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ジュエラーの外国人雇用について

podcast『ジュエリー法務のインクルージョン』でもおしゃべりしていますので、良ければ合わせてお聴きください。


ジュエリー関連企業は、これまでも外国からのルースの仕入れや職人として、またインバウンド需要に対応するための外国人の接客販売員など、

以前から外国人の雇用についてはかなりありふれたものだったと思います。

ただ、ヒコみづのさんなどのジュエリー専門学校などで講座をしてみると、予想していた以上に外国人留学生が非常に多いことにびっくりします。

せっかく素晴らしい才能や技術、それに日本で学んで日本語能力や母国語もできる力をもったジュエラーの卵たちがいるのに、

うまく日本で就職ができなければ、それぞれの国に帰ってしまうのはいろいろな意味でもったいないなと思います。

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雇う側としてもいろいろな手続や心配事はあると思いますが、

きちんとした準備をすれば、そんなに難しくはないということがわかります。

今回はあまり細かな入管法の手続などには立ち入らず、心構えのようなものを中心にお話します。


外国人を雇用する理由を明確にする


(すごくわかりやすかったので「最初の一冊」におすすめです)

そもそもどうして外国人を雇用するのか?

自社の成長に、どのようにその人が役割をになってくれるのか?

外国人材を雇用する理由が社内で明確になっていないと、漠然な気持ちでなんとなくはじめてみたはいいが途中で煩雑な手続がめんどくさくなって投げ出してしまう、なんてことにかねません。(特に在留許可と関わる場合、その外国人の方にとっては大問題ですので、責任をもって手続をする必要があります。)

また、実務的にも、単に安価な労働力とだけ考えると失敗の元です。

たとえば入管当局へ「留学」から「技術・人文知識・国際業務」の在留資格変更許可申請をしたところ、「技術・人文知識・国際業務の在留資格では、清掃等の現業業務はできません」として不許可通知がきた、ということにもなりかねません。


外国人の違い(文化・慣習)を理解する

(実際にあったケースのエピソードがコラムになっているのが興味深かったです。)

同著によれば、経営者側が、「あの外国人は自己中心的だ」と思うのは、「自己」ではなく「文化」に基づくことが多いとのことです。

たしかに経営者からしたら、「正月も休んだのに、忙しい年度末の2月に1週間も休みたいなんてなんて自分勝手なんだ!」となるのは、中国の春節を理解していないことからくるすれちがいかもしれません。

法律上は休暇を与える義務まではなくても、年次有給休暇などを活用することで、なるべく配慮してあげることで、モチベーションもアップし、長く働いてくれるようになるという効果も期待できるでしょう。

また、日本の文化慣習について丁寧に教えることも必要ですね。

日本語のあいまいな表現で本当に指示が伝わっているかが確認できなくて「なんでちゃんと言ったとおりにできないんだ!」となるのも指示説明不足からくるものです。

また、「○○人は~~だ。」というひとくくりにした抽象論もよくないですね。

まずは、在留資格を確認する

(Q&A形式の解説書も、自社に関係がありそうなところからつまみ食いできて便利です。)

実際に募集をかけたり採用面接をする場合にまず確認すべきは、その外国人の在留資格です。

在留資格とは、日本で一定の活動を行うことができる資格をいい、ビザとは異なります。入管法では別表第一・第二に29の在留資格が決められていて、外国人は、在留資格で定められた範囲内の活動を行うことが認められています。

まずは在留カードやパスポートなどで在留資格を確認することからスタートです。

たとえば「留学」の在留資格のまま就業させることはできませんから、数ヶ月前から在留資格の変更手続を終了した後に入社させる必要があります。

必要書類をそろえよう

在留資格の状況や、どのような業務についてもらいたいかによって、その後のフローはさまざまかわってくると思います。

(このあたりは弁護士や行政書士などと相談しながら進めることをお勧めします。)

例えば、海外に在住している方を日本に呼ぶ場合には、在留資格認定証明書の交付を受けておくことで、入国手続などが早期に進みます。

また、在留資格が「留学」の外国人大学生を卒業後に4月から就職させる内定を出すときには、12月頃から「就労」のできる在留資格に変更する在留資格変更許可申請を行う必要があります。


支援体制を整えよう

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特定技能1号の労働者を受け入れる場合には、職業生活だけでなく、日常生活や社会生活について必要な支援を行う義務があり(支援義務)、申請の段階で支援計画を作成しなければなりません。

しかし、ここで書かれている支援の内容は、日本の地域に定着し、私生活も含めて長く働きつづけられるようにというためにあるものですから、特定技能1号の場合以外でも、これを参考にして、できる範囲で支援プランを社内で作るのが良いと思います。

① 事前のガイダンス

 労働条件通知書、雇用契約書の作成だけでなく日本での活動内容や各種手続きについて対面またはビデオ通話などでわかりやすく説明をしましょう。

なお、外国人労働者向け労働条件通知書のモデル書式が厚労省のウェブサイトに公開されています。

② 出入国の際の送迎

 空港から事業所または日本での住居への送迎です。これもできることなら特定技能1号の場合でなくてもできたほうが良いですね。

③ 住居の確保など必要な契約の支援

 日本での賃貸借は独特の慣行があり、自分で借りる場所を探すのは困難を伴うでしょう。ゴミ出しのルールなども理解できていなくて近隣とトラブルになることもあるようですので、それらを教えてあげるのも支援に含まれると思います。

④ 生活に関するオリエンテーション

 生活条のマナーや基本的なルールの説明です。

⑤ 公的な手続などの補助

 社会保険や税務手続きなどの必要な書類作成の補助を行います。

⑥ 日本語の学習機会の提供

教材の提供や近隣の日本語学校の案内などを行います。

⑦ 相談・苦情に対する窓口の設置

 相談・苦情を受け付ける窓口を設置します。

⑧ 交流の勧奨など

地域の行事や交流の場の案内などを行います。

⑨ 転職の支援など

 雇用契約を維持することが難しい事情が生じた場合も、転職先のあっせんなど必要な手続の補助を行います。

⑩ 定期的な面談や行政機関への通報など

 支援責任者を選任し、定期邸に外国人労働者と面談を行います。

外国人の新しいセンスが、ジュエリーブランドにセレンディピティーを起こすか?

日本のジュエリーブランドの層が浅いという意見はいろいろな方からお聞きします。

やはり、いつまでも欧米のまねごとをしているだけのジュエリーでは、世界で通用するブランドは誕生してこないと思います。

自分たちと同じような経験や感覚のしかない「ふつうの日本人」の新入社員ばかりを雇っても、従来の劣化版コピーのような作品しか生まれてこないのかもしれません。

外国人雇用は、これまでは「観光客の接客の通訳」や「外国語のサイト製作」くらいでしか活用してこなかったというジュエラーにとっても、

アフターコロナでは、ちがったセンスか価値観をもった従業員に、ブランドそのものの本質的成長においてどんな役割を担ってもらうかという視点が必要だと思います。


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