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「オーストラリアの『戦没者の森』はワクチンによる死者を追悼している」は不正確

オーストラリアに、ワクチンで倒れた人々を追悼する「戦没者の森」があるという言説が拡散されましたが、これは不正確(ミスリーディング)です。ワクチンに反対する人達による活動で、ワクチンによる死者と科学的に証明されているわけではありません。

検証対象

「オーストラリアにある『戦没者の森(Forest of the Fallen)』は、戦死した人々ではなく、新型コロナウイルスのワクチンで倒れた人々を追悼する場所である」という言説が拡散した(例1例2)。例1のツイートは4900件以上のいいね、リツイートが2200件以上となっている(5月8日現在)。

リプライ欄には、ワクチン被害を訴える内容のツイートが並んでいる。この動画に関連して、Newsweekは「ワクチン接種に反対する団体や陰謀論者たちによるもの」だと指摘する記事を掲載している。

検証過程

拡散した例1の言説には約5分間の動画が添付されている。動画は戦没者の森という題字とともに、木々が生える草原に、ポスターつきの棒が並んだ様子が映っている。ポスターには名前や顔写真、接種したワクチンの種類が印刷されており、ワクチンによって亡くなった人を追悼しているという説明がなされている。例2の動画は2分30秒。空撮の後に同じような情景が映っており、「戦没者の森」という題字も最後に出てくる。

“Forest of the Fallen”で検索すると、これらのポスターを展示したグループのウェブサイトが見つかる。「戦没者の森」という恒久的な施設が存在するわけではなく、ワクチンが多くの薬害をもたらしていると主張するグループが設置したもので、オーストラリア各地に点在することがわかる。

オーストラリア保健省によると、オーストラリアでのワクチン接種は2023年5月4日までに6600万回以上実施された。接種後に医師または救急科を受診したと報告したのは1%未満で、2023年5月4日に公開した最新のワクチンの安全性に関する報告書には「ワクチンは、ごくまれに死に至ることがある。しかし、ワクチン接種後に発生する死亡のほとんどは、ワクチンが原因ではない」と書かれている。985件の接種後の死亡報告のうち、死因がワクチン接種に関連しているものは14件で、2022年以降、ワクチン関連の新たな死亡は確認されていない、と述べている。

動画内に映る「ワクチン犠牲者」の数とオーストラリア政府が確認したワクチンによる死亡件数は大きく乖離しており、Newsweekも「戦没者の森」で追悼される人々がワクチンの薬害によって亡くなったことは確認できない、と報じている。

また、オーストラリア退役軍人省によると、戦没者については、オーストラリアでは、同省に認定された戦没者を平等に追悼するため、国からイニシャルと苗字、職務や享年を記した銅のプレートが提供される。これは一般の墓地も記念庭園も同様で、動画の中に出てくる「戦没者の森」とは全く異なる。

判定

拡散したツイート「オーストラリアの戦没者の森では戦没者ではなく、ワクチン接種で亡くなった人を追悼している」という言説に関して、そのような施設が恒久的な形で存在しているわけではなく、また、動画に映る「ワクチン犠牲者」の数多くのポスターは、政府が確認したワクチンによる死亡件数とも乖離しており、言説は不正確(ミスリーディング)と判定した。

あとがき

新型コロナウイルスに関して、世界保健機構(WHO)は「非常事態宣言」の終了を発表し、日本政府も感染症法の位置付けが季節性インフルエンザと同じ5類に移行するなど、正常化が進んでいます。その一方で、公的機関や医療機関などが、以前ほど情報発信をしなくなった影響もあり、コロナやワクチンに関する誤情報/偽情報が再び拡大しています。

次のパンデミックに備えるためにも、引き続き正確な情報の確認を心がけましょう。
検証:住友千花
編集:古田大輔


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