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ゾンビ企業が急増中?!ゾンビ型の日本経済とは

コロナが感染症法上の5類に移行されて、5月8日で丸一年がたちました。
コロナ禍は社会にさまざまな爪痕を残しましたが、経済活動にも大打撃を与えました。

コロナ禍対策として政府の「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」などがあり、企業の倒産は抑制されていました。これは、無利子(3年間)で最大3億円を貸し出し、借り手に代わり国が利子負担。返済が滞ると公的機関の信用保証協会が肩代わりする、というような内容です。
返済負担を軽減する政府の支援策は、来月6月末で終わります。

しかし、このようなゼロゼロ融資は実質的に破綻している「ゾンビ企業」を増やした一因とも言われています。

ゾンビ企業(英語: Zombie company)とは、
経営が破綻しているにもかかわらず、金融機関や政府機関の支援によって存続している企業・会社のことである。


日本では、倒産や失業を「悪」と見なし、企業を助けるべきと考える人がとても多いです。
しかし、そのようにして無理やり延命された企業は「ゾンビ企業」となって存在続け、社会の限られたリソース(資金、人材など)をそこに留めることになってしまいます。
適切な企業に資金や人材が向かわず、社会全体の生産性低下につながります。

倒産した企業の従業員は、一時的には大変な思いをするでしょうが、別の成長産業へ再就職できます。
消費者に望まれない「ゾンビ企業」を延命することは、消費者だけでなく、その企業で働く人にとっても最終的にはマイナスになります。

今回は、このような日本のゾンビ企業(ゾンビ経済)が世界からどのように見られているのかを紹介したいと思います。
アメリカの保守主義系シンクタンク「ヘリテージ財団」の経済研究フェローでもある、PETER ST ONGE氏の2023年10月28日の記事「Our Coming Zombie Economy(ゾンビ経済がやってくる)」です。

この記事は、アメリカの経済状況の話なのですが、「アメリカもこのままでは、日本のようなゾンビ経済になる」と、日本のゾンビ企業だらけの経済について触れられています。

重要な部分を先に紹介します。

・不況時に、「政府は何とかしろ!」との声に押され、いつも政府は2つのことをしてきました。
第一に、金利をできるだけ早く、できれば永久に引き下げること。
第二に、連邦政府支出を可能な限り拡大すること
です。
しかし、これらはどちらも経済の回復を妨げるのです。

・これはまさに日本が30年来続けてきたことです。
日本は非常に大きい政府支出とゼロに近い金利によって、基本的に常に不況のシナリオを実行し続けてきました。

・(アメリカ経済は)財政赤字の拡大、歳出の増加、金利引き下げによって、貧弱な景気回復がもたらされ、ゾンビ経済が進行し、若者の将来性をつぶす日本のような社会への道を歩むことになるのです。

元の文章は以下から全文を読めます。
※PETER ST ONGE氏の記事はとても読みやすく勉強になるので、ぜひこのサイトの他の記事も御覧ください。
太字と(※訳注)は筆者です。

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Our Coming Zombie Economy
ゾンビ経済がやってくる


現在、悲痛な考えのひとつは、今の状況は悪いものですが、それでもまだ本格的な不況には突入していないというものです。そしてその最悪の不況が訪れたときには、ワシントン政府によるシナリオは、これから数十年にわたって日本型のようなゾンビ経済をもたらすかもしれません。

つまり雇用の減少、破産の急増、1千万円を越える人たちしか住めない家、朝食が贅沢品になるような食料品の価格にもかかわらず、私たちはまだのショーの本番を見ていないということです(※訳注:まだ本格的な不況という本番は訪れていないということ)。

景気後退のシナリオ
不況が本格化したとき、何が起こるかははっきりしています。
というのも、現代の政府の不況の脚本は定石となっているからです。
それは、景気回復を可能な限り遅らせ弱体化させる一連の自殺的政策です。経済を流血に追い込みながら、数十年にわたる停滞をもたらす可能性があります。

標準的な不況のストーリーはこうです。
中央銀行の金利操作によって経済が破綻すると、失業率が数百万人に急増し、アメリカ中の食料品店が、慈善事業で配給される食べものを求める人たちで満員になります。
こうなると当然、耳をつんざくような声が上がります。「政府はこの痛みを和らげるために、何かをしなければならない。何でもしなければならない!」

皮肉屋なら、これは意図的なものだと思うかもしれません。
痛みを十分にひどくすれば、人々は政府に命令されることを懇願するでしょう。

その時点で、危機産業複合体は行動を開始します。
まずはスケープゴート化です。不況が突然やってきたかのように装うか、誰もそれを信じないのであれば、どんな見出しでもいいので、サプライチェーンのせいだとか、オンラインショッピングのやりすぎだとか、貪欲な食料品店だとか、古典的な "投機家 "のせいだと喧伝するのです。

残念なことに、このスケープゴート化は単なるお膳立てに過ぎません。というのも、貪欲な食料品店やその他もろもろから手を引いて経済を回復させる代わりに、政府はホワイトハウスのパーティーでコカイン中毒になるかのように「政府は何とかしろ」という声に突進するからです。

そして大恐慌以来、「何とかする」とは2つのことを意味してきました。
第一に、金利をできるだけ早く、できれば永久に引き下げること。
第二に、連邦政府支出を可能な限り拡大すること
です。

問題は、これらはどちらも経済の回復を妨げるということです。
実際、これらを十分に行えば、経済の回復を完全に止めてしまいます。

その理由を知るには、そもそもなぜ不況が起きているのかを考えてみれば良いでしょう。
金利が低すぎて、資金をあまりにも簡単に借りることができる状態が長く続き、「不良投資」と呼ばれるくだらないビジネスに資金を供給します。
FRBが金利を引き上げたとき、こうした不良債権は清算され始めます。そして、それらの不良債権がまとまって清算されることを不況と呼ぶのです。

その時点で、清算を加速させるのが正しいやり方です。
ゾンビのような悪質な投資案件を早くつぶし、新たな健全な企業のためにリソースを確保するのです。

つまり、FRBによるタダ同然の資金が、実際には景気回復の邪魔になるということです。FRBは悪徳投資家とその億万長者の創設者たちに命綱を投げ与えて、彼らに安い融資で何兆ドルもの資源を独占させ続けているのです。

その一方で、政府支出はさらに増え続け、何兆ドルもの資金に加えて、生産部門からさらに多くの資金を奪います。
例えば、人種差別主義者の高速道路を再建(※訳注:かつてアメリカの高速道路は黒人住居を破壊しつつ建設された)するために、工場の建設に使えたはずの建設労働者と鉄鋼を使うのです。

要するに、生産的経済は景気循環の犠牲になり、そして今は不景気の中で、資源を取り上げられて飢餓状態にあります。

ちなみに、これはまさに日本が30年来続けてきたことです。
日本は非常に大きい政府支出とゼロに近い金利によって、基本的に常に不況のシナリオを実行し続けてきました。

このため、長い間苦しんできた日本経済は、低迷に這いつくばってきた一方で、130兆円もの公的債務を積み上げるという、ゾンビ経済の30年間を送ることになりました。これはGDPのおよそ264%に相当し、アメリカ換算では62兆ドルに相当します。

■忘れられた恐慌
この不況による絞めつけは、これから大いに話題となるでしょう。
1921年の「忘れられた恐慌」に関するジム・グラントによる素晴らしい2014年の本があります。

1921年が興味深いのは、アメリカ政府が実際に昔ながらの方法で不況を解決した最後の例だからです。グラントが言うように、"政府の薬に頼らない最後の不況"です。

1921年、ワシントンは実際に政府支出を削減し、金利を引き上げました。そのアイデアは、悪いリンゴ(不良投資)を素早く粛清する一方で、政府の支出を減らし、資源と人員を景気回復のために解放することでした。

そして、まさにその通りになりました。
過去140年間で最悪のデフレを含め、多くの尺度で大恐慌よりもひどい暴落の後、1年以内に米国経済は轟音を立てて復活しました。
今では「狂騒の20年代」と呼ばれる成長の10年が始まったのです。

2008年の危機とは対照的です。それは世界恐慌にはほど遠かったにもかかわらす、危機前の水準を取り戻すのに4年近くかかりました。
その後、ドナルド・トランプが最終的に減税を実施し、企業の生産を再開させるまで、ほぼ10年にわたり低成長が続いたのです。
もしトランプ大統領がいなければ、私たちも日本型の失われた数十年を見ていたかもしれません。

トランプが減税で中断させたため、「失われた30年」こそありませんでしたが、日本のゾンビ経済型の借金をアメリカは確かに手に入れました。
2008年以来、国の借金はわずか15年間で25兆ドルも増えました。この借金の利子は、今後数十年にわたって赤字を拡大させ、経済にまた新たな重荷を課すことになるでしょう。


■結論
私たちは目の前でスローモーションの暴落を見ることができます。雇用、倒産、実質的な世帯収入の2桁近い減少です。
そして、私たちはワシントンがどのように対応するかを正確に知っています。
財政赤字の拡大、歳出の増加、金利引き下げによって、貧弱な景気回復がもたらされ、ゾンビ経済が進行し、若者の将来性をつぶす日本のような社会への道を歩むことになるのです。

残念なことに、ワシントンの対応は若者だけでなく、すべての人を押しつぶすでしょう。なぜなら、アメリカには日本とは違って制御不能のインフレがあり、不況を煽る赤字と金利引き下げで悪化するだけだからです。

つまり、不況が訪れたとき、ワシントンは日本を凌駕し、ゾンビ経済で若者を押し潰し、さらにインフレですべての人びとを困窮させるでしょう。

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PETER ST ONGE氏の記事の紹介は以上となります。

「財政赤字の拡大、歳出の増加、金利引き下げによって、貧弱な景気回復がもたらされ、ゾンビ経済が進行し、若者の将来性をつぶす日本のような社会への道を歩むことになるのです。」
という文章は、なかなか衝撃的ですが、海外の有識者から日本経済がどのように見られているかを知ることは、とても重要だと思います。
「日本は他の国とは違う」などと思考停止せずに、謙虚に受け止めるべきです。


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