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諦めなければ、縁はつながる

 とうとう念願の、林伸次さんのお店『bar bossa』に取材に行ってきました!



 昨年10月に発売された林伸次さんの新刊「世界はひとりの、一度きりの人生の集まりにすぎない」の読書感想文の募集をnoteで見つけたのは、11月もなかば。11/30が〆切ということで、一度は諦めかけました。地域のハンドメイドマルシェに初めて、お手伝いしているまちライブラリー@ざま☆ほしのたに文庫のスタッフ、ひと箱本棚オーナー仲間と出店することになっていたからです。

 でも、諦めなかったんですよね。タイトなスケジュールでしたが、本はありがたいことにネットで注文し翌日に届いたので、本だけでなくその時までに投稿されていた感想文も全て読みました。

 そして、林伸次さんの書かれる文章の空気感をまねて、私たち夫婦が休日の朝にこの本の感想を話し合う、という設定で小説風の感想文を書きました。


 なんと、ありがたいことに選んでいただき、幻冬舎プラスというweb媒体に掲載もされました! こんなに嬉しいことはありません。

 感想文を読んでくれた友人たちからは、

「この本を読んでみたい」
「この渋谷のバーに行ってみたい」
 と言われました。ぜひ本は買って読んでください。できるだけ書店で。

 昼間の渋谷スクランブル交差点で、足早に歩く人々の波にうまく乗れずぶつかられながら、久しぶりに歩く都会の雰囲気に少し辟易。営業時間前のお店に入れていただくと、ふわりと甘い香りが。


 思わず「あ。いい匂い……」とつぶやくと、林さんが「お香なんです」と、入り口のドア近くでくゆらせているお香を目で教えてくれました。

「書店に長いことお勤めだったんですよね。どんなお店にいらしたんですか」と林さん。

 おお、いろいろお聞きして、noteに書くためにいくつか質問など考えておいたにも関わらず、自然に会話を振ってくださる。
「最初はA書店で、トータル3年ぐらいいました。でもここはお店がもうなくなってしまって」
「え、A書店ってもうないんですか?」
「全部なくなったわけではないんですが、私のいた店舗は閉店しちゃいました。書店はどんどん、なくなっていて。次はB書店で1年、その次がC書店で一番長くて6年、最後のD書店はまる5年です」

「僕は以前に本を出版したあと、書店回りというのをやったんですけど、書店さんによっていろいろ違うんだな、ということがわかりました。自分はそこまで有名ではないし、ちゃんとアポもとっていきましたけど、きちんと対応してくれるところと、中にはつめたい書店さんもあって」
(書店回りとは、著者さんが本を置いてくれている書店に自ら出向き、挨拶をすることです。ご自身が書かれたPOPを持参されたり、担当者に献本といって著書をくださることも)
「え、それ。ちなみに書店名をお聞きしてもいいですか?」
「D書店さんはきちんと対応してくれました」
「あ、ほんとですか、よかったです」
「C書店さんはちょっとつめたかったなぁ」
「あぁ~、なんか、すみません……。書店あるあるなのですが。特に出版社の営業さんが、アポを取らずにくる方が多いんです。他の業種の営業さんに言わせると、それはとても信じられないことのようで。私が困ったのは、遅番て社員ひとりになってしまうんですが、著者さんがアポなしで閉店間際にやって来て、棚の前でご自身の著書と一緒に写真撮ってくれとか(笑)。いえ、いいんですけどね。締めの段取りとか都合がね。

 私も、最後に勤務したD書店ではいろいろな著者さんの対応をさせてもらいました。私は実用書の担当でしたが、サインを書きに来てくださる作家さんに対応する文芸書の担当に頼まれて。やはり、本をお書きになった方にはリスペクトがあるので、今日もほんとうに良い緊張感をもって来たんですよ」

「ありがとうございます。書店員さんのジャンル担当というのは、ある程度その分野に詳しいとか、好きなジャンルの担当をさせてもらえるんですか?」
「お店によりますし、入社したタイミングでも変わって来ます。(その時に空席のポジションに就かされたり、他のスタッフとの相性を考えて担当の玉突き移動も)必ずしも自分の得意分野というわけでもないんです。私は実用書でも、料理やお菓子、手芸や育児の本は経験上ある程度知識もありますが、スポーツや車、ギャンブル、囲碁将棋とかはさっぱり。ひとつの知識が深いことよりも、広く浅くいろんな分野に長けている人のほうが向いてますし、働く上でラクだと思います」
「そうか……。得意なジャンルを持たされるわけではないんですね。僕は音楽については、レコード屋で働いていた時は自分の好きなジャンルを担当させてもらえたので、そこはよかったです」
「それはうらやましいです」


「林さんて、私と同い年ということで、どんな子ども時代でしたか? 何か覚えているエピソードとか、あったら教えてください」
「子どもの頃ですか」
「ちなみに私は、4歳ぐらいの頃に『〇〇ちゃんね、大人になるまで生きられないかもしれない』と言って母に叱られました」

「それはつまり、そういう感覚があった?」
「はい、前世というのか過去世というのか、身体感覚として『大人になるまでは生きていられない』という言葉にならない感覚がはっきりとありました」
「そうなんですね~。僕は、母親が児童書の出版社の営業をしていて、0歳から保育園に預けられていました。そういう環境だったので、自宅には本がたくさんありましたね」
「私たち昭和のその世代(1969年、昭和は44年です)で、お母さまがフルタイムで働いてたって、割と珍しいんじゃないでしょうか」
「そうですね。早いうちから本が身近にたくさんあったことが、書くことにつながっているという気持ちはあります」

「やはり、林さんが書かれる小説やエッセイには、ご自身の体験というか、見聞きしたことが盛り込まれているんでしょうか」
「体験談、そうですね。素材として、っていう感じです。あとは、村上春樹方式で音楽のタイトルからイメージして書くとか、そういうのもあります」
「あ、ショートショートの手法にもありますよね、3つのお題で、という……」
「そうそう、そんな感じです。書き始めたときに、最初は音楽の話なんかを書いていたんですけど、なかなか読まれなかった。で、不倫やセックスの話を書いたらこれがすごく読まれたんですね」
「みんなが読みたいってことですね」
「そうなんです。特に『今までで一番変なセックスってどんなのでしたか』ってお客さんとかに聞くんですけど、男性に聞いても出てこないんですね。それは、まだまだ男性が『する』側だから。『俺は変なセックスなんてしてない』っていう」
「あ~、そういうことも垣間見える……。そうなると、比較的受け身である女性側からはいろいろと聞けるわけですね」

「そうそう、いわゆるつきあってはいけない3B、美容師、バーテンダー、バンドマン、でしたっけ。あれは何がだめなんですか?」
「ああ。それはですね、3Bと言われる人たちは、心の中に入っていくんですよ。そこが危険なんです」
「そっか~。美容師なんて髪に触れるわけですもんね。それは危険ですよね」

「林さんはごきょうだいは?」
「兄がいます、二男です。こんゆじまじこさんは」
「私、弟とふたりきょうだいです」
「ああ。なんか、僕は女性脳のせいかよく『姉がいる男性』に間違われることが多いんですが、実はそうじゃないので。女性にしてみれば、共感してくれるかと思いきや時に辛辣なことを言ったりするので、嫌われたりイラッとされたりします。だからこんゆじまじこさんもそのうち僕に対してイラッとするかもしれませんよ」
「あはは、そうなんですね。『姉のいる男性』、確かに物腰柔らかでそういう雰囲気をお持ちですよね、わかります。明らかに、姉妹のいる男性って男きょうだいしかいない男性とは何か違いますよね」


 あとになって気づいた。林さんには女性脳ということも確かにあてはまるし、この人のことを知りたい、話を聞き出そう、と思ってもついつい自分のことを聞いてほしくなってしまう。喋りすぎてしまう。姉がいるから、とかバーテンダーだから、じゃないのだ。結局のところ、心に上手に入り込む、人たらしという人種なんだ、と。

 そういえばうちの二男も実はこの「人たらし」に属する。二男に多い? それもまた、雑学好きな私にとってはとても興味深いところ。

 女性脳については、こちらを。林さんもご存じでした。

 そして、よく言われている男性脳か女性脳かを見る人差し指と薬指の長さ。私はもう、わかりやすくて笑えるほど薬指のほうが長いのですが、林さんの手を見せていただくと、人差し指と薬指がほとんど同じ長さでした。気持ち、人差し指が長いかな、という感じ。



 今回、本を出版した作家さんの話を聞き、それを文章に書くという初めての経験をさせていただきました。痛感したのは、あらかじめ用意していた質問はそこまで盛り上がらず、自然に生まれた会話の方がむしろいきいきとしていたこと。私の勉強不足も多々あって、大変恥ずかしく、こんな拙い文章で林さんのファンの皆さまをがっかりさせてしまったかもしれません。

 インタビューなどとだいそれたものではありませんでしたが、林さんとの会話は心地よく、もっとお話していたい、と名残惜しい気持ちでした。

 次はお店の開いている時間に行って、カウンターの真ん中の席に陣取ります!


店内はもちろん、外観も、洗練されたすてきな大人のお店でした。


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