプラットフォームの共用化率を80%まで向上させることを目指します。また、5年間で230億ユーロ(約3兆円)の投資を計画しているとのことです。

6. マツダのCASEへの取り組み

6.1 概要

マツダは、マツダらしい「人」を主体としたアプローチで、新たなカーライフ、クルマ文化を提供することで顧客に「人生の豊かさ」を提供したいと考えており、「人間中心」という考え方に基づいた開発を進めています。
CASEへの取り組みに関しても、「運転する人に対してどのような価値をもたらすのか」「人が本来持つ能力を最大限発揮してもらうにはどうすればいいのか」という発想から、あらゆる仕様の決定を進めています。

6.2 コネクティッド

6.2.1 コネクティッドサービス「マツダ コネクティッドサービス」
2019年、マツダは「マツダ コネクティッドサービス」とスマートフォン向けアプリ「MyMazda」をリリースしました。現在搭載されている主な機能としては、安心・安全(コンディションモニター、バークアラーム通知)、便利(うっかり通知、リモートコントロール、カーファインダー)、家にいても使える機能(リモートモニター、目的地送信)があげられます。また、機能によって、3年間や10年間の無料期間を設けられ、エンドーユーザーからのコネクティッドサービス利用を促進しています。

6.3 自動運転

6.3.1 自動運転コンセプト「CO-PILOT」
マツダの6.3.1. 自動運転コンセプト「CO-PILOT(コパイロット、航空機の副操縦士を指す)」は、運転行為自体は意義があり、「運動」と同様な価値があるとの考えに由来します。
マツダは人間中心の考えの元、自動運転技術に取り組んでおり、あくまで人間の運転を前提としながら事故削減を目指しています。具体的には、運転手の不注意や異常を検知される際に、システムが車両を制御し、安全な場所に車を退避させます。将来的には脳機能低下を予測する技術の実用化を目指すとのことです。

6.4 シェアリング

6.4.1 広島県におけるライドシェアの実証実験
2018年、マツダと広島県、広島県三次市の3者はライドシェアサービスの実証実験を始めたと正式発表しました。高齢者らが電話やスマートフォンのアプリで依頼すると、複数の依頼者を乗り合いで駅や診療所、スーパーなどにドライバーが送迎してくれる仕組みで、過疎地で移動に困る「交通弱者」の問題を解消して地域活性化を図る目的です。初めてライドシェアに取り組むマツダが配車を予約する専用アプリを開発、車を無償提供しました。

出典:実装に向けた先進的技術やデータを活用したスマートシティの実証調査(その 12)報告書

6.5 電動化

6.5.1 マツダのEVの方針
2021年6月、マツダは技術開発の長期ビジョン「サステイナブル Zoom-Zoom宣言2030」を開き、2030年にEV(電気自動車)の販売比率を25%とするための電動化戦略を発表しました。

7. スバルのCASEへの取り組み

7.1 概要

スバルはCASEの流れが加速するなかでも、「SUBARUらしさ」をより際立たせていくことを宣言しています。
「すべてを自社で開発するのではなく、限られた経営資源を、強みと特長を伸ばすべき分野に選択・集中し、お客様に認めて頂ける、他社にはない独自の「付加価値」創出に向けた活動を進めていく」方針です。

7.2 コネクティッド

7.2.1 コネクティッドサービス「STARLINK」「マイスバル」
スバルのコネクティッドサービス「SUBARU STARLINK」は、緊急通報、SOSコール、ロードサービスの手配、故障・盗難装置作動・リコール通知機能を備えています。コネクティッドアプリ「マイスバル」では、スバルからのお知らせや車の基本情報が確認でき、会員限定サービス、緊急時の連絡などが利用可能です。車のリアルタイムの状態確認やリモートからの操作などの機能がなく、将来的に機能の拡張が期待されます。

7.3自動運転

7.3.1 ADAS「アイサイトX」
スバルは2020年、自動車専用道路においてハンズオフ運転を可能にする最新ADAS「アイサイトX」の実装を開始しました。GPSや準天頂衛星「みちびき」などからの位置情報と3D高精度地図データを組み合わせ、車線単位の高精度な制御を実現しました。
準天頂衛星「みちびき」やGPSがクルマの位置を正確にとらえ、さらに3D高精度地図データがその先の道路を把握。快適なレーンキープを実現しながら、初めてで知らない道でもカーブ前で減速したり、疲れる渋滞時のハンズオフ走行をアシストしたりと、高速道路における安全運転をサポートします。

7.4 シェアリング

7.4.1 中古車サブスクリプションサービス「SUBARU サブスクプラン」
2021年3月、運転支援システム「アイサイト」付きのクルマを月額定額制で提供するサブスクリプションサービス「SUBARU サブスクプラン」を中古車で開始しています。
「SUBARU サブスクプラン」は、税金や自動車保険料、メンテナンス費用を含めて月額4万円程度からアイサイト付きのSUBARU車に乗ることが出来るサブスクリプションサービスです。ステレオカメラを使った独自の運転支援システム「アイサイト」を搭載するSUBARU車の「安心と愉しさ」を、これまで以上に身近なものとしてお客様に提供する狙いです。
申し込みはインターネットより受け付け、SUBARU販売店が車両の引き渡しとメンテナンスを含めたサービスを担当します。現時点(2022年5月)では、「SUBARU サブスクプラン」は神奈川県と新潟県のみサービスを提供しています。

7.5 電動化

7.5.1 スバルのEVの方針
2021年5月の中期経営ビジョン進捗報告において、2030年までに全世界販売台数の40%以上をBEVもしくはHVにする目標を立てています。また、2030年代前半には、生産・販売するすべてのスバル車に電動技術の搭載を目指しています。
その第一弾として、トヨタ自動車と共同開発するSUVモデルのEV SOLTERRA(ソルテラ)を2022年からグローバル展開する計画です。両社で共同開発したEV専用プラットフォーム「e-SUBARU GLOBAL PLATFORM」を採用し、両社それぞれの強みを持ち寄ることで、EVならではの魅力を持つ「もっといいクルマ」づくりに取り組んでいます。

8. CASEの各社の比較

これまで日本国内自動車メーカー各社のCASEへの取り組みについて見てきましたが、ここではそれぞれのメーカーのCASEの各領域における取り組みをまとめていきたいと思います。

9. 最後に

100年に一度の大変革の時代と言われる自動車業界で、CASEはその方向性を示す重要なキーワードとして、多くの議論・検討がなされています。
今回各社のCASEに関する取り組みを見てきましたが、各社異なるCASE戦略が窺える結果となりました。CASEの推進の方向性はメーカーによって異なり、全方位のCASE対応をしていくメーカーもあれば、領域を絞って対応していくメーカーも存在します。
それは各領域の取り組み内容にも通じていて、たとえばコネクティッドサービス一つをとっても、そのサービスの展開の仕方や、サービス自体の内容はメーカーによって異なります。IT企業との提携に関しても、どの会社とどのように進めていくのかメーカーによって特色があり、注目点の一つです。
技術のトレンドが目まぐるしく変わる昨今、ときには技術・資本提携を行いながら自動車メーカー各社はしのぎを削っています。CASE戦略について着目することは、対象のメーカーの動向を知る有効な手段といえるでしょう。

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