映画「ノマドランド」は、無職の今だからこそ見るべき、ヘビーな作品でした。
「ノマド」とは英語で、
「遊牧民」や「放浪者」を差す言葉。
映画を見る前は、
「ノマド」という言葉には、
ITの最先端の方の実践する働き方というイメージがありました。
しかし、この映画の内容とは、ずいぶんとかけはなれていました。
この映画は、
家を持たず、キャンピングカーでアメリカ国中をドライブし、
季節労働者として働く漂流する高齢労働者たちの物語でした。
なかなかヘビーで、ショッキングです。
2008年のリーマンショックにはじまった経済危機によって
2011年業績悪化を理由に主人公ファーンの夫が勤める会社は
石膏採掘所を閉鎖します。
それにともない企業城下町であったエンパイアという町も
閉鎖されました。
夫は亡くなり社宅に住んでいたファーンも、
立ち退きを迫られ住む場所を失い、
キャンピングカー生活をはじめました。
キャンピングカー生活をする人たちの、
言葉はなかなか胸に刺さるものがありました。
2008年にどん底を経験して命を絶とうとしたリンダは、
12歳から働き詰めで頑張って2人の子どもを育てた。
そんな中、
公的年金の額を聞いて550ドル(約6万円)だと知って、
言ったのが、
「働き蜂はやめたの」
そして、キャンピングカー生活をはじめたのだそうだ。
同じく、キャンピングカー生活を勧め、
キャンピングカー生活者の集会を開催する
ボブ・ウェルズの言葉は、
「馬車馬と同じだ。
身を粉にして働き、老いたら野に放たれる」
なかなか、真理をついているようにも思います。
他の高齢女性は、
同僚が定年の１週間前に肝臓病でホスピスに入った。
そんなところに会社から電話があり、
退職の条件を言ってきたそうだ。
そして、10日後に彼は死んだ。
人生を楽しむ暇もなかった。
その彼は言った言葉は、
「時間を無駄にするな」
その事を聞いて
死ぬ前に後悔したくないから退職したという。
どれも、働くとはなんだろうと
考えさせられるものがありました。
映画の中には白人女性も多く、
これがアメリカの中流階級の労働者の現実なんだと思います。
公的年金で暮らしていけない高齢者。
働こうにも限られる職種。
家賃やローンを払うことをやめる選択をした者として
行きつくキャンピングカー生活。
日本も似たり寄ったりの社会じゃないかなと思います。
年金では暮らせない、
だからといって定年後に働ける職種も限られる。
日本も状況は変わらないと思います。
働くとは。
生きるとは。
老後の生き方とは。
時間の使い方とは。
人生の最後の迎え方。
過去の思い出とのつきあい方。
そんな重いテーマを
考えさせられる映画でした。
全体の美しい風景とピアノの旋律とは、
対比的に現代社会から外れた高齢者の悲しみや孤独が胸にきます。
無職の今だからこそ見る必要がある映画だと思いました。
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