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【400字の独りごと】 いのししパパラッチ

 いのししパパラッチ


 我が家は山のふもとに位置している。近年いのししが頻繁に出没するようになった。
 真夜中、小さなライトを点けて読書をしていると、窓の外から彼ら(あるいは彼女ら)の気配が伝わってくる。パキパキと小枝を踏み締める音、ふんふん鳴らす荒い鼻息。灯りをつけるとすぐに逃げていってしまうので姿を捉えることができない。
 そこでカメラ撮影をしようと家族の内で盛り上がった。
 彼らが現れたことを耳で確認したあとそっと窓を開ける。気配のする方へレンズを向けてシャッターを押す。運に任せた一発勝負。フラッシュの閃光が闇夜に瞬く。しかしあまりに無謀なこの作戦は幾度となく失敗に終わった。
 それでもへこたれずに挑戦し続け数ヶ月後、ついに奇跡は起きた。
 取れた写真を見るとはっきり写っているではないか、勇ましい姿が。掃き出し窓半間の幅を優に超えている。
 これは大スクープだと私たちは笑った。パパラッチが特ダネを激写した時の気分はこんなものかもしれない。

(2006年12月5日)


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