【400字の独りごと】 オルソン家
オルソン家
20世紀アメリカの画家アンドリュー・ワイエスの絵画展に足を運んだ。
アンドリュー・ワイエスは30年という歳月をかけ、オルソン家の水彩画を描き続けた。オルソン家を囲む自然と、そこで慎ましく暮らす二人の姉弟、のんびりとした時間の流れを、ワイエスは飽きることなく繰り返し繰り返し描いた。
オルソン家は米国メイン州のハーソンポイントに建つ、古い大きな木造の一軒家。この土地には珍しい屋根の傾斜が急な母屋、そして納屋、ふたつの建物を結ぶ回廊で構成されている。
私はまずオルソン家の庭に茂るブルーベリーに目をやり、弟・アルヴァロの馬と友人になり、部屋の窓から吹き込んできた風を頬に感じた。
展示会も出口が近づくころには、私はすでにオルソン家の一員となっていたのだった。
そして最後の肖像画だと注釈がつけてある、姉・クリスティーナの素描画の前で、私は涙をこぼさぬよう必死に努力しなければならなかった。
(2005年5月10日)
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