短編アニメ「スプリンパン まえへすすもう!」をなぜ作ったか?
記事を読んで気に入ってくださったらスキしていただけますととても嬉しです。記事の後半に予告編の映像がついています。
こんにちは。アニメを作ったりマンガや小説を書いている井上ジェット (@jetinoue)です。一時期はアニメ制作会社サンライズさんでガンダム関連のアニメや、銀魂などに関わっていたことがあります。しかし一般的に見れば知名度のないクリエイターの一人です。
今日は現在、私が関わっている「スプリンパン まえへすすもう!」という作品について紹介したいと思います。
この記事では
(1)「スプリンパン」って何?
(2)フランスにアニメ企画を売り込みに行った話。
(3)なぜアニメなのか?
(4)スプリンパンが目指すミュージカルアニメのこだわりについて
(5)スプリンパンでやりたかったもう一つのこと:バレエ
(6)予告編映像(予定)
などについて書いています。(↓もくじあり)
●「スプリンパン まえへすすもう!」って何?
「スプリンパン まえへすすもう!」とは何かと言いますと、スプリンパンという女の子が、前へ進もうという前向きな気持ちで旅をする物語作品です。
あらすじを一行で言うと、スプリンパンは女の子自らが作ったキャラクターで、自らがスプリンパンとなって不思議な世界で不思議な仲間に出会い一緒に旅をするというものです。
そして現在この作品の短編アニメを作っています。
そしてアニメは現在、ほぼ完成したと言える状態になりました。
●なぜアニメなのか?
スプリンパンで私がやりたかった事はちゃんとした「ミュージカルアニメ」を作ることでした。そう、私はミュージカルアニメを作りたかったのです。
ミュージカルの影響を強く受けたのは人生で3回。中学生の時にレンタルで見たディズニーの「リトルマーメイド」、学生時代、NHK番組の演出家でありプロデューサーであった合川明(※1)先生の授業で見たミュージカル「ミス・サイゴン」のメイキング。そして品川キャッツシアター(1995年)で見たミュージカル「キャッツ」です。今まで体験したことがない娯楽性に衝撃を受け、ああ、これは何か降ってきたと新しい自分に目覚めたようでした。
(※1)合川明……NHKの大河ドラマ「赤穂浪士 」「花の生涯 」などで製作総指揮の仕事をされていた演出家、プロデューサー。
私の父親は建築士でしたが、毎年、神社の夏祭りの一環で行われる舞台公演で「団長」などと呼ばれて「清水の次郎長」を題材にした演劇公演をやっていました。私がまだ歩くこともできない小さな頃に私も背負われて出演したこともあったとのことです。私はまったく覚えてはおりません。そして母親は日本舞踊を趣味で嗜んでおりました。
そんなことで何か表現して人に見てもらうというショーマンシップが私にも確実にあるのだと思うのです。
ミュージカルはなんの抵抗もなく私の精神の中に完全に吸収しやすいものとして入ってきました。そしてミュージカルアニメを作るんだという眼光はあり続けていたのです。
そして短編アニメでは、キャスト&振り付け全8人のうち4名は劇団四季の出身者。さらにバレエダンサー、アイリッシュダンサー、人気テーマパーク等での歌唱されている系歌手様でチーム構成することができそれに至るまでにもすばらしい皆様からご協力をいただいてきました。
●フランスへ行く
私は「スプリンパン まえへすすもう!」の企画を、フランスまで売り込みに行きました。
東京都の支援事業「MIFA2017出展支援プログラム」へ応募したのです。企画書等を提出し東京都庁内で有識者へ向けたプレゼンテーションを行いフランスはアヌシーで開催されるアニメーション映画祭併設の見本市「MIFA」の東京都ブースで出展することになりました。そして私はフランスへ行き、作品を世界に羽ばたかせるためにスプリンパンを公開プレゼンし、また企業個別に一生懸命ピッチ(売り込み)をしました。
2017年のことです。今これを書いているのが2020年です。
そして世界のアニメーション関連企業約50社と様々な商談をしたことで世界のアニメ制作状況がどのようになっているかがよくわかったのです。これについては、一言や二言で言えない大量の知見を得られました。深くは語りませんがそれから約3年が経過したのです。
日本の特撮シリーズ「ジュウレンジャー」をアメリカのサバンブランドがアメリカ版「パワーレンジャー」を実現するために8年かかったと言うのを聞きました。まだまだ3年、挫ける段階ではありません。
※2017年のロゴはいまよりオシャレ度があるものです。これはロゴだけ旧バージョンですが、スプリンパンのパブリシティ用キャラクターイラストを配したキービジュアルです。新しいロゴでは「前」が平仮名になっています。
●短編アニメを完成させる。
フランスへ持ち込んだ時にはアニメは企画段階でした。企画段階でしたが幸運なことに私の所属するCGCGスタジオで「短編アニメ」を制作することが許されました。決してなんでもできるという規模のものではありませんが、まえへすすもう! と自分に言い聞かせて、取り組みます。
そして企画や脚本、絵コンテ、世界観設計、制作手法、作品に関わるあらゆる権利の処理を行うことも自ら実行し、そのこだわりを持った「ミュージカルアニメ」がどういうものであるか、その証を作るべくアニメ制作を開始しました。
●スプリンパンに込めたテーマ、コンセプト。
私がこの作品に込めた思いは、恨みや妬み、いがみ合いや争いのない作品を作りたいということでした。「すごいことをしなければならばい」「悔しい」「見返してやろう」というような感情を煽ることが小さな要素でも息苦しさを生み出していくと思うと、将来的にそれが大衆娯楽であるのかと悩み、そういった要素を極力控えそして「健やかな前向きさを持ったアニメ」にしたいと思ったのです。
そのため短編アニメでは感情曲線が強くうねる構造にはせず“上のほう”でおだやかに揺れる波を描くようにしたいと思ったのです。つまり、見た人の感情を煽る要素は控えめにした言うなれば「箱根に日帰り旅行」(※2)に行く程度の楽しみのものにしようと思ったのです。
(※2)私が神奈川の旧津久井郡(現・相模原市)の出身であるため日帰り旅行といえば箱根だった。
遠足や日帰り旅行では、物語の過程に、感情を大きく揺さぶられるような大きな出来事がないとしても、出会いと発見があり最後に「帰るという別れ」があり「帰る」という行為には発見したものや出会ったものと分かれるというカタルシスがあると思ったのです。
ああ、これだと。日帰り旅行のようなおだやかな浮き沈みのアニメを作りたいと思ったのです。
スプリンパンが家にいるお母さんを思い浮かべて旅の報告をするシーン。
●スプリンパンでやりたかったもう一つのこと:バレエ
さらにやりたかったこと、それは「バレエ」「アイリッシュダンス」などの伝統的な舞踏をアニメの中に取り入れることです。
そしてそれも実現したのです! そして最もやりたかったことは上の画像の「山どん」というキャラクターと「スノミーメイ」というキャラクターで再現された、バレエのパ・ド・ドゥ(バレエで男女二人で踊る展開)です。
このパ・ド・ドゥを再現するのに、CGアニメ制作において予想される苦労から多くの反対がありました。そして実行しもっとも苦労した箇所です。モーションキャプチャで収録した動きをキャラクターに落とし込みましたが山どんの独特な体型で調整をするために非常に繊細で途方も無いアニメーションの調整作業を行いました。そして出来上がったパ・ド・ドゥの場面は、とてもすばらしいものとなりました。
またこのバレエのシーンだけでなくアイリッシュダンスやコンテンポラリーダンスのシーンもとても素敵に表現することができました。
それらを全部含めた短編アニメが、完成しているのです。
現在、本当に少しの映像を使った予告映像を作りました。予告編を作るのも少しずつとなります。そして予告編は近日、この記事の中で更新して入れますので、よかったらまたこの記事を見に来てください。
そしてそのうちこのスプリンパンの長編アニメを作りたいです。
●現在
現在「スプリンパン まえへすすもう!」の短編アニメは、どのようにしたら一人でも二人でも、見てもらうことができるかと考えています。アニメもしくは相性の良いものとしては絵本。それらで、またスプリンパンを作りたいのです。そしてフランスで世界に羽ばたかせたいと思った思いももちろん消えてはいません。
「スプリンパン まえへすすもう!」をまた動かすために、まえへすすもう! の気持ちで、まだまだ挑んで行きたいと思います。なので、もし「スプリンパンを見たい」とか「こういうチャンスがあるよ」ということがあれば、心の中だけでなく、ぜひSNSをはじめいろいろなところで声に出したり、人に伝えたりして応援してほしいのです。
※追記
スプリンパン、全国劇場公開が決定いたしました!!
映画「人体のサバイバル!/がんばれいわ!!ロボコン」(こちらをクリック)と同時上映で2020年7月31日から映画館で公開です。映画館での予告編上映、TVCMもやっています。短編アニメですが、映画館での上映となり、最上の公開方法となりました。よければぜひご覧になってください!
「スプリンパン まえへすすもう!」作品紹介予告編(YouTube)
ここまで長い記事を読んでくださり、本当にありがとうございます。
また、私はスプリンパン以外にも進めているプロジェクトがあります。
「スプリンパン」はその中でも、未来にむけて子どもたちに穏やかに育ってほしいという気持ちで取り掛かっているものです。
ぜひこの記事をシェアや拡散してください。
そしてまたこの記事に遊びに来てくださいね。
こちらの記事↓ではスプリンパンのキャスティングについて大紹介!