【映画雑記】「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を怒りをこめて振り返れ。
「映画秘宝」でもかなり尖った記事を書くお二人、高橋ヨシキさんとてらさわホークさんの対談本の中に、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」がいま必要以上に評価されすぎている気がするという話題があって、物凄くわかる!わかりすぎる!と思いながら読んだ。この夏も金曜ロードショーで3作連続放送されて、Twitter界隈でも大いに盛り上がってましたね。日本ではおそらく映画評論家の町山智浩氏が初めて指摘したと思うけど、そもそも「BTTF」にはロックンロールの巨星、チャック・ベリーの功績を白人のクソガキが踏みにじるという大変な問題がある。たかが音楽じゃないかと思うかもしれないが、ロックンロールがどういう経緯をたどった音楽なのかを知っていれば恐ろしく危険な歴史改変を(フィクションとはいえ)行っているのである。
ただ、そんな難しい問題を抜きにしてもですね。誤解を恐れずに言うと、「BTTF」の面白さって10代で卒業するレベルだと思うんですよ。ラノベっぽいというか。ラノベ読まないですけど。能天気で無邪気で、未来に帰れるのかっていうミッションがあって。冒頭の本の中でも語られてるんですが、過去に飛ばされてなんだかいろいろ無茶して帰ってきてみると、家は金持ちになってる!ほしかった車と彼女も俺のもの!っていうエンディング。これが一番危ない。10代の頃は家が嫌になるし、親も嫌になるし、つまらない現実が消えてなくなるエンディングは最高だと感じるかもしれない。それが映画だし。それは認める。でも、大人になってみると「それでいいのかよ!?」って普通に思いますよね。だって記憶の中の家族はそこにはいないんですよ。自分を形作った世界がまるっと消えてなくなっているわけで。過去に飛ばされてなんだかいろいろ無茶して帰ってきたら、あんな無茶したのにいつもと同じだらしない家族がいる。でもそこが自分の居場所っていうほうが納得いくし、実際、マーティの父親を演じたクリスピン・グローバーは監督のゼメキスに「それでいいのかよ!?」って詰め寄ったらしいですよ。さすがですよねクリスピン(それに対し、ゼメキスは「それで飯が食えるか?」と返答)。だから俺は正直いって「BTTF」は初めて見たときは面白かったけど、何回も観たくなる映画ではないし、パート2とパート3なんて見たはずなのに全く思い出せない。
「BTTF」がテレビで放送されると必ず、「ドクに似てるね」って言われてきた俺が言うのも何なんですけど・・・。
思いっきりディスっておいてなんなんですが、比較対象としてテリー・ギリアムの「バンデットQ」を挙げておきます。郊外の抑圧的な家庭に育つ少年が、時間を越えた魔術的な冒険を経て再び家に帰ります。そして、息子に無関心な両親はその冒険の影響で起きた事故で爆死します。なぜかそこには不思議な爽快感があるります。「結局、金かよ」という「BTTF」のエンディングとは違う、「大人なんてくそくらえ」という中指おっ立ててるような力強さがあるからだと思います。
※蛇足・・・。
個人調べですけど、俺の大好きな「ブルースブラザース」が好きな人に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」も好きっていう人が多くてですね。ひとしきりジェイクとエルウッドの話で盛り上がったあとに「他にどんな映画好きなんですか?」と聞くと「バック・トゥ・ザ・フューチャー!」とすこぶる元気に教えてくれることはよくあるように思います。俺がそこであからさまに盛り上がらなくなるので大体、話はしりすぼみに終わります。俺が「バック・トゥ・ザ・フューチャーって昔、織田裕二がマーティで三宅裕司がドクをやった吹き替えで放送されたことがあってさー、酷かったんだよー」って必ず半分ディスったトークをしてしまうのもよくないのかもしれない。その作品が好きな人の前では笑顔でそのトークを聞き流すスキルを披露するのが大人っちゅうもんかもな。