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フューチャー・オブ・マインド THE FUTURE OF THE MIND / ミチオ・カク

理論物理学者カク博士が「心」の未来を語り尽くした本。執筆当時(2014年頃) の脳科学の最先端テクノロジー解説と心の未来についての話題がてんこ盛り。

 ニューロンと宇宙の構造は非常によく似ているという話がとても好きです。ふたつの画像を見比べながら時折自分の指先や身体を眺めては、脳内で宇宙旅行し始める妄想が止まりません。あ、鶏に野菜出さなくちゃ!人間の夕飯の準備もしなくては!…と意識を地球に戻すまでにしばらく時間がかかります。

 脳科学、神経科学に並々ならぬ興味があって、これまで池谷裕二氏、下條信輔氏をはじめ様々な方の著作を読んできました。その中でもこの書籍は物理学者という視点から「意識」とは何か、最先端でどういう研究がなされているかが書かれており、かつSF映画の話も交えながら、このさき人類はどこへ向かうのかというカク博士の予測も非常に興味深く、読み始めると最後までドキドキが止まらない一冊です。


 基本的な脳の仕組みから始まり、脳神経学の歴史、現代のテクノロジー(MRIや脳波計)の解説も分かりやすく書かれています。
 そして「心」とは何か、「意識」とは何かという本題に突入。現在進んでいる研究の延長上にある未来の予測は、突拍子もないお話にもかかわらず現実味があり、背筋がぞわぞわしてきます。
 寝ている人の夢を撮影する装置。リバースエンジニアリングによる脳の再現。AIロボットの倫理観。人の記憶の書き換え。地球外文明。自分の意識をコンピュータにアップロードする(そして宇宙を旅する!)、もしくは必要な能力を脳にダウンロードする技術…etc.
 人類はまだまだ脳について理解し切れていないというのに、先へ先へと進んで行くのは危険すぎると思うのですが、きっと勇敢な人たちによるtrial and errorで物事は進行していくのでしょうね。臆病な私には、これらの技術が悪用されて、支配する者が大勢の人間を機械の如く操る未来しか見えないのだけれど…カク博士はご自身の理論に基づいてわりと楽観的に捉えていらっしゃいます。

 私が1番印象に残っている分野としては、精神疾患や認知症の症状の改善、脳卒中などによる麻痺等の治療の研究。2022年現在、これらのうち幾つかは臨床試験まで進んでいることを願っています。

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