【400字の独りごと】 嘲笑をかう
嘲笑をかう
ことばが、からだの中に溜まり、澱んで、不安定になる。
吐き出してしまいたいものと、秘めておかなければならないものがごちゃ混ぜになって、うまく息ができない。
ペンを持つ手は震えている。この指先は、いま、何を書こうとしているのだろう。どんな汚い言葉を書き殴ろうとしているのだろう。
箍(たが)が外れてしまわないよう、何度も深呼吸する。
閉じたまぶたに、髪をかきむしり大声でわめく自分の姿が映る。しかし、狂気をとりかこむ世界はあまりにも穏やかで、あたたかく、闇をかき消す眩い光に眩暈を引き起こす。
目の前のグラスひとつ壊すことすらできない今の自分を、怖いものなど知らなかった昔の自分が嘲笑う。
なにを守っているのか、と。
お前はそれでも生きているのか、と。
善悪の問題ではない。どちらを棄てるのか。
ただそれだけのことを、選びとる覚悟がどうしてもできない。
(2006年7月20日)
とても不安定な時期だったのだなあと、今回読み直して思いました。そして圧倒的な熱量。指先や、服のあちらこちらを絵の具で汚しながら絵を描き殴っていた時期でもありました。
そして、いい塩梅で力が抜けた現在の、なんと生きやすいことか。
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